甲斐バンド 1979(中編) 感触(タッチ) | Get Up And Go !

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「HERO」 の大ヒットの後、甲斐バンドはさらに加速します。 多くのファンを獲得し、コンサート会場はどこも満員。 25歳までに社会での発言権を持ちたいと考えていた甲斐にとっては、もう待ったなしの状況でのブレイクだったわけです。

それまでも一定のファンを獲得していたとはいえ、行き詰まり感もあった甲斐バンドが壁を突き破ることができたのは、ヒット性があり突破力もある 「HERO」 という楽曲の力によるものが大きかったのは間違いないでしょう。 高校時代、あのヒットにより、僕のクラスメイトやその周囲の人間にも急激に甲斐バンド・ファンが増えましたからね。

3月30日の新宿厚生年金会館、6月28日の八王子市民会館に続いて、秋のコンサートツアーのスタートとなった、9月2日のNHKホールでのコンサートにも行くことが出来ました。 同月24日にNHKでテレビ放映され、ラジオでも放送された、1979年の甲斐バンドのハイライトと言えるライヴです。





3600人収容のNHKホールは、当時の甲斐バンドにとっては最も大きな規模のコンサートであったはずです(1万人収容の武道館はこの年の年末)。 このライヴ、すごく良かったのです。 甲斐バンドのコンサートには、最初の解散となった86年までに10回ほど参加しているはずですが、僕が行った中ではこのNHKでのコンサートがベストです。

ファンのエネルギーは爆発的でした。 当時 勢いに乗っていた甲斐バンドの演奏に、さらなるエネルギーを与えるものであったと思います。 あの頃のオープニング・ナンバーは 「きんぽうげ」 でしたが、一曲目から最高潮のボルテージでした。 甲斐よしひろのヴォーカルも、この頃はストレートな歌い方で好きでしたね。

1. きんぽうげ
2. 感触(タッチ)
3. テレフォン・ノイローゼ
4. シネマ・クラブ
5. 裏切りの街角
6. らせん階段
7. 港からやってきた女
8. 三つ数えろ
9. 安奈
10. 噂
11. 嵐の季節
12. カーテン
13. 氷のくちびる
14. ポップコーンをほおばって
15. LADY
16. HERO(ヒーローになる時それは今)
-アンコール-
17. 翼あるもの
18. 最後の夜汽車
19. 感触(タッチ)

(1979年9月2日、NHKホール セットリスト)

思い出すことはいろいろとあります。 当時の甲斐バンド・ライヴでは、盛り上がりがいつもピークとなった 「氷のくちびる」 と 「ポップコーンをほおばって」。 まだシングル発売前で、ライヴでも初披露であった 「安奈」。 大森信和のギターが素晴らしい 「LADY」「シネマ・クラブ」。 メンバー紹介のさい、健康上の問題で不参加だった長岡和弘を 「見えるだろ」 と言って紹介したことなど。




甲斐バンド / シネマ・クラブ (1979 9.2 NHK)


「シネマ・クラブ」 という素敵な曲があります。 音楽と同じように映画を愛した甲斐よしひろの歌詞には、しばしば "映画" が登場します。 甲斐よしひろの持つロマンティシズムなのでしょう。 大森信和というギタリストの素晴らしさは、そんな甲斐の書く詞の世界に呼応した、歌ごころにあふれたギター・ソロにあります。 このライヴでの 「シネマ・クラブ」 は、大森信和がこの世に残した最高のプレイのひとつです (大森氏は2004年に死去)。

そして 「感触(タッチ)」。 「HERO」 の次にシングル発売されたこの曲を、当初は曲調からか 「HERO」 の二番煎じとか二匹目のドジョウ のように言う人もいました。 ですが、こちらのほうが好きだという人も多かったのです。 ぼくも 「タッチ」 のほうが好きでした。 当時、浜田省吾が自身のラジオ番組でこの曲を、"甲斐バンドの最も好きな曲" としてあげていたのが強く印象に残っています。

「HERO」 で得た勢いをさらに加速させた曲。 "陽の当たらないところ" を歩いてきた男が "太陽のある場所へ走り続けよう" と歌っているわけで。 甲斐バンドはここでベクトルの方向を大きく変えたのです。

当時の甲斐バンドのライヴは、「きんぽうげ」 の熱狂で始まり、「最後の夜汽車」 でその熱狂を静かに鎮めて終わる、というものでしたが、NHKのライヴでは、いつものアンコール 「最後の夜汽車」 の後、この日2回目の 「タッチ」 を演りました。甲斐にとっては 「これからは前向きに生きていくぞ」 といった決意表明であったのではないかと・・・ それは今にして思うことです。




甲斐バンド / 感触(タッチ) (1979 9.2 NHK)