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「選抜」ではなく「意向上げ」を目指そう


 採用活動は よく「営業・マーケティング活動」と同じだと言われていますが、皆さんはどういうことかわかりますか? 

 自社のサービス・ブランドの魅力を知ってもらって 最終的には購買行為に結びつけるという過程が 採用活動時の求職者へのアプローチと同じだということです。 マーケティングでは AIDMA(アイドマの法則)というのが有名ですね。

 そして、 ここで強調されているのが CX(カスタマーエクスペリエンス)です。ここも採用時とおなじで、応募受付から選考、入社に至るまでの一連のプロセスの中の、求職者とのタッチポイントでどれだけ「好感度の経験」を生み出せるかが 求職者の入社意志決定に影響を与えているという考え方です。 実際、新卒の就活生の振返り調査のレポートの中でも 「入社の決め手」は?という問いの答えに 「社内に良い雰囲気がありました」「窓口担当の方がとても丁寧でした」「応募者の不安を和らげる工夫を感じました」などの答えがとても多く挙げられています。  あなたの会社の採用活動では その視点でみて十分な配慮が行き届いているか点検する価値はあると思います。

企業と求職者は対等な関係です。

 CX(カスタマーエクスペリエンス)を考える時に 営業・マーケティング時の 顧客に対する企業側の基本姿勢を思い出して 下の写真をご覧ください。

 私は 違和感を感じてしまいます。 会社にお迎えしたお客様との面談時にこのような机配置でお話しすることはあるでしょうか? このカタチはよくオーディション等で見かける「選抜する場」の会場セッティングですね。 つまり、面接・選考が 「選抜の場」として設計されているという表れだと思うわけです。

 お客様に「自社商品・サービスを選んで買っていただく」という姿勢と 求職者に「自社の魅力を理解していただき、入社意向を高めてもらう」という姿勢は同じであるはずだという考えです。 もちろん、能力その他の条件でお見送りするケースもあるとは思いますが、人手不足に加えて 地方からの人材流出、人口減少などが社会問題だと言われ続けているのに 未だに 「雇ってやる」という企業の姿勢は 世の中が見えていないとしか考えられません。

 「選抜」ではなく、「意向上げ」という表現が、人事の領域では拡大しつつあるようです。この基本姿勢は 採用戦略の設計すべての面でこれまでとは違う組立・工夫・配慮を求めることとなることは 皆さんも想像に難しくないと思います。

 企業は 良い人財に来てもらい、長く貢献してもらいたいのです。 「来るものは拒まず、去る者は追わず」という表現を皆さんはどう思いますか? いかにも潔い心構えと感じて使っている方に多くお会いしましたが、 私の感想は 「自分起点の発想」であり、対等性の欠如」を感じてしまうわけです。 労働政策を所管する 厚生労働省では 「職業安定法」のなかで 「公正な採用選考の基本」をうたっていますが、 倫理的な観点だけでなく、中小企業の労働政策上の課題への向き合い方として 「対等」という概念を忘れてはならないと思います。