第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など 

在日米軍の駐留を円滑にするための施策など

 在日米軍の駐留は、日米安保体制の中核的な要素であり、わが国とアジア太平洋地域に対する米国のコミットメントについての意思表示でもある。国際社会において引き続き不安定要因が存在する中、在日米軍は、様々な形でわが国とアジア太平洋地域の平和と安定に大きく貢献しており、特に、その存在自体が目に見える形での抑止機能を果たしていると考えられる。わが国としては、このように在日米軍の駐留が重要であることを踏まえ、駐留を円滑にするための諸施策を積極的に行うことによって、日米安保体制の信頼性の向上を図っていく必要がある。

(1)在日米軍の駐留にかかわる経費の負担など
 在日米軍駐留経費負担は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保する上で重要である。このような観点から、わが国は財政事情などにも十分配慮しつつ、地位協定の範囲内で、あるいは特別協定23に基づいて、できる限りの努力を払ってきた。現在、防衛庁においては、在日米軍駐留経費負担として、1)在日米軍が使用する施設・区域についての提供施設整備費24、2)在日米軍従業員の労務費、3)在日米軍が公用のため調達する光熱水料など、4)日本側の要請による在日米軍の訓練の移転に伴い追加的に必要となる経費の負担を行っている。なお、現行特別協定では、最近のわが国をめぐる経済・財政状況などにかんがみて、一定の節約・合理化策を導入している。また、現行特別協定が来年3月に終了することから、今後の措置について日米間で協議を行っている。
 これらの在日米軍駐留経費負担のほか、政府は在日米軍施設・区域の提供に必要な経費(施設の借料など)の負担、同施設・区域の周辺地域における生活環境などの整備のための措置、在日米軍従業員の離職対策などを行っている。また、市町村に対して固定資産税の代替である基地交付金25などを交付している。

 
在日米軍駐留経費負担の現状(平成17年度予算)

(2)在日米軍施設・区域の安定的な使用の確保
 在日米軍施設・区域は、在日米軍の活動の拠点となるものである。その円滑かつ安定的な使用の確保は、日米安保体制を維持し信頼性を高めるため必要不可欠な要素である。
 政府は、必要な在日米軍施設・区域の安定的な使用を確保するため、その民公有地については、所有者との合意の下、賃貸借契約などを結んでいる。しかし、このような合意が得られない場合には、駐留軍用地特措法26により、使用権原(けんげん)27を取得することとしている。
 また、政府は、日米安保条約の目的達成と周辺地域社会の要望との調和を図るため、在日米軍施設・区域に関する諸施策28を推進してきた。さらに、在日米軍施設・区域の周辺地域、特に沖縄県においては、米軍人などによる事件・事故の発生が地域住民に影響を与えていることから、米軍に対して兵員の教育、綱紀粛正などその再発防止策について実効ある措置を講ずるよう求め、政府としても再発防止策に協力していくとともに、こうした事件・事故による被害に対しては迅速かつ適切な補償が行われるよう措置している。昨年8月に沖縄県宜野湾市で発生した米軍ヘリ墜落事故に際しては、本件事故の重大性にかんがみ、事故分科委員会を開催するなどの措置29をとった。


 
23)正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」

 
24)提供施設整備については、案件採択基準を次のとおり策定し、効率的な実施に努めている。1)在日米軍の駐留基盤整備に寄与する施設(隊舎、家族住宅など)については、必要性、緊急性などを勘案しつつ着実な整備を図る。2)レクリエーション、娯楽施設などの福利厚生施設については、必要性を特に精査し、娯楽性・収益性が高いと認められるもの(ショッピングセンターなど)の新規採択を控える。

 
25)総務省が交付

 
26)正式名称は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」

 
27)権原とは、ある行為を正当化する法律上の原因

 
28)岩国飛行場滑走路移設事業、空母艦載機の着陸訓練場の確保、SACO最終報告の実施など

 
29)5章3節コラム参照


 

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