「平成の時代まではゲコは冷遇されていたが、令和の時代になってついに全国のゲコは立ち上がることになった」――。2019年、フェイスブックでお酒が飲めない下戸の集まり「ゲコノミスト」が発足した。半年で3000人超の参加者が集まり、埋もれていた下戸の本音が浮かび上がっている。

 若い世代のお酒離れや、健康志向の高まりでノンアルコール市場への注目度が高まる一方で、発起人であるレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は、「メーカーや飲食店など提供者側の下戸への理解が足りない」と指摘する。下戸が楽しめるノンアル商品が登場すれば、「ゲコノミクス」効果は3000億円以上の潜在力があると語る。そんな藤野氏に、「卒酒」を目指す記者がインタビューした。

<span class="fontBold">藤野英人(ふじの・ひでと)</span><br> 1966年生まれ。国内や外資の大手投資運用会社でファンドマネジャーを務めた後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用している。33歳の頃にぜんそくを患い、完全な下戸に。19年6月にフェイスブックで下戸が集まるグループ「ゲコノミスト」を立ち上げた。(写真:竹井俊晴)
藤野英人(ふじの・ひでと)
1966年生まれ。国内や外資の大手投資運用会社でファンドマネジャーを務めた後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用している。33歳の頃にぜんそくを患い、完全な下戸に。19年6月にフェイスブックで下戸が集まるグループ「ゲコノミスト」を立ち上げた。(写真:竹井俊晴)

立ち上げから半年あまり、「ゲコノミスト」の参加者は3000人超。下戸の思いの強さを感じます。

藤野英人レオス・キャピタルワークス社長(以下、藤野氏):私自身は体質的にお酒に弱く、もともと下戸のようなものでしたが、33歳にぜんそくを患い、お酒を飲まなくなりました。周囲に悪意がないとは分かっているのですが、お酒を飲めないことで残念な思いをすることが多くありました。

 「人生の半分は損している」とか「酒が飲めないのによくファンドマネジャーができるな」などと言われるのは、しょっちゅう。最近はさすがに減ってきましたが。お酒が飲める人や飲食業界は、下戸の気持ちが想像できていません。下戸の不満を逃すのは経済的にも損失だと思い、グループを立ち上げました。

確かにお酒が飲めない人は、宴会は苦痛なのかも。私のお酒が飲めない知人は、宴会で周囲の酔っ払いに負けないテンションで参加し続けていて、すごいなぁと思ったことがあります。

藤野氏:それってすごいことでしょうか?

お酒が飲めない人にとっては、至って普通ということでしょうか。

藤野氏:そうです。今のお話は、お酒を飲む人の見方であり、下戸にとっては、「違和感はあるけど、言われ慣れたから、気にしなくなった」ということです。

 レストランでも悔しい思いをすることがあります。従業員に手渡されたワインリストを「いらない」と返すと、一瞬ですが、がっかりしたのが伝わってきます。この人は、客単価が低いなぁと。こちらは、別にケチっているわけではなく、おいしく楽しめるノンアルコール商品がないから、頼んでいないというだけなのに。

意外といる「飲めるが好きでない」潜在層

下戸に対する機会損失があるとおっしゃっていますが、ノンアル市場の潜在力はどれほどあると思われますか。

藤野氏:ビール市場が3兆円、仮に10人に1人が下戸なら少なくとも市場規模は3000億円はくだらないなと。そして下戸はもっと多いと思いますし、これから増えていくと思います。今回、ゲコノミストに多くの人が集まってくれたおかげで、下戸にも色々な傾向があることが分かりました。

 お酒の好き・嫌い、飲める・飲めないで4象限に分けます。飲めなくて嫌いな人は「真性の下戸」。世間が普通思い浮かべる下戸ですね。好きだけど飲めない人もいますね。体質などで飲むと体調が悪くなったり眠くなってしまったりして、その場を存分に楽しめない。そして、意外にいたのが、飲めるが好きではない層です。例えば、鷲尾さんは、トマトジュースは好きですか?

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実は子供の頃からトマトが好きではありません。食べられないことはないのですが。

藤野氏:なのに、トマトジュースを何本も勧められたらどうですか。

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