相続対策は基本的に不動産対策であり、相続トラブルの多くが不動産に起因するものです。本連載では、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースをご紹介します。

相続対策の順番を見極めるのは難しいが・・・

相続対策とは不動産対策のため、相談相手を間違ってはいけないこと、税務知識に偏らない対策をすることが重要です。しかし実際には、不動産の専門家が、どういう情報をもとにどういう判断をして、どういう順番で対策を行っていくかを具体的にイメージしていくのは少々難しいかもしれません。

 

本連載では、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースをご紹介します。その中では、相談者の家族状況や財産割合、もともと抱えている悩みなどをヒアリングする「始まり」から、問題点を洗い出し、適切な解決策を企図、相談者に提案した後、納得してもらって実行、そして結果どうなったかという「終わり」まで、回数を重ねながらご紹介します。

所有地の大半が「貸地」になっている!?

【ケース1】Aさん・90歳/子4人(長男のみ異母兄)

神奈川県にお住まいのAさんは、当時90歳で貸地を多く所有している大地主でした。筆者は初めからAさんと接点があったというわけではなく、Aさんの土地を利用している借地人Bさんの土地管理をしていたことがきっかけで、地主であるAさんと接点を持つようになったのです。

 

貸地の管理をすることになった旨をAさんにお伝えすると「せっかくならその土地の地代の管理も行ってほしい」と地主としての管理業務を依頼されるようになりました。借地人側と地主側の両方の管理も同時に行えば、地代の支払いを受け取り、固定資産税を納めるといった流れがスムーズになります。Aさんはそれまでは土地を自己管理していたこともあり、今回の訪問が第三者に管理を依頼する良いきっかけとなったようでした。

 

土地管理の報告などの話を重ねるうちに、Aさんが所有している資産について相談を受けるようになっていきます。すると、Bさんに貸している土地はほんの一部で、Aさんが1000坪の自宅敷地と20筆、2000坪もの膨大な土地を所有していて、その多くが貸地であるということがわかりました。

 

土地はすべて自身で管理していたようですが、貸地の地代は直接借地人から現金を手渡しで受け取っているとのこと。管理している土地が多いこともあって、中には地代を滞納している借地人がいるにもかかわらず、督促ができていない貸地や、昭和初期から地代が全く更新されていない貸地もあり、管理が行き届いているとは言い難い状況でした。

 

既に90歳のAさんは、それらの対処に悩みながらも、具体策を講じることができないままにいたのです。そこで弊社が地代の管理、滞納している借地人の対応、また、トラブル発生時の解決を担当し、膨大な土地の管理を実施。月に一度はAさんを訪ねて土地管理の諸々の進捗報告を行うことになりました。

 

当時、既に90歳のAさんとのコミュニケーションは、もっぱら対面での会話です。Aさん宅の縁側が、風情があって居心地がよいこともあり、仕事とは関係のない他愛もない話をすることもしばしばでした。そんなAさんだったこともあり、相続の相談はごく自然な流れで始まりました。

 

Aさんは、奥さんを既に2人亡くしているため、推定される相続人は、前妻の子1人、後妻の子3人です。相続対策として信託銀行で遺言書を作ってあり、法定相続分で遺産分割してもらおうと決めているとのことでした。遺産分割の詳細は決められていませんでしたし、4人の子どもたちには親であるAさんの資産の全容や、遺言書の内容について明かしていないとのことでした。Aさん自身は、相続で自分の子らが揉めることはないだろうという確信を持っていたからです。

 

実はAさんはもともと不動産関係の仕事をしていたこともあり、数字に強く、多くの土地を含めて15億円を超える資産を持つ中で、子に課される予定の3億円あまりの相続税を自分で算出し、その納税資金についても、現預金でしっかり確保していたのです。その準備が争いを防ぐだろうという一つの根拠になっていたのでしょう。

 

しかし、Aさんの資産状況や相続人のことを考えれば、このまま相続が発生すると、高い確率で問題が起こってしまうことは明らかでした。

 

次回は、その問題点について見ていきます。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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