これからの働き方に変化をもたらす9つのトレンド
Illustration by Pablo Caracol
サマリー:2023年、企業はインフレ、生成AI(人工知能)の出現など、職場に影響を与える大きな変化に直面した。2024年も混乱は続くと予想される。そこで本稿では、ガートナーが明らかにした、2024年に働き方を変える9つのトレ... もっと見るンドを紹介する。このトレンドに備えるリーダーは、人事成果と事業戦略目標の達成の両面で、自社の競争優位性を高められるだろう。 閉じる

人事成果と事業戦略目標の両方を達成するために

 2023年も、企業やそのリーダーは、職場に影響を与える大きな変化と戦い続けた。大きな変化とは、雇用者と従業員双方に対するインフレ圧力や、生成AI(人工知能)の出現、地政学的混乱、話題となった一連の労働ストライキ、オフィス復帰の義務化をめぐる緊張の高まり、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の取り組みをめぐる法律・社会情勢の変化、気候変動の影響の増大などだ。

 2024年も、混乱は続くと予想される。ガートナーの調査では、2024年に予想される「働き方」に影響を与える9つのトレンドが明らかになった。このトレンドに備える明確なビジネス戦略と人材戦略を策定したリーダーは、人事成果(タレント・アウトカム)と事業戦略目標の達成の両方において、自社の競争優位性を高めるだろう。

1. 企業は、労働コストに対処する新たな福利厚生を提供するようになる

 リモートやハイブリッド環境で働くようになった従業員は、毎日の出勤に伴うお金、時間、エネルギーのコストを負担せずに働くことがどういうものかを実体験した。本調査では、従業員の60%が出勤のコストはメリットを上回ると答え、67%がコロナ禍以前に比べて出勤に努力を要すると感じ、73%がコストが高いと感じると答えている。オフィス復帰の義務化は、「従業員がよい仕事をするために必要なもの」というより、「リーダーの望みを優先したもの」だと、48%の従業員が答えるのも不思議ではない。

 従業員は就業に同意した時点で一定のコストを負担するという、かつてはほぼ当然のように思われていたことが、働く場所とパフォーマンスとの間に決定的な相関がない以上、もはや当然とは言えなくなった。ガートナーの調査によれば、出勤要件は従業員のパフォーマンスに、プラスにもマイナスにも統計学的に有意な影響を与えていない。

 人材の獲得と維持を目指す企業は、完璧なハイブリッド戦略を追求するだけでなく、労働コストに正面から取り組もうとするだろう。そしてそのためには、オフィスに復帰するための有形無形のコストを分かち合い、総コストを削減する方法を見つける必要がある。

 大手企業は、以下のような、よりインパクトのある独自の福利厚生を模索している。

・住宅補助:従業員を出勤させたい企業は、従業員がオフィスの近くに住むための援助を検討する可能性がある。また、オフィスの近くに会社所有または借り上げのアパートを用意すれば、本社へ出勤するコストを抑えられる。

・育児、介護手当:コロナ禍によって、信頼できる柔軟な保育や高齢者介護、ペットケアが健全な労働力にいかに重要であるかを多くの家庭が痛感した。先進的な企業では、そうした不足を補うために、従業員向けの事業所内託児所や共同託児所、認定ペットケア提供者の推薦、高齢者介護のギャップを埋めるための熟練介護士のオンコール対応など、的を絞った福利厚生を提供し始めている。

・ファイナンシャルウェルビーイングプログラム:2023年の調査では、自身の経済的健全性を「よい」と評価した従業員はわずか24%で、2年前の27%から減少した。この経済的健全性の低さゆえに、労働コストの痛みはいっそう強く感じられる。従業員が資産を有効活用できるよう、個人向けのファイナンシャルプランニングや金融教育サービスを提供し始める企業が増えるだろう。

・学生ローンの返済:米国では4300万人以上が連邦学生ローンを抱えており、その残高は1兆7000億ドルを超えている。米国の税法では、企業が授業料補助と同様の援助を学生ローンの債務返済にも適用できるようになり、雇用主にとって、従業員が直面する最大の経済的ストレス要因の一つを軽減するチャンスとなっている。