私は自宅の窓から見える風景を気に入っている。
聞こえてくる音も好きだなと思う。
夜明け、明るくなってゆく空の色。小鳥の声。
遠くにきらめく海や、夕焼けに染まる山。
日暮れて、山裾を走る電車の明かりを見ると、懐かしいような安らいだ気分になる。
虫の音も胸にしみる。
でも、昼間お散歩をしても、なぜか楽しくない。大通りは殺風景に見える。住宅街の小道に入ってもワクワクしない。家々のお庭には樹木があり、季節の草花は咲いているのに、なぜお散歩が楽しくないのか不思議だった。
今日、その理由が分かった……と思う。
どの道にも並木がないからではないかと。そして並木道のない街はこんなにも殺風景で、お散歩が楽しくないのかと驚いた。
東京駅の丸の内側から皇居に向かう行幸通りは、イチョウ並木が続く。11月半ば、辺りは黄金色に染まる。
皇居のお堀はぐるりと柳の並木道になっている。春先は、桜の淡いピンクに柳の柔らかい若緑がたまらない。無機質な高層ビルさえ美しく感じる。
緊急事態宣言も解除になった。一度東京に出かけてもよいだろうか。
並木道をお散歩したい。今日はとても東京が恋しい。