取締役の解任手続きとは?トラブルを防ぐためには?

公開日:2023年12月14日
最終更新日:2023年12月14日

この記事のポイント

  • 取締役は、原則として株主総会決議でいつでも解任できる。
  • 取締役を正当な理由なく解任した場合は、損害賠償請求されることがある。
  • 取締役を解任した場合には、登記をする必要がある。

 

会社が取締役を解任するためには、原則として取締役会が発議したうえで株主総会決議が必要です。
代表取締役が、勝手に取締役を解任したり解雇したりすることはできませんので、注意が必要です。
 

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取締役の解任手続き

取締役を解任するためには、株主総会決議が必要です。
代表取締役が実権を持っている場合には、社長が取締役の解任を事実上決めるようなケースもあります。しかし、代表取締役は、取締役に辞任を求めたり説得したりすることができるだけで、代表取締役が取締役を勝手に解任・解雇することはできません。

(1)取締役の解任は株主総会決議が必要

取締役は、従業員ではありませんから、原則として取締役を解任したいときは、いつでも株主総会の決議によって解任することができます(会社法339条1項)。
原則として取締役会が発議し、株主総会の過半数の賛成による決議で解任することができますが、定款で定めていれば、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1まで定足数を軽減することができ、または過半数を超えて加重することもできます。

(2)正当な理由がない時は損害賠償責任を負う

正当な理由がないのに解任された取締役は、会社に損害賠償請求をすることができますが、正当な理由があると認められた場合には、会社は賠償責任を負いません。
正当な理由がないと認められた場合には、任期満了までの報酬相当額を請求することになると考えられます。
なお、正当な理由とは、以下のような場合です。

①法令や定款に違反する行為
②会社に対する背信行為
③職務上の義務違反行為や任務懈怠(けだい)
④心身の障害による職務遂行不能等
その他、場合によっては経営能力の欠如も正当な理由と判断されることがあります。

過去の裁判例では、新規事業を開始するために招へいされた取締役が、業績不振のために解任された事例があります。この事例では、会社は新規事業から撤退する経営判断を行い、その取締役を解任したところ「正当な理由があった」として、解任された取締役からの損害賠償請求が棄却されました(横浜地裁 平成24年7月20日)。

(3)株主による取締役解任訴訟とは

取締役に不正行為、または法令・定款違反行為があるにも関わらず、株主総会で取締役の解任が否決された場合には、一定の要件を満たす株主が否決されたときから30日以内に、会社と解任されるべき取締役に対して、取締役解任訴訟を提起することができます。

(4)取締役の解任は、登記が必要

取締役を解任したときは、2週間以内にその旨を登記しなければなりません。
登記をしないでいると、取引先など第三者から見て、終任後の取締役が取締役のままとなるため、何かトラブルが起きた時に取締役の終任を知らない第三者(善意の第三者)には対抗できなくなります。
なお、取締役が辞任したのに会社が登記を放置している場合には、辞任した取締役は会社に辞任登記をするよう、裁判で請求することができます。
そして、裁判が確定すれば取締役が辞任登記することが可能となります。
ただし、裁判の判決が出るまでに時間がかかるので、自衛手段として、取引先に取締役辞任の挨拶状を送る方法もあります。そうすれば、取引先の相手方は「取締役ではないと知らなかった」とは言えなくなり、善意の第三者と主張しにくくなるでしょう。

(5)使用人兼務取締役の解任

使用人兼取締役(従業員兼務取締役)の解任は、取締役解任のための手続と従業員解雇のための手続の双方をとる必要があります。取締役を解任するための手続きは、株主総会決議ですが、使用人(従業員)としての地位が残っているため、通常の従業員と同じように解雇手続きが必要になります。
従業員の解雇事由は、「本人の能力が著しく劣っている」「本人も全く努力もしない」「改善することも全く期待できない」といった特別な場合に適用できますが、「社長個人との折り合いが悪い」「業績不振だ」といった程度の理由では、解雇をする正当な理由とはいえません。正当な理由のない解雇は、権利の濫用となるおそれがありますので、注意が必要です。

(6)取締役解任に解雇予告手当は必要か

取締役は、株主総会決議さえあれば、いつでも解任できるのが原則です。
したがって、労働基準法20条(※)の適用はなく、解雇予告手当を支払う義務はないと解することもできます。しかし、この場合も使用人兼務取締役の場合には注意が必要です。
使用人兼務取締役の場合には、取締役としての報酬と使用人としての給与を区別して考える必要があります。そして、使用人としての給与には労働基準法が適用され、退職する際には会社が解雇予告手当を支給すべきといえます。
過去の判例でも、使用人兼務取締役を即時解雇する場合には、解雇予告手当を支払う義務があるとしたケースもあります。

取締役としての報酬と使用人としての給与が明確に区別されていない場合でも、合理的・っ客観的な方法で区別したり、全部の報酬や給与を基準として解雇予告手当を支給したりする方が、トラブルを回避することができます。

※労働基準法第20条
労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日以上前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。 労働基準法違反とならない。

(7)取締役に懲戒処分できるか

取締役には、本来従業員としての身分がないため、就業規則は適用されません。
もし取締役に就業規則を適用したい場合には、取締役服務規程などを別途設けるべきです。
そして、この取締役服務規程に懲戒事由を定め、取締役会で決定する必要があります。

一方、取締役が使用人兼取締役である場合には、従業員としての地位を有するため就業規則は原則として適用されます。したがって、使用人兼務取締役に就業規則を適用して懲戒処分をすることもできます。ただし、この場合にも一般の従業員と同一の取り扱いは避けるべきですし、取締役としての解任には株主総会決議も必要です。

(8)取締役の解任/トラブルを防ぐには?

取締役について解任という形式をとると、社会的な体面もありトラブルに発展するケースがあります。
取締役の解任に関するトラブルを防ぐためには、なるべく自発的に辞任してもらうよう説得し、退職慰労金を支払う方が無難と言えるでしょう。
または、取締役には任期がありますから、定年や任期満了を待って再任しない方法もあります。

まとめ

取締役は、任期満了し再任されなければ退任することになります。
また、会社は取締役をいつでも株主総会の決議によって解任することができます。
ただし、取締役を解任することに正当な理由がない場合は、不当な解雇であるとして会社に対する損害賠償請求が認められることがあります。

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