Text by Katsuyuki Yakushiji
全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるい、多くの会議が中止、またはリモートでの開催となった。その中で、G7の“対面”への実現にこだわりを見せたのが、アメリカのトランプ大統領だ。この件から見えてくる世界情勢とは? 朝日新聞元政治部長の薬師寺克行氏が解説する。
もはや「時代遅れ」?の主要国首脳会議(G7)
毎年、初夏のころ開かれてきた主要国首脳会議(G7)が今年は例年以上に存在感をなくしてしまっている。当初は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてテレビ会議での開催が検討されていたが、5月末、議長国となった米国のトランプ大統領が突然、ワシントンで6月末に対面方式で開催することを提案した。これに欧州勢が異を唱えると、それを不愉快に思ったのかあっさりと9月以降に延期した。その後はトランプ大統領の口からサミットの話は全く出てこなくなった。
コロナウイルス感染拡大の影響を受けた世界経済の立て直し策をはじめ、香港問題を中心とする対中政策など、今年のサミットは例年以上に取り上げるべき重要テーマは多い。
ところが参加する首脳の主張が大きく異なるうえに人間関係もあまりよくないため、集まって何がまとまるのかという状況に陥っている。冷戦時代はオイルショックへの対応など世界経済の発展にそれなりに貢献してきたサミットだが、今やトランプ大統領までもが「時代遅れだ」と酷評するように、見る影もなくなりつつあるようだ。
6月18日の未明、一つの外交文書が公表された。「香港に関するG7外相声明」と題されたその文書は、中国が進める「香港国家安全維持法」制定の動きを、当時としてはかなり厳しい表現で批判した。
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PROFILE
薬師寺克行
東洋大学社会学部教授。東京大学文学部卒業後、朝日新聞社入社。主に政治部で国内政治や日本外交を担当。政治部次長、論説委員、月刊誌『論座』編集長、政治部長、編集委員などを経て、現職。著書『現代日本政治史』(有斐閣)、『証言 民主党政権』(講談社)『公明党 創価学会と50年の軌跡』(中公新書)ほか多数。
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