Maciej Toporowicz, NYC/Getty Images

コロナ禍を経て、「希望」を持ち続けることは、ビジネスの世界でも重要なテーマになった。激動の時代に希望を語ったところで、何の意味があるのかという批判的な声もあるだろう。だが、個人の満足感やモチベーション、そして健康やパフォーマンスを維持するために、希望を持つことは不可欠だ。本稿では、現実的かつポジティブな未来を想像し、そこに至るまでの道筋を計画して、挫折を変曲点に変えて前進する方法を提示する。


 人類が繁栄するためには、希望を持つことが不可欠である。ビジネスの世界では、この点にほとんど目を向けられてこなかったが、コロナ禍によって避けては通れないものになった

 激動の時代に、希望の話をするのは考えが甘い。それだけでなく、期待外れに終わるのが見えている。そのように思う人もいるだろう。しかし、たとえそうであっても、人間が満足感、モチベーション、健康、パフォーマンスを維持するために、希望は欠かせない存在だ。

 見通しが暗いと感じながら希望を持ち続けることは、セルフマネジメントの中で最も難しく、最も重要なタスクの一つだといえる。なぜ難しいのかといえば、未来を知りえないことを受け入れながら、物事が現在よりもよくなることを信じるという、微妙なバランスが求められるからだ。なぜ重要なのかといえば、希望を失うと、現在の状況に耐えて、最終的には打ち勝つのだという意志も失われてしまうからである。

 コロナ禍が3年目に突入し、ウクライナで戦争が続き、気候災害が迫り来る証拠を毎日のように突きつけられ、グローバルサプライチェーンの混乱やインフレーションなど、さまざまな問題に直面するいま、希望を持ち続けることは、かつてないほど重要になっている。

 希望は、個人の生活だけでなく、仕事においても必要だ。幸いなことに、希望を持ち続けるためにできることはある。それを実行すれば、これまで立証されてきたように、希望がもたらす多くの恩恵を享受することができる。

 まず、希望の本質を理解することから始めよう。学者として、そしてギャラップのシニアサイエンティストとして、希望に関する幅広い研究を行うシェーン・ロペスは、希望を次のように定義している。「未来が現在よりもよくなるという信念と、それを実現する力が自分にはあるという信念が結び付いたもの」

 この楽観性と個人の行為主体性の組み合わせこそが、虚勢や希望的観測など似て非なるものと希望とを区別する。宝くじを買うのは希望的観測に基づく行為だが、事業計画を立て、銀行に融資を申し込むのは、希望の領域だ。

 希望は、人生のあらゆる段階で、計り知れない恩恵をもたらす。希望に満ちた学生は学業成績がよく、希望に満ちた大人は人生の満足度が高く、希望に満ちた高齢者は著しく死亡率が低い。筆者も、あらゆる規模の組織のリーダーをコーチングしてきた経験から、希望に満ちていることは高業績を上げる人々に不可欠な特性だと考えている。

 希望を持つよう自分を方向付けるために、まず意識的によりよい未来を想像することから始める。次に、その未来に向けた計画を立てる。そして、どれだけ努力したとしても、未来は未知のものであり、不可知なものであることを受け入れることによって、希望は強固なものになる。

 現在のように不確実性と悲嘆に満ちた時代かどうかにかかわらず、希望を生み出し、それを持ち続けるうえで、私たちにできることを以下で紹介する。