SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」
~水産養殖業にできるSDGsへの取り組み~

いま、世界の海ではプラスチックごみや海の酸性化、養殖業の増加などによる生態系への影響が問題視されており、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」への意識が高まっています。特に水産養殖業においても、SDGsへの取り組みが強化されています。
今回は、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の背景や実態、水産養殖業の事例を通じて、水産養殖業にできるSDGsへの取り組み方法をご紹介します。

1.SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは?

いま、世界中で取り組まれている2030年までに達成すべき目標「SDGs(持続可能な開発目標)」では、17の目標(ゴール)と169のターゲットが設定されていますが、その目標のうち、14番目に「海の豊かさを守ろう」があります。

●SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは
この目標では、今、地球上の海で起こっている問題を解決するための複数の細かい目標が掲げられています。総じて、将来に渡って持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、大切に使うことを目標としています。

いま、海で起こっている問題として、海の生き物たちがプラスチックごみを飲み込んでしまうことによる負傷や死滅、海の生態系への悪影響などがあります。また「海の酸性化」問題もあります。CO2の排出量が増えたことにより、海の二酸化炭素の濃度が上がってきており、これも海の生態系に影響をもたらしています。

また、養殖の増加も問題視されています。日本の漁獲量は減少の一途をたどっており、現在は足りない分の魚を養殖で補っています。しかし養殖には周辺の自然破壊や、エサ作りの材料を大量に捕獲することによる海の生態系への影響など、問題は山積みとなっています。

このような現状の海洋課題を解決するための目標が14の「海の豊かさを守ろう」に定められています。

2.世界と日本の水産資源の現状と日本のSDGsへの取り組み

 

近年、水産業界では環境意識が高まっており、養殖問題への対応も進んでいます。いま、世界と日本ではどのくらい養殖が行われているのでしょうか。

2-1.世界と日本の漁獲量と養殖生産量

世界の漁業と養殖業の生産量は増加傾向にありますが、養殖業が年々増加しており、2013年以降は、全体に占める養殖業による割合が5割を超えました。
日本の漁業・養殖業生産量は減少傾向が続いており、漁船漁業による生産量の減少により、2000年以降は生産量全体に占める養殖業の割合は2割以上となっています。

2-2.日本における水産養殖業のSDGsへの取り組み

日本の水産養殖業においては、近年、海の環境を守りながら養殖業を行うことで、持続可能な在り方を模索するなど、環境問題への取り組みが活発になってきています。その一つが「みどりの食料システム戦略」に基づく取り組みです。

「みどりの食料システム戦略」とは農林水産省主導で推進されている政策方針です。食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を、イノベーションで実現させることを目的に、中長期的な観点から戦略的に取り組むものです。SDGsへの対応の必要性も加味されています。

生産から消費のサプライチェーン全体について、労力軽減・生産性向上、地域資源の最大活用、脱炭素による温暖化防止、化学農薬・化学肥料の抑制の点から、革新的な技術・生産体系の開発を目標としています。それは、従来の施策の延長ではなく、サプライチェーンの各段階における環境負荷の低減と労働安全性・労働生産性の大幅な向上をイノベーションにより実現していくことが求められています。

具体的な取り組みとして、6つの分野にわたって提案されています。

  • 1.資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
  • 2.イノベーション等による持続的生産体制の構築
  • 3.ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立
  • 4.環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進
  • 5.食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造
  • 6.サプライチェーン全体を貫く基盤技術の確立と連携

例えば、3の「ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立」の例を挙げると、長期保存、長期輸送に対応した包装資材の開発や、防カビ効果を有するなど新たな機能性包装資材の開発などがあります。

いずれにしても重要なのは、サプライチェーン全体を通して取り組んでいくことといえます。

3.水産養殖業のSDGsへの取り組み事例

実際に、水産養殖業のSDGsへの取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。そこで日本の大手企業の中でも、水産養殖業にかかわる2社のSDGsへの取り組み事例をご紹介します。

3-1.三井物産のサプライチェーンにおけるSDGsへの取り組み

三井物産では食品原料や製紙原紙、油脂化学製品、水産物などの調達先などを含む約2万社ものサプライヤーとのサプライチェーンを構築しており、「サプライチェーンCSR取組方針」を策定してサプライチェーン全体の持続可能な社会の構築への貢献を目指しています。

その方針の実施状況や各社の方針の有無を問う毎年のアンケート調査「サプライヤー実態調査」の結果では、サプライチェーンのさまざまな取り組みが分かります。加工工場における環境管理においては排水処理施設での有機物処理などのほか、段ボールやプラスチックのリサイクルの取り組みもあります。
また養殖場では、生物多様性への配慮として遠隔操作式自動給餌システム導入により、最適な給餌量のモニタリングを実施し、海底への餌の蓄積を最小化する取り組みを実施しています。生態系に配慮した養殖活動を行っている実態がわかります。

この実態調査を受け、同社は地域社会や周辺住民、海の生態系に配慮した持続可能な水産業の発展を見出し、サプライヤーと協力して取り組んでいきたいと述べています。

3-2.日本水産のSDGsへの取り組み

グローバルで事業展開する水産資源を中心とした食品メーカー日本水産では、「サスティナビリティレポート2020」の中で、「豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する」ことを掲げ、海洋環境の保全などに取り組んでいます。また「安全・安心で健康的な生活に貢献する」ことについてはフードロス問題などへも取り組んでいます。これはサプライチェーンとの連携を通じて取り組まれています。

またプラスチック製容器包装の削減にも力を入れています。2021年3月より、エコマーク「みらいの海へ」の商品パッケージへの表示を開始しました。同社の「ニッスイ」ブランド全商品を対象とし、容器包装において環境配慮の取り組みを行った際に表示が可能になるものです。表示に関する環境配慮基準は、ニッスイの「容器包装選定ガイドライン」および本マークの表示基準で定めています。またプラスチック部会および容器包装エコプロジェクトを中心とし、自社のすべての製品を対象に、プラスチック使用の見直しを進めています。

さらに、同社の国内グループ会社である養殖会社では、水産品の輸送用発泡スチロール箱(魚箱)の使用を見直し、撥水性のある段ボール箱など、代替素材の使用検討を進めています。

4.まとめ

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の目標達成を見据えた取り組みが国内外で活発になっているなか、水産養殖業を取り巻くサプライチェーンのSDGsへの取り組みも進んでいます。

日本トーカンパッケージの漁業向けサービスは、そうした取り組みの一助となります。

●漁業向け包装仕様・包装設備サービス
当社の漁業向け包装仕様・包装設備サービスは、漁業向けの最適な段ボールを包装システム導入で実現し、魚の鮮度を保ちつつ大量梱包を可能にするサービスです。

当社が独自開発した魚箱専用の段ボール「たもっちゃん」は、段ボールに樹脂をラミネートすることで、高い耐水性を持つ機能性段ボールです。
一般的な段ボールは耐水性がないことから、魚の梱包・運搬には発泡スチロールが使われることが多いイメージがあるかと思いますが、日本トーカンパッケージの段ボールは、段ボール材に特殊な加工を行うことで優れた耐水性を持っており、鮮度を保つために氷を大量に入れたとしても、液体がこぼれることはありません。

脱プラスチックによる代替素材を検討する際には、ぜひ「たもっちゃん」をご検討ください。