ヤフー株式会社は、2023年10月1日にLINEヤフー株式会社になりました。LINEヤフー株式会社のコーポレートサイトはこちらです。
当ページに記載されている情報は、2023年9月30日時点の情報です。

企業情報

2023.07.13

【風と私】「女大工のえりのまき」さんが語る仕事のやりがい 「常にスキルを更新していける楽しさ」

画像

「女大工のえりのまき」さんは、ご自身で工務店を営む大工として、そして、人材不足の業界に若手や女性の参入を増やすため、業界の魅力や物創りの楽しさを積極的に発信しているインフルエンサーでもあります。
そんなえりのまきさんに、大工の仕事の魅力、現場での風との向き合い方、今後の展望などについてうかがいました。

女大工のえりのまきさん(以下、えりのまきさん)
兵庫県出身。株式会社はこつくるの代表として、大阪を拠点に、店舗・リフォーム工事の設計デザインから施工までを行っている。業界に若者の参入を増やすためにSNS活動も積極的に行う。

風を感じる好きなシチュエーションは?
特に夏場は、涼しいそよ風が吹いていたほうが心地よく、作業しやすいですね。
ただ、作業が関係ない場合は逆風のとき、立ち向かっている感じが個人的には好きで、テンションが上がります。人生においても、背中を押される追い風よりも、逆風のほうが好きかもしれません。過去を振り返ってみて、楽な道と険しい道だったら、いつも険しいほうを選んでしまっている自分がいます。

作業の前に、天気予報で風速、風向きについてもチェックが必要

建築現場において、風がどのような影響を与えるのかを教えてください。

大工の現場では、当日の天候、風に大きな影響を受けるので、作業の前には必ず、天気予報をチェックして風速と、風向きについて確認しています。
たとえば、外で足場を組んでいるとき、材料やごみが飛散したり、落下したりしないようにメッシュシート(飛散防止ネット)を足場に張ります。風が強いときにそのシートを張っていると、風を受けて足場が倒れてしまうリスクが高くなるので、たたむ必要があります。
また、建物の屋上では遮るものがないため、地上での風速以上に風が強くて、人やものが飛ばされそうになることもあるので、より注意が必要です。
風向きによっては、ほこりが飛んでしまうこともあるので、どこで作業を行うかも重要ですね。

室内で作業するときは、開いていた扉が風の勢いで閉まって事故につながることもあるため、どこの窓を開けて作業するかを風向きによって決めます。風の流れがあると、空気の入れ替えができるので、「今日は、風がこっち向きだから、この窓とこの窓を開けよう」という感じですね。

自分のスキルを更新していける楽しさがある

大工のお仕事について教えてください。どんな種類があるのでしょうか?

大工は、設計図をもとに建物の建築やリフォーム、修理などを行う職業です。役割に応じて、お客さまとの商談、建築士との打ち合わせから始まり、建物のさまざまな作業工程に関わるだけでなく、現場で他の職人、業者などを取りまとめることもあります。

一般的な木造住宅・店舗などを扱う町大工(家屋大工)、コンクリートの建物を作る型枠大工、寺社の修繕をする宮大工など、手がけるものや職人の技術によって種類も異なります。種類によって習得する技術、レベル感、難しさなどもさまざまです。
また、町大工のなかでも、新築かリフォームか、家かお店かなど、得意分野も違います。たとえば、新築住宅の場合、基本的にはマニュアルがあるため、自由度はあまり高くなく、一定の品質でスピード感をもって施工できることが多いです。一方、リフォームや店舗の場合、自由度が上がりますが、その分難易度も上がります。
私はリフォーム出身なのでで、今もリフォームとお店づくりをメインにしていますが、その自由度の高さにおもしろさを感じています。常に勉強が必要な反面、自分のスキルを更新していける楽しさも感じます。

台風が多い沖縄、雪が降る北海道・東北、あるいは、雨がよく降る地域、海沿いの地域などで、使う素材、建て方も変わってきます。私は関西の内陸が活動拠点ですが、違うエリアに行って建物を眺めるだけでもとても勉強になります。

仕事を通じて人に感謝されたことで、生きる希望をもらえた

えりのまきさんが、大工になったきっかけ、経緯について教えてください。

17歳のときに高校を退学し、一時期、引きこもりになりました。工務店で建築業を営む父がそんな私を見かねて「現場に出てこい」と連れ出してくれたのが、この業界に入ったきっかけです。

当時、ご高齢のお客さまが、まだ何もできない私にも、「めっちゃ良くなったわ。ありがとう」と感謝してくれました。「この仕事は誰かの役に立てる仕事だ」と実感しましたし、自分がつくったものを提供する仕事にもやりがいを感じました。
「もっと技術を磨いて頑張ったら今以上にお客様に喜んでもらえるかもしれない」と、生きる希望をもらい、「もう少し頑張ってみよう」と思いました。
気づけば建築の仕事に魅せられ、父の会社で大工と管理の仕事をした後、ベテラン大工の親方に弟子入りし、新築とリフォームの現場に入りました。

その後は次の職場を探すか、父の会社に戻るか検討しましたが、「まだ勉強したい」という気持ちが強く、兵庫から大阪に出て、大工と施工管理を行う会社に入ったのですが、その直後にコロナ禍に突入しました。その時期に、「ぜひ、あなたに工事を依頼したい」というお客さまからお声をかけていただき、会社を通して受けようと思って、社長に相談したところ、「この工事はうちではやれないが、キミなら自分でできるんじゃない?」と背中を押され、独立することになりました。2年間、個人事業主として一人で仕事をしましたが、一緒に働きたいと言ってくれる人が増えてきたため、2022年に会社組織にしました。

物事を客観的に見て論理的に考えるタイプが大工には向いている

大工の道に進んでから何か変化がありましたか? どんな方が大工に向いているのでしょう?

私は昔から手先も器用ではありませんでしたし、どちらかというと感情的で、何かうまく作業できなったらイライラしてしまうタイプでした。でも、大工になってからは「なんでできないのだろう? どうすればできるかな」と物事を客観的に見て論理的に考えるようになりました。
大工の仕事はトラブル、ミスなどに向きあって正解を導いたり、答えのないことを自分で仮定してトライしてみたり、経験値が物を言う仕事なので、性格も柔軟になったと思いますし、何事にも前向きに取り組めるようになったと感じています。

大工の仕事では、感情的にならず、論理的なアプローチで物事の本質に向き合えるかが大事ですね。もちろん、体力も必要な仕事ですし、仲間との協調性も求められます。さらに、「これができたから次はもっとこうしてみよう」という意欲があると成長のスピードが早いと思います。ただ、大工の仕事が好きで、大工になりたいという目標、誰かに喜んでもらいたいという気持ちがあったら頑張れるのではないでしょうか。

また、業界の文化として、どの現場でも先輩職人が若手を手取り足取り教えてくれるという環境ではないかもしれません。世代間のギャップも起きやすく、若手が減っている状況もあると感じます。
私は誰よりも早く休憩を終わらせて現場に入り、先輩のサポートに回りながら努力しました。わからないことなどはそのままにせず、質問もどんどんして、「この子、本気なんだな」と思ってもらえるような動きを意識しました。

大工の仕事は、昔は先輩の背中を見て技術を覚えることが主流だったと思います。ただ、今はネットのおかげで、少し調べたらあらゆる情報を入手できるので新しい道具、技術を手軽に取り入れるハードルは下がっていると感じます。また、いろいろな情報発信をしている職人もいるので、そこでいいと思ったやり方を取り入れたり、スキルアップに役立てられたりできる機会が増えたのではないでしょうか。

私も、この業界の楽しさや魅力について発信することで、参入する方が一人でも増えたらいいなと願い、SNSなどで積極的に情報発信しています。これまでこの業界に興味がなかった方でも、「ものづくりって楽しそう」と感じてほしいですし、DIYに役立ててもらえたらうれしいですね。

私の発信を見てくださった方から、「どうやったら、大工になれますか」や、「親に反対されているので、話を聞いてほしいです」といった質問や相談をいただきます。少しでも参考にしていただければと思い、自分の経験などをお話しています。

子育てしながら活動できる実績を作り、業界にノウハウを共有したい

今、感じている課題はありますか? これからの展望について教えてください。

建築業界はとにかく人手不足です。現場に同世代がなかなかいない現実を痛感します。少子高齢化が進むなか、すでに職人の3~4割が60歳以上というデータもあり、「10年、20年したらもっと厳しくなるだろう」という危機感があります。

「衣食住」と言われるように、建築に関わる職業はなくてはならないものです。新しく建物をつくる職人に加えて、今ある建物をメンテナンスしていく職人も必要です。その職人の数が圧倒的に不足しているという課題を解決したい、この業界を守っていきたい、という思いがあります。

そのためにも、若者や女性の参入をどんどん増やしたいと思っています。女性だけで建築することが最良の選択だとは決して思っていません。ただ、男女どちらの目線も生かしてつくることでより良いものができると思いますし、お互いにないものを補いあってこそ、クオリティーが上がると思います。私の会社には女性が多いものの、男性もいます。

私は、自分の会社で女性の職人が子育てしながら働ける実績を作りたいと考えています。実際に運用すればいろんな問題が出てくると思います。たとえば、「保育園の送り迎えはどうするか」、「子どもの体調不良などで急に帰らなければいけなくなったらどうするか」といった対応策のほか、「どんな仕事なら担当しやすいのか」などを、日々試行錯誤しています。
そこで得たノウハウを業界に共有し、「こういうサポート体制を用意したら女性職人を雇えますよ」と伝えていくことで、ハブのような役割を担っていきたいと思っています。

Yahoo!天気アプリの「風レーダー」

最大72時間先まで世界中の風速と風向の予報が、流れる線のアニメーションで視覚的にわかります。また、選択地点の風速と風向の推移をグラフとテキストで「非常に強い風」「猛烈な風」など、いつ風が強まるのか、どの方角にどの程度の風が吹くのかを一目で確認できます。
風の影響を受けやすいスポーツやレジャーをする際などにもぜひご利用ください。

このページの先頭へ