写真:人手不足写真はイメージです Photo:PIXTA

5月8日のコロナ5類移行の前から働き手の流動化が加速している。「人手不足」の深刻度は企業によって濃淡が分かれ、企業の実力や好感度、将来性のバロメーターの様相も呈している。そうしたなか、資金力の乏しい中小企業はコロナ禍からの立ち上がりが遅れ、「人手不足」にも巻き込まれている。デジタル投資などの省力化投資を推進し、賃上げで採用を強化する企業がある一方、採用が難航し、営業機会を消失した企業もある。「人手不足」が企業の将来を左右するキーワードになっている現状を取材した。(東京商工リサーチ情報部 後藤賢治)

深刻な人手不足に直面する
タクシー・運送・宿泊業界

 東京商工リサーチ(TSR)が4月に実施した企業向けアンケートでは、企業の66.5%が「正社員不足」と回答した。このうち、大企業(資本金1億円以上)は73.2%、中小企業(同1億円未満)は65.5%で、大企業ほど人手不足が顕著だった。

「正社員不足」と回答した業種は、タクシーなど「道路旅客運送業」が90.9%、運送会社など「道路貨物運送業」が88.1%、「総合工事業」83.4%、「宿泊業」83.3%など、労働集約型の業種が際立って多い。

 一方、「正社員過剰」と回答した業種は、「印刷・同関連業」が26.0%、「広告業」が17.2%など、コロナ禍とはいえ不況業種で目立つ。業種による人員の過不足は、人材のミスマッチとして今の課題を浮かび上がらせている。

 また、「非正規社員不足」と回答した企業は38.7%と4割に満たなかった。正社員と比べ不足感が低いのは、いつでも募集できるとの思惑が背景にあるのだろう。

「非正規社員不足」の業種は、「飲食店」85.0%、「宿泊業」81.8%と、コロナ禍の行動制限が解除され、採用競争が過熱している業種が上位に並ぶ。

 だが、ここに先の思惑の落とし穴がある。今の「人手不足」は、ひと昔以前のように必要なときに容易に採用できる時代でない。シビアな現実を認識すべきだ。正社員・非正社員を問わず、採用コストが上がり、仕事を回すには人が必要な業種は多い。そうした業種ではAIや機械がどれほど優秀でも、人の足元にも及ばない仕事がある。人がいないと売り上げを伸ばせず、利益も出せない現実もある。