真夏の中村あゆみ

2014年2月・3月

真夏の中村あゆみ Vol.27

 その日の中村あゆみは、僕の目にはいつもと違って映った。少し髪が伸びた、とか、またひとつ歳を重ねた、ということではない。昨年12月に会った時から、それほどの月日は経っていない。けれども、どう見ても、何かが異なるのだ。磨きこまれてツヤツヤと光りはじめた流木のような、艶やかな色合い、とでも表現すればいいのだろうか。「なんか雰囲気が変わった感じがするんだけど、気のせいかな?」。「そう? そう言ってもらえると、うれしいな。でも、何も意識はしていないんだけどね。昨年のクリスマスディナーショーでは、大人の女性を意識したロマンティックな演出にトライしてみたんだ。それが自分でも、思いのほか心地よかったんだよね。あ、こんな空気感もいいなって…」。それだ!と僕は直感した。彼女のイメージを聞くと、ほとんどの人たちは‘Tシャツ&ジーンズのロッカー’という回答が返ってくるだろう。僕自身も、今の今まで、そう思い込んでいた。しかし、また別の‘中村あゆみ’が密かに産声を上げていたのだ。

 子どもの頃、父親が聴いていたジャズに影響された、という彼女。クリスマスディナーショーでは、フランク・シナトラの名曲『Strangers in The Night』をはじめて披露した。この曲は彼女が生まれた1966年に発表された楽曲。それを見事なまでに歌い上げたという。「人ってたくさんの失敗を重ねて、その積み上げた結果が、今だと思うんだよね。だから、過去を生きた人たちを、その成果を、しっかり受けとめて、次の代に手渡していかなくちゃいけないと思うんだ。最近、すごく古いメロディが、やけにグッときたりして。そういうものって、ちゃんと後世に伝えていかなくちゃな~ってね」。僕は言葉にこそしなかったけれど、‘あゆみちゃん、また、ひとつ階段をのぼったね’と僭越ながら拍手を贈った。

 「それにしても寒い日が続くね~。南国で、またゴルフしたいなぁ…そういえば最近、英語のスタンダードナンバーもレパートリーに増えたから、サイパンでも歌えたらいいな~」。今、彼女は過去に失効した運転免許を再取得すべく、教習所に通っている。4WDを操りながら、サイパンの大自然を走る彼女の姿を見られる日は、そう遠くないはずだ。

真夏の中村あゆみ 中村あゆみオフィシャルチャンネル
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