第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

1 災害派遣などの概要

(1)災害派遣などの種類と枠組

ア 災害派遣
 災害派遣は、都道府県知事からの要請により行うことを原則としている1。これは、都道府県知事が、区域内の災害の状況を全般的に掌握し、消防、警察といった都道府県や市町村の災害救助能力などを考慮した上で、自衛隊の派遣の要否、活動内容などを判断するのが最適との考えによるものである。
 市町村長は、都道府県知事に対し、災害派遣の要請をするよう求めることができる。都道府県知事への要求ができない場合には、その旨および災害の状況を防衛大臣またはその指定する者に通知することができる。
 市町村長から通知を受けた防衛大臣またはその指定する者は、災害の状況に照らし特に緊急を要し、要請を待つ余裕がないと認められるときは、部隊などを派遣することができる。
 防衛大臣またはその指定する者は、特に緊急を要し、要請を待ついとまがないと認められるときは、要請がなくても、例外的に部隊などを派遣することができる(自主派遣)。この自主派遣をより実効性のあるものとするため、95(同7)年に防災業務計画2を修正し、部隊などの長が自主派遣をする基準3を定めた。
(図表III-1-2-13 参照)
 
図表III-1-2-13 要請から派遣、撤収までの流れ

イ 地震防災派遣
 大規模地震対策特別措置法4に基づく警戒宣言5が出されたときには、防衛大臣は、地震災害警戒本部長(内閣総理大臣)の要請に基づき、地震発生前でも部隊などに地震防災派遣を命じることができる。

ウ 原子力災害派遣
 原子力災害対策特別措置法6に基づく原子力緊急事態宣言が出されたときには、防衛大臣は、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の要請に基づき、部隊などに原子力災害派遣を命じることができる。

(2)災害派遣活動などにおける自衛官の権限
 自衛隊法などにおいては、災害派遣、地震防災派遣または原子力災害派遣を命ぜられた部隊などの自衛官が効果的に活動するための措置などの権限が定められている。

参照 資料32


 
1)海上保安庁長官、管区海上保安本部長および空港事務所長も災害派遣を要請できる。

 
2)防衛省防災業務計画<http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/saigai/bousai.html>参照。

 
3)1)関係機関への情報提供のために情報収集を行う必要がある場合、2)都道府県知事などが要請を行うことができないと認められるときで、直ちに救援の措置をとる必要がある場合、3)人命救助に関する救援活動の場合などのほか、部隊などの長は、防衛省の施設やその近傍に火災などの災害が発生した場合、部隊などを派遣することができる。

 
4)<http://www.bousai.go.jp/jishin/law/014-1.html>参照。

 
5)地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を行う緊急の必要があると認めるとき、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を内閣総理大臣が発する。

 
6)<http://www.bousai.go.jp/jishin/law/002-1.html>参照。


 

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