自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の余波が続いている。東京地検特捜部は国会議員3人と安倍、岸田、二階3派の会計責任者らを立件。自民党ではこの3派と森山派、谷垣グループが解散を決めた。

 その後も政治資金収支報告書に不記載があった安倍派議員らへの聞き取り調査で、多くの議員が違法性を認識していたなどコンプライアンス(法令遵守)意識の欠如が浮き彫りになった。「政治とカネ」問題に対する世論の批判は収まる気配がなく、直近の報道各社の世論調査で内閣支持率は政権発足以降で最低水準に低迷している。

 野党は裏金づくりが常態化した経緯や使途について実態解明を進めるよう岸田文雄首相や自民党に要求。衆参両院の政治倫理審査会の開催などに向けて攻勢を強めた。

岸田政権は低空飛行で続く?

 2024年度予算の年度内成立のため防戦に追われる首相だが、ここにきて与野党双方から「岸田政権は低空飛行で続きそうだ」との声が出始めている。首相が自民党内の政局で優位に立ったことが1つ目の理由だ。岸田派の元会計責任者の立件が迫る中、窮余の策だった首相の「岸田派解散宣言」を契機に派閥解散が相次ぎ、安倍派の「5人衆」や二階俊博元幹事長ら派閥の力を背景にした実力者の影響力は急低下した。

 「ポスト岸田」を目指す茂木敏充幹事長も自らが率いる茂木派から退会者が相次ぎ、動きを封じられつつある。今や政権運営の主軸は麻生太郎副総裁、茂木氏との「三頭政治」から国対委員長の経験豊富な森山裕総務会長、浜田靖一国対委員長との「首相官邸―国対ライン」に変わりつつある。野党各党の政党支持率があまり上昇しないことも首相の安心材料だ。

 賃上げへの注力などで首相が粘り腰を見せる中、今回の裏金事件を受けた自民党改革や政治資金制度などの改革論議が進み出した。

 自民党は1月25日に決定した党改革の中間取りまとめで、派閥から「カネと人事」の機能を排除すると宣言。(1)政策集団(派閥)の政治資金パーティーや人事での推薦の禁止(2)派閥の収支報告書の提出に外部監査を義務付け(3)政治資金パーティーなど国会議員関係団体の収入は銀行振込を基本とする――などを示した。今後各党との協議を経て政治資金規正法の改正などを行う方針も明記した。

 これを踏まえ、自民党は2月13日から政治刷新本部に設けた作業部会の議論を始めた。(1)政治資金に関する法整備の検討(2)党機能とガバナンス強化(3)党則などの見直し――の3つの作業部会で議論を進める。党則や党の指針「ガバナンスコード」の改正については3月17日の自民党大会に提示し、決定する予定だ。

 今後の焦点は与野党協議でどこまで実効性の高い改革案をまとめることができるかだ。公明党と野党各党は規正法の改正など具体的な対策を固めており、自民党の出方が注目されている。

 政治資金の透明性確保と罰則強化という方向性は与野党の共通認識だ。政治資金収支報告書のオンライン提出や公開は自民党も自主的に取り組む構えだ。第三者機関の設置など外部の視点で政治資金をチェックする仕組みづくりは公明党や多くの野党が訴えており、自民党も検討する見込みだ。

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