こんばんは。三日月

 

早速ですが考えてみたいと思います。

 

 

はじめに、図の凡例に着目しますと、細い実線は乾燥断熱線、点線が湿潤断熱線であることに注意します。その上で大気の静的安定度について確認してみることにします。

 

 

「一般気象学」のp71にも載っていますが、簡単な図にしてみました。エマグラムを学習されている方はすぐにお分かりかと思いますが、傾きが大きい(寝ている)方が乾燥断熱線、傾きが小さい(立っている)方が湿潤断熱線です。

 

実はこの知識だけで選択肢は絞られてしまいます。したがって、この時点で①と⑤は誤りということになります。

 

ここから本題ですが、問題の図にありますようにA-Bという、ある厚さをもった未飽和の気層があり、この全体が飽和するまで上昇する場合を考えます。

 

気層がA-Bの状態のときの気温減率は乾燥断熱減率よりも傾きが小さいので、少なくとも安定な気層であると言えます。

 

この気層において、いまBでは湿度が低く、Aでは湿度が高いとしたとき、上昇流によって気層全体がどういう振る舞いをするかといいますと、Bは湿度が低いことから、乾燥断熱線に沿って上昇していきます。一方の湿度の高いAははじめは乾燥断熱線に沿って上昇しますが、やがて飽和して持ち上げ凝結高度に達しますと、今度は湿潤断熱線に沿って上昇していきます。

 

その結果、気層が飽和し、気温減率がはじめの状態より大きくなり、また湿潤断熱減率よりも大きくなり、不安定な気層に変わってしまいます。このような気層のことを「対流不安定の気層」といいます。

 

このような気層となりやすいのは特に梅雨期で、湿舌といった下層に湿度の高い空気が流れ込みがありますと、結果として下層で相当温位が高く、高度が増すにつれて低くなっていく気層となる場合に対流不安定となりやすく、対流雲が発達して大雨を降らせます。

 

 

(図3・図4 第24回試験 実技1より)

 

少し古い問題ですが、第24回試験・実技1で、「図3の領域B内のチェジュ島の対流雲に対応する相当温位(図4の細実線)の鉛直分布の特徴および大気の鉛直安定度について述べよ。」という問題がありました。日付は7月3日とありますので、ちょうど梅雨期ですね。

 

気象衛星画像に見られますように、対流雲が発生しやすい領域Bの中にあるチェジュ島の相当温位の鉛直分布を見てみますと950hPa付近から480hPa付近まで高度が高くなるにつれて相当温位が減少している気層、すなわち対流不安定の気層であることがわかります。

 

以上を踏まえて、残りの選択肢を見比べますとそれを満たしている図は②ということになります。実技試験でも問われる内容ですのでしっかり押さえておきたいところです。

 

では。バイバイ