なんと何と‼️

冬夢がブログを書き始めた当初から、ずっとちゃんとした日本語字幕で観たいと思っていた韓国のLGBT作品が、アマゾンプライム、U-NEXTで配信開始されましたーキラキラ


それがこの作品『夜間飛行•Night Flight』。



2015年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映された作品なのですが、なかなか一般的に観られる媒体での配信がずっとなかったのです(T ^ T)

それがAmazonとU-NEXTで見放題配信始まりました‼️


2014年の映画制作当時は、今の韓国BLシリーズのようなブームももちろん無く、こうしたLGBT関連の骨太の作品が主でした。

この作品の監督イソン•ヒイル監督は、自身がゲイだとカムアしています。そして冬夢の大好きな作品、2006年の『後悔なんてしない』の監督でもあるんです。



注意完全ネタバレしてます!


主人公のヨンジュ、ギテク、ギウンは高校入学まで親友と呼べる友達同士でした。

しかし3人が高校生になると、受験戦争が過激な中で、3人のバランスは崩れていきます。

ヨンジュは自分がゲイであると自覚しながらそれを隠す為勉強で1番になり、ギウンはある事がきっかけで不良グループのボスになり、オタクで太っちょのギテクをいじめの対象にしていました。


ギウンをずっと好きだったヨンジュは、昔の友情を取り戻したいし、彼からの愛をいつか独り占めしたいと思っていました。

でももちろん、色んな形でギウンに絡もうとするヨンジュの気持ちが報われる事はありません。

彼にとっては出会い系アプリで知り合った同じゲイのジュヌと、ビルの屋上にある廃業したゲイバー【夜間飛行】に潜り込み、話をするのが唯一の癒しでした。ジュヌに「ノンケに恋した」と告白するヨンジュ。

彼は自分の自転車を乗り逃げされ、その上売り飛ばしたギウンに、何かに付け「返せ」と言い、追いかけるのですがある夜、「なんで俺をつけ回す?」と聞かれます。「自転車を…」と言い返しますがギウンは気付いてました。

「いつも俺を見てる。中学の時からいつも盗み見てた」



すぐ目の前にギウンの顔があり、思わずキスしてしまうヨンジュ。ギウンは彼を殴りました。


韓国においてLGBT作品は、暴力と偏見が描かれる事が多いですが、この作品はまさにそれがメインのテーマです。

殴られたヨンジュはギウンに微笑み「誰にも言うな」と言います。このシーン、ホンマに切ないです。ヨンジュは殴られた痛みより、心が痛いはず。

ギウンって男は、殆ど言葉を発しなくて暴力も半端ない。彼が何故そうなったのかは後々分かってくるのですが、前半のギウンはホンマに嫌な奴。こんな奴のどこがエエねん?と何度も思いました。


一方のギテクは、ギウンの仲間で表では優等生のソンジンに「パンチングマシーン」と呼ばれ、殴る蹴るのイジメを受けていました。目の前のギテクを救おうとするヨンジュですが、自分も標的になる可能性が…

一度、暴力で怪我をしたギテクは学校に直訴、警察沙汰になるのですが、権力あるソンジンの親に揉み消されました。誰もギテクを救ってくれません。ヨンジュもただ寄り添ってあげるしかできませんでした。


でねー、ギウンの気持ちがあまり語られないので分かりにくいんですが、ヨンジュに2人が出会った頃の写真を見せられて、ものすごく動揺したりするんですよ。その後「俺の事好きか?変態」って悪態付いてヨンジュに当たったかと思うと、自転車を持ってきて次の日、一緒に出かけたりする。



自転車で並走する2人。川で泳いたり、話をしたり。このシーンは唯一、明るい自然の中で笑うヨンジュが見れます。

彼は2人きりでいる事に感情を抑えきれなくなり、ギウンを抱きしめました。



もちろん、拒否されるんだけどこれ迄のように殴られたりはしなかった。

しかしその後、学校に来なくなるギウン。探しに行ったヨンジュは、彼女とセックスするギウンを見てしまい動揺します。その足でジュヌと会い、ヤロうとするヨンジュ。でも彼の本当の気持ちを知るジュヌに拒否されます。そして彼から、ゲイばれした事から転校する事になったと告げられたのです。

ギウンへの気持ちが高まり、自分でも制御できなくなってきたヨンジュにとってまたひとつ、心安らげる場所を無くしてしまいました。

そしてこの時、壁に落書きしていた2人の写真がヨンジュの学校に送られてきた事から、先生たちにヨンジュがゲイである事がバレてしまうんです。

この先生たちがまた、クソ野郎ばっかりでね。生徒を守ろうなんて先生はいなくて、成績を上げ良い大学に入れる事だけを考えてる。差別意識バリバリで、クラスに「ゲイがいる」と生徒の前で言う。マジで胸糞悪いし、心底腹が立ちました❗️


追い詰められたヨンジュは、彼を気にしてくれたギウンを押し倒すのですが…

「一緒に逃げて…怖いんだ」

うわーん(´༎ຶོρ༎ຶོ`)、何でヨンジュがこんな目に遭わなきゃならないの?


ギウンは「夜間飛行」までヨンジュに付いてきてくれたのに、話しかけても返さないし一度もヨンジュを見ません。

「一度くらい笑ってくれても良いだろう⁉️」

そう言うヨンジュに、ギウンは…


「気持ち悪い」


どんなに思ったって、伝わらない気持ち。苦しくて泣けてきます。友達という関係がギウンにとってとヨンジュにとっての違いって何だろ?

めちゃくちゃ考えさせられます。


そして最後、ヨンジュに悲劇が。

ギウンと居るヨンジュを見て、彼を好きでゲイだと気付いたギテクは、ヨンジュが隠していたギウンとの写真を盗み、ソンジンに渡してしまうんです。

親友だと思っていた相手の裏切り。ギテクは「先に裏切ったのはお前だ。お前もギウンも汚い」と言いました。

そしてソンジンたちの魔の手は、ギウンにも…


ギウンの父は労働者デモで工場に火を付け、追われ隠れていました。犯罪者の息子となってしまったギウン。それをソンジンたちに知られてしまったのでした。


朝、ソンジン達に歯向かうためヨンジュが持っていたスタンガン。

それを使った為、壮絶な仕返しにあったヨンジュ。彼がソンジンたちに連れて行かれたと聞いたギウンは、あちこち探し回ります。


取り壊しの決まった「夜間飛行」で、ヨンジュを見つけるギウン…あぁ、怖かった…見つかって良かった…泣

「俺に近づくな、消えろ…」

そう悪態を付くヨンジュを、ギウンはそっと受け止めるのでした。


この後のギウンの行動にもう、泣かされて泣かされて…

ヨンジュのカメラでイジメのシーンを撮影されたのですが、メモリーカードだけ抜き取られたんです。動画を削除するには、それを取り返すしかない。

ギウンはひとり学校に乗り込み、ヨンジュを襲った者達をボコボコにしていきます。


「どこに隠した?出せ‼️」



ラストシーン、ヨンジュが自主退学を決め遠くのフリースクールへ行くと、入院中のギウンに言います。

「怖いよ、自分が壊れそうだ」

するとギウンは…

「行くな…寂しい」


そう言って、泣きじゃくるヨンジュを抱きしめたんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`)


ヨンジュの愛と同じ形では無いかもしれないけど、ラストシーンのギウンの行動には確かに「愛」が見えました。



韓国の競走社会は現代でも有名だし、性的マイノリティに厳しい国との認識もありました。

でもこの映画の中で描かれるヨンジュ達の過酷な状況下に、怒りと同時に悲しみが溢れました。

監督は自分が「エレベーター内で自殺直前の泣いている高校生」のCCTVの映像を見た時、この映画のモチーフを見つけた、と言っています。

そしてそのシーンは、イジメられたギテクがヨンジュに語る形で使われていました。


描かれる競走社会は学校内のヒエラルキーだけではなく、ギウンの父の労働運動闘争もあり、社会の不安定さをこれでもか、と見せています。ギウンが探し回る父と再会する場面がありましたが、父の行動のせいで母との生活が一変したギウンは怒りをぶつけますが最後、「死ぬな」と父に言うんですよね。もうそこも泣けて仕方ありませんでした。


《トップの人間はチキンを食べ、中間の人間はチキンを料理し、下層の人間はそれを配達する》

こんな言葉を生徒に復唱させる先生がいる学校が、マイノリティを隠して必死に勉強するヨンジュ達の居場所だなんて、本当に辛い。陰湿で悲惨な毎日の中、最後にヨンジュの本心と共にギウンが発した「寂しい」と言う言葉に、救われました。


見る人の好みを選ぶ作品だし、2時間を超える長編だし、はっきり言って見た後に凄まじく余韻を引きずるのですが、私は見て良かった。英語字幕で見た時とは全く違う余韻です…



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