1 提案の趣旨

1.提案の目的と意義

(1)提案の目的

当研究会議の研究目的は、様々な切り口から「21世紀に向けての兵庫の望ましい都市像」を考察することを前提にして、その実現に向けて具体的な方策を検討することであり、活動開始当初から中・長期的な研究を行っているところである。
平成9年度は、現在の社会の潮流及び神戸の都市イメージを前提に、「復興過程にある神戸地域が元気を取り戻すにはどのような都市づくりをしていくべきか」について、いくつかの角度から具体的な提案を行うことを目的とした。

(2)提案の背景

戦後わが国が行ってきた国土開発は、バブル崩壊とともに行き詰まりを見せ始めていたが、「阪神・淡路大震災」により大きな被害を受けた地域は、わが国の都市が共通して抱える問題にいち早く直面した。

それは,人口の流出をはじめ、震災によって表面化した高齢社会問題、中心市街地における商店街の衰退、マンションの建て替え問題、港湾物流の海外移転等、なかなか解決の突破口を見出せないでいるこれら多くの都市問題は、被災地域だけでなく、遅かれ早かれ全国の都市が直面する問題である。

(3)提案の意義

したがって、私たちのこの提案『あこがれのまちKOBE−「元気が出るまちづくり」に向けての提案−』は、わが国のすべての都市に対する先駆けの提案と位置付けることができる。

2.提案の概要

(1)提案の基本スタンス

この提案書では、21世紀に向けた「あこがれのまちKOBE」を大きな視点で捉えて提案することとした。すなわち、従来の提案手法のように緻密なデータや分析にはとらわれないで、むしろ自由な創造的発想で望ましい都市の姿を提案しようと試みた。
したがって、提案内容を振り返ると,結果的には3つの異なる切り口からの提案であるにもかかわらず、その内容に重複が生じたり、あるいは似通ったものとなった点は否めない。

(2)提案書の構成

今回、我々が本提案書を作成するまでの流れは、下記の研究フロー図に示すとおりである。

この提案書は、平成8年度から2ヶ年にわたって研究を重ねてきた成果である。平成8年度は、3人の講師による特別講演会を通して、「元気が出るまちづくり」に関する提案の切り口について学び、これを生かして2年目の今年度、3つの異なる切り口から具体的な提案を行い、提案書としてとりまとめた。
また、今回の提案を行うにあたり、ケーススタディとして国内において現在非常に元気がある都市、あるいは先進的な取り組みに挑戦している都市を訪問し、提案への参考とした。
なお、この提案書は、『望ましい都市を考える研究会議』の事務局及び主に副研究員から構成されたワーキンググループで議論した結果を各リーダーが執筆・編集し、研究員の総意により提案書という形でとりまとめたものである。

〈第2章:元気が出るまちづくりの視点〉

この提案書は、上記の研究フロー図に示すように、まず第2章において、社会の潮流及び神戸の都市イメージを提案のベースとして「元気が出るまちづくり」の考え方について整理した。これを踏まえ、神戸が「あこがれのまち」となるための3つの視点を導き出している。
神戸の都市イメージを把握するにあたっては、既存資料とあわせて、今回当研究会議独自で『都市イメージアンケート調査』を実施した。

〈第3章:訪れてみたいまちKOBE〉

第3章では、「訪れてみたいまちKOBE」という視点で、神戸の都市イメージ特性を活かした、集客のまちづくりに対する提案を試みた。

〈第4章:楽しく暮らせるまちKOBE〉

第4章では、「楽しく暮らせるまちKOBE」という視点で、神戸の都市イメージ特性を活かした、楽しく暮らすためのまちづくりに対する提案を試みた。

〈第5章:持続発展するまちKOBE〉

第5章では、「持続発展するまちKOBE」という視点で、神戸の都市イメージを主に形成している都心エリアにおける「持続発展するまちづくり」の提案を試みた。