【歯の運命はここで決まる!】根管治療の「保険治療」と「自費治療」の大きな違い

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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日本の歯科治療には、保険治療と自費治療の2つの仕組みがあります。

この2つは、治療にかかる金額だけが違うと思っていませんか?

 

特に根管治療では、どちらの治療法を受けるかによって、歯を残せるのかの明暗がハッキリしています。

 

今回は、保険と自費の根管治療で、どこが違うのかについて解説していきます。

目次

1 保険の根管治療は成功率が低すぎる?

東京医科歯科大学の調査では、保険の根管治療の成功率は、30%~50%と報告されています。

 

つまり、保険の根管治療の7割近くは、治癒せずに失敗していることになります。

 

また、根管治療を専門としている専門医の場合(自費の根管治療)では、80%~90%の成功率になることがわかっています。※1

2 歯を残せるのは保険治療or自費治療

保険の根管治療では、歯を残すことができず抜歯を勧められることも少なくありません。

なぜなら保険治療では、次のような理由があって歯を残すことができないからです。

2-1:保険治療で歯を残せない本当の理由

保険治療は、国民が平等に治療を受けられるようにできた制度です。

虫歯や歯周病といった病気は、費用がかからず治療を受けられるようになっています。

 

ただ、保険治療は、病気を治すのに限界があります。

 

保険治療では、トータルでかかる治療時間や使用する材料、薬剤などが定められているからです。

 

保険外の薬剤を使えば改善できる可能性があっても、保険治療を希望する場合には、薬剤を使用することはできず、抜歯する選択しかなくなるのです。

 

保険治療には、厳格なルールがあって、限られた工程や材料の中で治療するしかありません。

 

その結果、治療が不完全なままで完了していて、数年後に治療した歯が痛み出したり炎症を起こしたりします。

 

日本の保険治療制度は、確かに優秀で全ての国民が平等に治療を受けることができます。

 

しかし、保険治療を繰り返すことは、歯の寿命を縮め、歯を失うのを早めていることになる恐れがあります。

3 ここに差が出る!「保険」と「自費」の根管治療

「保険の根管治療」と「自費の根管治療」では、次のような差があります。

3-1:診査・診断の仕方

保険の治療では、口全体のレントゲン写真や一部だけを映したレントゲンを撮影するのが一般的です。

 

保険治療で使用するレントゲンは、2次元的でしか確認することしかできず、撮った角度によっては根の先がぼやけてしまったり、根が映っていなかったりするケースがあります。

 

例えば、第一小臼歯と言われる前から4番目の歯は、根の先が2つに分かれていたり、1つになっていたりします。

 

これは、人によって爪の形や指の形が違うように、歯の形や根っこの本数も変わってきます。

 

正確な撮影ができていないと、本来なら2つの根の治療が必要な場合でも、1本の根しか治療していないので、痛みが続いたり再治療をしたりする原因になります。

 

一方、自費の根管治療では、事前にCT撮影をすることが多いです。

CTでは、歯や骨の状態を3次元的に見ることが可能です。

 

根管治療をする歯や周囲の骨の状態を立体的に確認することができ、根の本数はもちろん骨の状態がわかるので、歯の炎症がどこからきているのかを突き止めることができるようになります。

 

根の治療をする前に、根の本数や周辺の状態を精密に検査することは、根管治療の成功の第一歩になります。

3-2:使用する道具①ラバーダム

根管治療は、根管内をどれだけ、無菌状態にできるかで治療の成功が決まります。

 

保険の治療では、虫歯になっている部分を大まかに除去した後、そのまま根管治療を行っていきます。

 

その時、根管内に唾液が入ると細菌感染を起こす可能性が高く、いつまでも無菌状態にはなりません。

 

自費治療では、ラバーダムという天然ゴムでできたシートを口元に被せて、治療する歯だけを露出させた状態にします。

 

そうすることで、唾液が根管内に入らずに無菌状態で治療をすることができ、再治療を防ぐことができます。

3-3:使用する道具②ファイル

根管内の汚れを除去する時は、ファイルといってハリのような先端が尖っている器具を使っていきます。

 

保険治療で使用するファイルは、ステンレス製で、固く汚れを大量に掻き出せるのが特徴です。

 

しかし、ファイルが固すぎて、細い根管に届かずに汚れを取り残す原因になります。

 

また、使用したファイルは洗浄、滅菌してから使い回すため、どんどん切れ味が落ちていき除去効率も低くなります。

 

自費治療では、ニッケルチタン製のファイルを使用している歯科医院が多いです。

根管内は、迷路のように曲がりくねった複雑な形になっているケースも少なくありません。

 

ニッケルチタン製のファイルは、金属で固い性質がありながら弾力があり、しなるのが特徴で、複雑な迷路のような根管内に沿って、隅々まで清掃することが可能です。

 

このファイルの性質のおかげで、根管内に穴を空けるといった事故を防ぐことも可能になっています。

3-4:使用する道具③高性能マイクロスコープ

保険の根管治療では、裸眼やルーペ(拡大鏡)を使用していきます。

 

しかし、根管内は狭く暗いため、裸眼やルーペで中を確認するのは限界があり、歯科医師の腕の感覚で汚れを除去しています。

 

根管内がきれいになったと判断するのは、歯科医の感覚であり、確実性はありません。

 

そのため、根管内に汚れが残っていても気づかず、治療を完了することもあり、痛みや炎症が再発する可能性が高くなります。

 

自費の根管治療では、マイクロスコープを使用します。

マイクロスコープは、3倍~20倍まで視野を拡大することが可能です。

 

また、マイクロスコープは、光軸(照明軸)と観察視軸の距離が近くなるように設計されていて、暗くて狭い根管の中にも光が入り明るい状態で、汚れを直接見ながら除去することができます。

 

肉眼で見つけるのが難しい歯の亀裂もマイクロスコープでは、ハッキリとわかるので、痛みや炎症の原因を特定して、的確な治療ができるようになります。

3-5:使用する薬剤

根管内がきれいになった後は、神経の代わりになる薬を根の先に詰めていくのが一般的です。

 

保険治療では、ガッタパーチャという細いゴムを根の先に詰めていきます。

ガッタパーチャは、根の先のスペースを埋めるための物で、特に効果はありません。

 

ガッタパーチャは、生体適合性(人の体に馴染まない性質)がなく、根からはみ出してしまうと体から異物と判断されて炎症を引き起こす原因になります。

 

一方で自費治療は、根管内をきれいにした後は、専用の薬剤で根の先を埋めていきます。

 

使用する薬剤は、根の状態に適した材料を使うため、歯科医院によって薬剤の種類が違います。

 

特に、使用される薬剤は、MTAセメントです。

 

MTAセメントは、薄くなった歯や根の一部に穴が空いたケースで使用することが多い薬剤で、強い殺菌効果があり、菌の繁殖を防ぐことができます。

3-6:治療時間・治療回数

保険の根管治療時間は1回、約15分~30分です。

通院回数は、5回~6回必要になります。

 

せっかく歯科医院にいったのだから、通院回数を少なくして時間をかけて治療してほしいですよね。

 

しかし、保険治療は、1回の治療で勧められる工程が決められています。

1回で全ての工程を終わらせることができませんので通院回数も多くなります。

 

自費治療の治療時間は1回、60分~90分が基本です。

通院回数は、1回~3回で終わることがほとんどです。

 

1回の治療時間を長くすることで、通院回数を少なくして患者さんの負担を減らすことができます。

 

また、保険治療のように長期間に渡って根管治療をするのは、根管内に細菌を増殖させて再治療になる可能性を高めてしまう恐れがあります。

 

短期間で集中して治療をすることは、歯の負担を減らすことになるのです。

3-7:治療費

保険の根管治療費は、歯1本あたり数千円が相場です。

自費治療の場合は、根管の本数によって費用に差があります。

 

また、他院からの再治療をするケースでも、治療費がかかります。

3-8:根管治療後の被せ物

根管治療後は、土台と被せ物を製作していきます。

保険の土台や被せ物は、銀の金属になります。

 

土台の金属は、非常に硬く歯に強い力がかかった時には、根っこにヒビが入ったり割れたりすることがあります。

 

また、保険の被せ物は劣化が早く、隙間ができたり錆びたりしやすく、被せ物の隙間から細菌が侵入して、再治療になる可能性が高いです。

 

自費の場合には、ゴールドの金属グラスファイバーといってガラスと特殊な樹脂を使った種類の土台があります。

 

歯との馴染みもよくて隙間がでにくいのが特徴で、根っこが割れる心配もほとんどありません。

 

土台の上に付ける被せ物は、透明感の強いセラミックお茶碗のような艶のでるジルコニアなどがあり、見た目の美しさだけでなく、強度や適合性も十分に備えている素材を使用することが可能です。

3-9:数年後の状態

治療が完了すればゴールでは、ありません。

治療後の歯を長持ちさせることが大切で、実はゴールはありません。

 

保険治療は、使用する道具や材料が限られていて、根管内を完全にきれいにすることは難しく、再発するリスクが高いです。

 

そのため、治療後、数年経ってから歯に痛みがでたり、膿が出たりといった症状が出ることがあります。

 

そうなると、また根管治療が必要になります。

ただ、根管治療は、ずっとできる治療ではありません。

 

根管内の汚れを除去していく時には、歯の内側の歯質も一緒に削っていて、どんどん薄くなっていきます。

 

歯質が薄すぎると、噛んだ時の衝撃に耐えられずに歯にヒビが入ったり割れたりして、最悪の場合には、抜歯になる可能性もあります。

 

保険治療を繰り返していると、歯が弱っていき、寿命が短くなるのです。

自費治療では、治療の全ての工程にこだわって治療を進めて行きます。

その結果、根管治療の高い成功率再治療になる確率の低さに表れています。

4 歯を残すのを諦めないのが自費の根管治療

保険治療と自費治療の違いは、金額だけではありません。

保険治療は言わば、その場しのぎの治療法です。

 

その名の通り、その時だけ痛みや炎症から解放されて、数年後には同じ治療の繰り返しになる可能性が高いです。

 

逆に自費治療は、その瞬間だけでなく数年後、何十年後の先を考えた治療です。

 

抜歯するしかないと言われた歯でも、自費の根管治療では残せる可能性があります。

担当医としっかりと話しあって、後悔のない治療の選択をしましょう。

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