「日本が蒸し暑いのは風が海を渡ってくるから」の意外な落とし穴…それでもカギを握るのは「太平洋高気圧」という納得の理由
海から陸へ向かって吹く「夏の季節風」
夏は冬とは逆に、大陸の地上気圧は低くなり、海洋上で高くなります(図「夏の地上天気図」)。これによって海洋から大陸に向かって夏の季節風(モンスーン)が吹きます。
夏の地上天気図
モンスーンという言葉は、季節風と同義にも使われますが、南アジアに吹く夏の季節風とそれによってもたらされる雨期をモンスーンとよぶこともあります。海からの湿った風が大陸へ吹きこむため、モンスーンが吹き始めると雨が増えるのです。モンスーンによる雨は、インドやタイなど南アジアの農業にとって非常に大切です。
同時に、東アジアでは太平洋高気圧が発達し始め、その西側の縁を回る南からの気流が入るようになります。これは東アジアにおける夏の季節風です。吹き始めた季節風は北側の気団とぶつかって梅雨前線をつくりますが,やがて前線は消滅して盛夏が訪れます。
日本の夏が「蒸し暑い」理由
前回の記事で解説したように、太平洋高気圧が日本の南海上まで張り出した部分を小笠原高気圧とよびます。この高気圧から大陸へ向けて吹く夏の季節風によって、海から湿った風が入り、蒸し暑くなるのが多くの場合の日本の夏です。
太平洋高気圧は亜熱帯高気圧ですから、本来は高温でかつ乾燥した気候をもたらしますが、日本列島が太平洋高気圧の中心ではなく縁辺に位置するため、高気圧の下降気流がそのまま入るのではなく、海上を吹き渡ってきた風が湿った空気に変化して日本に入ります。
高気圧の下降気流が海上を吹き渡り、湿った空気に変化した風となって、日本へ吹きこんでくる photo by gettyimages
日本の夏が特に猛暑となる場合、太平洋高気圧の中心が日本列島のほぼ真上にもできて、乾燥した高温になる場合もまれにあります。亜熱帯高圧帯が日本にかかる場合もあるということになり、日本の季節変動の大きさを感じさせます。