それから(1985) | 心を湛(しずか)にゆるがせて

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2015/5/24観  於・小倉昭和館2(『ユメ十夜』と二本立て)

And Then ─ それから

1985年  日本映画  130分
監督/森田芳光(『武士の家計簿(2010)』)
原作/夏目漱石
脚本/筒井ともみ
撮影/前田米造
美術/今村力
音楽/梅林光
【キャスト】
長井代助(実業家の次男)/松田優作
平岡三千代(代助の想い人)/藤谷美和子
平岡常次郎(代助の友人で三千代の夫)/小林薫
菅沼(代助と平岡共通の友人で三千代の兄)/風間杜夫
長井誠吾(代助の兄)/中村嘉葎雄
長井梅子(誠吾の妻)/草笛光子
縫子(兄夫婦の娘)/森尾由美
長井得(代助と誠吾の父)/笠智衆
寺尾(代助の友人で文学者)/イッセー尾形
佐川家令嬢(代助の見合い相手)/美保純
小染(芸者)/川上麻衣子
門野(代助の書生)/羽賀健二
長井家の老女中/一の宮あつ子
代助は帝大卒業後も実家の援助で暮らす裕福な男。無職でも家を持ち、女中と書生を抱えて優雅な生活だった。銀行に勤務する友人・平岡が部下の使い込みの責任で辞職、代助に職探しを依頼する。平岡の妻・三千代は共通の親友・菅沼の妹で、実は代助は彼女を愛していた。困窮する平岡夫妻を援助しようとするが、自身が実家に寄生する生活であり無力だと気付かされる・・・。

大昔 TVかビデオで観ただけだったので、この度 初めてシアター鑑賞できて嬉♪
が、フィルム上映だったせいか画面は疵だらけだし飛ぶし・・・という難点有り。

原作は、漱石の教養小説(と発表当時呼ばれたらしい)三部作『三四郎』『門』に挟まれた真ん中の物語。これが教養小説と言うのなら明治の世は「不倫は文化」だったのだろう。文学の世界は不倫オンパレードではあるけれど。

「夏目の不倫物」と言えば、精神論をとうとうと(或はゴチャゴチャ)言い続ける話なので、読んでるとちょっとイラつく。谷崎センセみたくフィジカルではない。でも、映像にすると(演出にもよると思うけど)淡々としたストーリー展開が心地良い。

オープニング・タイトルで、真っ暗な中から段々とセピア色に三千代の肖像が浮かび上がる映像は実に美しい。30年前の藤谷美和子が真に綺麗で溜息もの♪
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30年前の作品なので出演者全てが若い(当たり前!)。現役活躍中の小林薫や風間杜夫が青年だ~(優作さん・・・合掌)其々渋いオジサンになってるのが嬉しい♪
儚げなヒロインがぴったりだった藤谷美和子は最近どうしているのだろう?草笛光子はまだまだ現役だし、美保純も良いお母さん役などで活躍してる。

1909年に発表された作品なのに、改めて見ると内容は現代的。プー太郎の主人公が自立を決意するまでの物語だ。主人公は30歳なんだけど、現代と違い帝大卒なら良い仕事に就けるだろうに、実家掛かりで家まで建てて暮らしてるとは、なかなか年季の入ったニート(正確に言うと教育は受けてるからNET?ネット?爆!)。そんな生活出来るもんならやってみたい・・・と言う書生の門田に大賛成である。

だいたい大日本帝国憲法って、男子も30歳まで父親の許可なく婚姻ができなかったらしい。それってニートの温床なのでは?(こら!) 果たして、30歳になってやっと重い腰を上げ、親友に取られちゃったと言うか、ぼやっとしてたら先を越されちゃった(原作では自分が仲を取り持ったりするマヌケっぷり)マドンナを、僕にください♪って親友に頼む(夫妻は実質 破局している)のだった。はあ~やれやれである。こんな生活能力の無い男についてったら、彼女は間違いなく×2確定であろう。

詳しくは『門』(1910年発表)をお読みいただけれると分かります。原作があまりに有名過ぎると、確信犯的な感想も書いてしまうシンプル脳であります(汗!)。

明るくない物語にマッチしたサティの「グノシエンヌ」が良いし、ちまちまと登場するグラスやラムネの瓶などレトロな小物が風流。演出も繊細で、息せき切って代助を訪なった三千代が、堪え切れず白百合を活けたガラス鉢の水を、グラスにすくってごくごくと飲み干すシーンなど映像がとても綺麗だった。

漱石の名作文学、現代の小説や映画では先ずお目に掛かれないプラトニック不倫の神髄を堪能できます♪