「発酵」と「熟成」は何が違うのか?

鍋が美味しい季節になりました。2019年は味噌や甘酒、チーズなどの発酵食品を具材やタレに使った「発酵鍋」が引き続き注目されています。また肉を一定期間熟成させた熟成肉も近年ブームになるなど、今「発酵」、「熟成」食品が注目されています。ところでこの「発酵」と「熟成」、食材が一定期間を経て美味しく変化するという点は同じですが、違いは一体どこにあるのでしょうか?
解説
発酵とは食材に付着した菌やカビなどの微生物がたんぱく質や糖質を分解し、うま味の素となるアミノ酸やアルコールなどを作り出し、人が食べて美味しいと思う状態に変化させることを言います。同じ原理でも、人が食べられないと思うものが腐敗になります。麹菌や乳酸菌、酵母菌といった微生物により、味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、ワインなどの発酵食品が作り出されており、発酵には微生物の働きが欠かせないものとなっています。
一方肉の熟成の場合、微生物ではなく肉がもともと持っている酵素によってたんぱく質などの分解が行われます。近年話題の熟成肉は食肉を一定期間保存することで、肉の自家酵素によりたんぱく質が分解され柔らかくなり、アミノ酸が増加した結果味も美味しくなります。(清酒、ウイスキーなど酒類の熟成は、保存・貯蔵中に起きる化学的変化になります。)
つまり食材が変化する過程に、微生物が介在するかどうかが発酵と熟成の大きな違いという事になります。しかし、例えば味噌は米に麹菌をつけて発酵させ、発酵の段階が終わると麹菌由来の酵素により熟成の段階に入るなど、実際には発酵と熟成のはっきりとした線引きは難しいとされています。
最初の発見は偶然の産物だったとも言われていますが、長い歴史の中で先人達の知恵が詰めこまれた「発酵」、「熟成」食品。味わい豊かなうま味や芳醇なコクや香りを日常の食生活に上手に取り入れたいですね。

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参考文献
  1. 「発酵」のことが一冊でまるごとわかる 齋藤 勝裕 ベレ出版
  2. 「料理王国」2019年2月号 発酵の可能性を探る 株式会社 CUISINE KINGDOM

豆知識

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