「自分」らしく生きるとはどういうことでしょう? 人には宿命があり、変えることができない先天的な環境などの要素があります。だけれども、それらの特性を理解して、後天的に人生の在り方・生き方・捉え方を変えることができるとしたら――。
IT・戦略会計・人材育成分野のコンサルタントとしてビジネスの第一線で活躍してきた著者の小池康仁氏は、41歳で阿闍梨(あじゃり、密教で修業した僧侶)への道に入り、現在は経営者・経営アドバイザリーとしても活動しながら、自身の体験をもとにした帝王学と陰陽五行論を全国で説いて回っています。
本書『「自分」の生き方――運命を変える東洋哲理2500年の教え』は、師と若きビジネスパーソンの会話形式というユニークな構成を取りながら、古来より口伝されてきた陰陽五行論の神髄を平易に伝えてくれます。
本連載では、ストレスの多い現代だからこそますます求められている東洋哲理のエッセンスを抜粋・再構成のうえ紹介します。

儒教が説く人間が備えるべき五つの徳

儒教が説く人間が備えるべき五つの徳

「マインドフルネス」「禅」とった言葉を聞いたことはあるでしょうか。今やビジネスの世界においても東洋思想や東洋哲理を活かす人が増えているそうです。それをビジネスだけでなく人生全般に活かしていけば、運命を切り開いていくことも可能である、というのが東洋哲理思想の神髄です。

 たとえば、古代中国で生まれた儒教では、人間が備えるべき五つの徳(「五徳」)を「仁義礼智信」という言葉で表しています。

「仁」は人を愛し守ること
「義」は筋を通し裏切らないこと
「礼」は礼節を守り正しい言葉使いをすること
「智」は知性を磨くこと
「信」は人を引きつける魅力を持つこと

 この「五徳」が仕事の本質を知る上での大切なキーワードです。

「仕事」の本質とはお客様のために働くこと

 たとえば、営業という仕事は、ノルマがあって、商品を売り込まなければならない、苦しくて大変な仕事だと考える人がいたとします。

 では、まったく異なる捉え方があるとしたらどうでしょう。

 仕事とは「事に仕える」と書きます。事は事象といったほうがわかりやすいかもしれません。あなたは自社の商品を売るという事象を担当している。その事象に真面目にお仕えすることが仕事であって、売るという行為自体は仕事ではありません。

 一般的な価値観からすると、商品を取引先に売らないと自分の成績は上がらないし、会社にお金が入ってこない、そればかりか自分の給料も支払われないことになる。しかし、売ることが仕事だという価値観の中にいると、本当に大切なことを見失ってしまうでしょう。

 あなたの仕事は商品を売ることではなく、目の前の取引先の方の心情に寄り添うことなのです。取引先の方が何を考え、何を求めているのか。何に悩み、苦しんでいるのか。相手の心情に寄り添うとは、相手の悩みや不安を理解し、相手の背景に思いを馳せることなのです。