【開幕】都市にひそむミエナイモノ展 SusHi Tech Square1Fフロア(東京・有楽町)で3月10日まで 都市の未来を想像させる体験型展示 入場無料で存分に

Tomo Kihara & Playfool《How (not) to get hit by a self-driving car》を体験している様子

今年8月30日に有楽町駅前にオープンした「SusHi Tech Square」で、「都市にひそむミエナイモノ展」が12月15日(金)から2024年3月10日(日)まで開催されます(入場無料)。

本展は、今年8月~11月に開催された第一期「わたしたちのからだは心になる?」展につづく第二期の展覧会で、8組のクリエイターがデジタル・テクノロジーを活用して制作したメディアアートを展示。「テクノロジーによって、未来がどう変わっていくか」をテーマとし、私たちの「都市」や「生活」に焦点を当てます。

都市にひそむ”ミエナイモノ”を可視化

都市にひそむミエナイモノ展 展示風景

都市を歩けば、たくさんの人やモノ、コトが目に飛び込んできます。一方で、人々が抱く愛着や記憶、生活の基盤となるテクノロジーなど、都市には多種多様な”ミエナイモノ”がひそんでいます。

本展では、”都市にひそむミエナイモノ”を展示作品によって可視化。作品を鑑賞・体験しながら、未来の都市の姿や生活を想像することが本展の狙いです。開幕前の内覧会に参加し、特に印象に残った作品を3つ紹介します。

あの中銀カプセルタワービルを探検

gluon + 3D Digital Archive Project《Metabolism Quantized》

《Metabolism Quantized》では、老朽化などで解体された建築物を精緻な3Dデータで再現。黒川紀章の名建築「中銀カプセルタワービル」、惜しまれながら閉店したキングオブ銭湯「大黒湯」、外観があまりに独特だった「旧都城市民会館」が日替わりでモニターに映り、来場者はアバターとなって建物の中を探検できます。

建築の垂直断面・水平断面を見られるコーナーも

この技術を活用すれば、世界中から参加可能な建築ツアーやイベントなどを開催できるかもしれません。今はもう見ることができない建物が、新たな思い出や記憶をつないでいくことをイメージすると、胸が躍ります。

AIは人間をどう捉えているのか

Tomo Kihara & Playfool《How (not) to get hit by a self-driving car》

《How (not) to get hit by a self-driving car》は、AIに歩行者と検知されないように横断歩道を渡り切るゲームです。AIに人間だと検知されたら、負け。参加者は、AIの目をだましながらゴールまでたどり着かなければなりません。

Tomo Kihara & Playfool《How (not) to get hit by a self-driving car》

このAI技術は、今後実用化が期待されている自動運転車のベースになるでしょう。大量の画像データを学習したAIは人間を瞬時に検知するはずですが、はたして、車椅子や杖、子どもが隠れた段ボールなどを「人間」と判断できるのでしょうか。

ゲームで参加者がAIに勝ったとき、従来のAIにはなかった「人間の捉え方」が判明することになります。このゲームがAIの弱点や、人間とAIで補い合わなければならないものは何かを考えるきっかけとなるはずです。

複雑な問題をChatGPTが議論したら…

近年、飛躍的な向上を遂げたChatGPTをテーマにした作品も。《Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて》は、ChatGPT同士がなかなか答えが出ない問題についてディスカッションするというものです。

Qosmo《Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて》

複数の異なる人格(年齢、性格など)が付与されたChatGPTが「資本主義とテクノロジー」「ロシアのウクライナ侵攻」「男女別学は性差別かどうか」などについて議論します。相手の発言に反論することもなく、具体的な案を出すこともなく、あたりさわりのない会話が続き、美しくてありきたりな結論に終着しますが、本題はここからです。

Qosmo《Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて》 ChatGPTが議論している様子

鑑賞者は作品をみた後に、アンケートに回答します。会話のなかで気になった発言、議論のテーマとして扱ってほしいトピックを書き込み、その内容がChatGPTに反映されていくのです。会期が進むにつれて、ChatGPTの会話はどのように変化していくのでしょうか。私たちは、生身の人間とChatGPTの発言を判別できるのでしょうか。私たちの言葉、思考の重みや価値について、深く問いかける作品です。

参加クリエイター、作品
<建築・都市の記憶を後世に残すことはできるのか?>
クリエイター:gluon + 3D Digital Archive Project 作品名:Metabolism Quantized

 

<現実とフィクションの景色に境界はあるのか?>
クリエイター:セマーン・ペトラ 作品名:About their distance

 

<都市でAIに見つからないためには?>
クリエイター:Tomo Kihara & Playfool 作品名:How (not) to get hit by a self-driving car

 

<人工生命は環境からどんな影響を受けるのか?>
クリエイター:菅野創+加藤明洋+綿貫岳海 作品名:かぞくっち

 

<複雑な問題を前に、人とAIはどんな答えを導き出せるのか?>
クリエイター:Qosmo 作品名:Artificial Discourse: すばらしい新世界に向けて

 

<現代都市の「楽園」は、どこにひそんでいるのだろう?>
クリエイター:藤倉麻子 作品名:あの山の裏/Tire Tracker

 

<過去と未来が交錯する「もうひとつの東京」とは?>
クリエイター:佐藤朋子 作品名:オバケ東京のためのインデックス 序章 Dual Screen Version

 

<未来の技術によって、人々の生き方はどのように変わるのか?>
クリエイター:長谷川愛 作品名:Parallel Tummy 2073

(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)

都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City
会場:SusHi Tech Square 1階(東京都千代田区丸の内3-8-3)
会期:12月15日(金)〜2024年3月10日(日)
開場時間:平日 11:00〜21:00(最終入場 20:30)、土休日 10:00〜19:00(最終入場 18:30)
入場料金:無料
休業日:月曜日(ただし1月8日、2月12日は開場)、1月9日、1月24日、2月13日、年末年始(12月29日〜1月3日)
アクセス:有楽町駅前、東京交通会館向かい
公式サイト:https://sushitech-real.metro.tokyo.lg.jp/second/