生殖器のもとになる細胞が動きだす
精子や卵子のおおもとになるのは、「原始生殖細胞」である。原始生殖細胞は、卵黄嚢(将来、胃腸管などに変わる)という袋の壁に出現してくる。
受精後4週目ごろになると、原始生殖細胞は原始腸管をからだにつなぎ止めている腸間膜という膜の間を通って、からだの背中側(後体壁)へ向けて大挙して移動し、生殖堤という集塊をつくるようになる。もしこの時期の胚子を解剖していけば、顕微鏡的ではあるが、生殖堤を高まりとして認めることができる。これが将来、精巣や卵巣のいずれか一方の組織になっていく。
原始生殖細胞の移動。移動先の生殖堤は原始生殖細胞が集まって膨らんでくる
なんと、はじめは男女、両方の器官を用意する!
原始生殖細胞の集まりは、まだ精巣、卵巣、いずれにも分化していないので、この段階では、未分化性殖腺、あるいは未分化性腺とよんでいる。
受精後5週目ごろになると、未分化性腺と隣り合うように泌尿器官(腎臓)の前段階にあたる中腎もできてくる。そのため、中腎から尿を運びだす中腎管(ウオルフ管)、それと未分化性腺の導管であるミュラー管(中腎傍管)もできてきて、その末端は将来の膀胱の下端部になる尿生殖洞につながっている。
この時、ミュラー管は右と左のものが正中部で合一して、尿生殖洞に開口するようになる。
5週目ごろの胚子で、生殖腺と関連する器官
- 未分化性線:将来の精巣、もしくは卵巣
- 中腎:腎臓の前段階のもので、いずれ退化・消失
- 中腎管(ウオルフ管):中腎の導管。男性では、将来の精管
- ミュラー管(中腎傍管):未分化性腺の導管。女性では、将来の卵管
このようして、まず生殖器ならびに泌尿器の2系統の装置とそれらの導管が確保されるというわけだ。
往々にして、生殖器は、泌尿器とともに「泌尿・生殖器系」とひとまとめにされることも多いが、こうした器官の出自を見ても、お互いに交錯する部分が多いため、その妥当性にも多いにうなづける。
そして、見逃せないのは、この段階の胚子では、〈精巣ー精管〉の男性、〈卵巣ー卵管〉の女性、両様の性に備えて、どちらの性にも転がり込んでいける素地を装備している点である。