鶴田浩二演じるやくざが最後に醜態を曝すのが見もの 「暴力団」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流2024 より

 

製作:東映

監督:小沢茂弘

脚本:村尾昭

撮影:仲沢半次郎

美術:藤田博

音楽:小杉太一郎

出演:鶴田浩二 梅宮辰夫 本間千代子 高千穂ひづる

         南廣 小川守 多々良純 金子信雄 志村喬

1963年8月7日公開

 

桜木(鶴田浩二)が刑期を終えて出所しました。桜木を良く知る志村刑事(稲葉義雄)は、彼のことを思い無茶をしないよう釘を刺します。しかし、桜木は舎弟分の松永(梅宮辰夫)と宮部(多々良純)を従え、富島(南廣)の賭場を襲って売上金を奪います。富島は兄弟分の河津(金子信雄)、三好(三島雅夫)と結託し、桜木を刑務所へ送り込んだ経緯があり、売上金を奪ったのもその意趣返しでした。桜木のお礼参りは富島に留まらず、河津と三好も同じ目に遭わされます。

 

桜木、松永、宮部は隅田川のスラム街に育った男達で、ある程度の金が貯まったら、ヤクザの世界から足を洗うつもりでした。売上金を奪った際に、宮部が負傷し、町医者の浜本(志村喬)に治療してもらい、桜木は口の減らない浜本に閉口します。一方、浜本は不良少年たちが桜木を憧れの目で見ていることに懸念を抱いていました。

 

やがて、三好等は外部から殺し屋を呼び、宮部を殺させます。桜木は殺し屋二人を始末して、宮部の仇を討ちます。桜木の情婦リエ(高千穂ひづる)は彼の暴走を憂い、彼女の田舎である北海道に行くことを勧めるのですが、桜木は受け付けません。その頃、堅気になる決心をした松永は、恋人の澄子(本間千代子)の店で働いていました。ところが、敵の罠に嵌り桜木の目の前で殺されます。桜木を崇拝する松永の弟次郎(小川守)は、兄の仇とばかり三好を狙おうとするのですが・・・。

 

本作は黒澤明監督の「酔いどれ天使」とジェームズ・キャグニー主演の「汚れた顔の天使」を掛け合わせたような内容で、あからさまな引用には苦笑したくなりました。「酔いどれ天使」を思わせるのは、口の悪い町医者を志村喬が演じているのみならず、堅気から見たやくざの流儀の滑稽さや、リエが桜木にやくざをやめて自分の故郷で人生をやり直そうと誘うところなどにも表れています。一方、「汚れた顔の天使」に関しては、やくざに憧れる不良少年たち、最後に主人公が敢えて不良少年たちに偶像崇拝をやめさせる点に共通性があります。

 

あからさまな引用と前述しましたが、この二つの作品を組み合わせて、一つの作品として落とし込んだ点は評価に値します。更に、鶴田浩二にここまで惨めでみっともない死にざまを用意した点も高く買いたいです。そして、醜態を曝す死にざまも、やくざに憧れる少年たちに対し、やくざがろくでもないことを、身をもって示そうとする桜木の真意を知れば、鶴田浩二というスターのイメージを崩さずに、従来通りに死にゆく者の美学は辛うじて保たれています。

 

ただし、鶴田浩二は良くも悪くも分別のある男のイメージが定着しているため、やくざ者が身に纏う危うさにはやや欠けるきらいがあります。「酔いどれ天使」で三船が花屋から金も払わずに勝手に持っていくのに対し、本作の鶴田は少年たちが盗んだ果物に対し、代わりに金を払ってやる人の好さが出てしまいます。怖さを売り物にするやくざだからこそ、最後に命乞いをする落差も活きてくる訳で、作り手としてはその点だけが計算違いだったかもしれません。