春は青春
夏は朱夏
秋は白秋
冬は玄冬


四季もご多分に漏れず
陰陽五行に当てはめられ
それぞれの色で表現されますが


この演目は

若草匂う春の野に
大きな傘の後ろから
陽炎の様にゆらゆら現れた少女が
暮れ染めて行く春を
愛惜の情を込めて踊ります


少女から大人へと成長して行く時の
何とも言えない頼り無さと
それでも容赦なく大人になって行く事を
受け入れて行く時の決意の様な物を
過ぎ行く春への寂しさに擬え
晩春の風物詩を読み込んだ
詩情あふれる作品です



「長唄 惜しむ春」

作詞 : 香取 仙之助
作曲 : 四世 杵屋 佐吉

春や幾年 惜しまるる 
身にふさわしき振りに袖  
つつむにあまるいろくさや


うつつなき 桜の色に戯れて 
東風は心に流れ来る
空さえ夢の銀砂子
燃ゆる思いを陽炎に  
たゆたいよればいつしかに


とけて吹かるる緋鹿の子の  
手がらに顔も染め模様
丘の若草もつれて匂う
霞のおくの揚雲雀
ひとつ姫松ふたりが命
都恋しやあの山憎や
君が恋しや都の空は 
涙つづれの花ぐもり 
なんとえ
濡れてよいよい恋春雨に 
濡れりゃ色ます糸柳
聞いたかえ  
ほんにやる瀬がないわいな


嘆くわれかなはらはらと 
散り行く花に暮れそめて 
いづくへ帰る雁がねぞ 
帰りはぐれて身を残す
あわれ供養の細煙
たなびき渡る静けさを身にしみじみと 
入相の鐘を数えて恨むなり
忍べばまして偲ばるる
その足取りのあさみどり 
春やまぼろしまぼろしの 
春の調べを君に贈らん