うまく自制できないのは「意思が弱い」からではない、研究結果

望ましくない行動や衝動的行動を制御する能力の欠如は、意志の問題ではなく、認識や信念の問題かもしれない(Getty Images)

Journal of Experimental Social Psychology誌に掲載された最新研究は、セルフコントロール(自制)に関する一般的認識および、それが人々の自制方法を採用する意思に与える影響を調べた。

「同僚のヨハンナ・ピーツ博士は、自制方法をとろうとすることを拒否する友人との会話の後、このプロジェクトのアイデアを思いつきました。その友人は、自制のためにそんな『トリック』に頼る必要はないはずだと言ったそうです」と本論文の主著者でカナダ・オタワのカールトン大学心理学科のアナマリー・ジェナーラはいう。

論文では、自制方法を「目標に向けた選択がより容易に、より起こりやすくなるよう自分の環境をデザインするために人々がとる行動と思考」と定義している。

例えば、減量をしている人がクッキーを食べたくなってしまった場合、そのクッキーを目の届かないところに置いたり、減量の目標や加工食品や糖分のデメリットを思い出したりすることができる。

近年、生産性や集中力のハックといった名目で「ドーパミンデトックス」「タスクの順序変更と取捨選択」「ポモドールテクニック」などの方法が人気だ。

これらの戦略は広く普及しているが、批判も存在しており、表層的なトリックであり、強い意思力の粗悪な代用品だと多くの人が切り捨てている。

自制に対する人々の信念と、それが行動に与える影響をより深く理解するために、研究チームは5つの実験を行った。その実験で被験者たちは、自制力が強い架空の人物を複数見せられ、それぞれの人物が誘惑に耐えるために、意志力と自制方法のどちらに頼りそうかを尋ねられた。

最初の実験では、自制力が強いと認識された架空の人物は、自制方法よりも意志の力を使う可能性が高いことが示された。さらにその後の実験では、一貫して自制方法をとったとされた架空の人物は、意志の力を使用した架空の人物よりも低い自制に対する評価を得た。

注目すべきなのは、この認識のギャップが、自制方法の採用の有効性を強く信じている被験者には見られなかったことだ。

意志力よりも自制方法の重要性を強調する記事を読んだ際、方法をとった者と意志の力に頼った者との差は大きく減少した。さらに、自制方法の有効性を頑なに信じている被験者は、自身でもそれらの方法をとろうと強く思ったことを示した。
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翻訳=高橋信夫

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