サイエンス

子牛は1頭で育てるよりもペアで育てた方が認知能力が高くなるとの研究結果


管理がしやすいなどの面から、産まれたばかりの乳牛を1頭ずつ他の牛とは離して飼育されることがあるそうです。牛が孤立することによる牛自身への影響の度合いについて、ブリティッシュコロンビア大学が調査しました。

Social Housing Improves Dairy Calves' Performance in Two Cognitive Tests | PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0090205

ラットを使った先行研究では、複数の群れの中で育てられた個体よりも、一匹だけで育てられた固体の方が、認知発達テストでの成績が悪かったことが分かっていました。


ブリティッシュコロンビア大学の動物福祉研究者であるシャーロット・ガイヤード氏は、ラットのように牛もまた、生後早い時期に複数頭で育てることで認知発達の面で恩恵を受けるのではないかと考えて実験を行います。

ガイヤード氏は生後4週目~8週目の子牛を用意していくつかのテストを実施しました。1つ目のテストでは、迷路の中に1頭または2頭の子牛を置き、片方の道の先には白い箱と満杯の牛乳瓶を、もう片方には黒い箱と空っぽの牛乳瓶を設置。子牛に迷路を周回させて、白い箱の方を選ぶようになるまでどれくらいかかったかが確かめられました。その後、白と黒を逆転させて同じようにテストが進められました。


最初のうちは1頭だけで迷路に入れられた子牛と2頭で迷路に入れられた子牛の両方が順調に学習していたのですが、白と黒を逆転させた途端に、1頭で入っていた子牛の方が学習パフォーマンスが悪くなってしまったことが確認されたそうです。

以下のグラフは縦軸が牛乳瓶が入っている方の箱を正しく選択できた割合を示しており、横軸はテストの実施回数を示しています。なお、上のグラフが白と黒の箱を逆転する前のパフォーマンスを示したもので、下のグラフが逆転後のもので、グラフ中の濃い黒線が1頭で入れられた子牛、薄い黒線が2頭で入れらた子牛のパフォーマンスを表しています。


2つ目のテストでは、囲いの中に見慣れない赤い箱を設置し、子牛がその箱に至近距離で頭を近づけた時間と、匂いを嗅ぐなど箱に興味を示していた時間が測定されました。このテストでは、箱に慣れるまでの時間は2頭の子牛の方が短かったことが分かっています。

ガイヤード氏らは1つ目の実験から「人生の早い段階で社会的孤立を経験したため、逆転学習などにうまく対応できず、行動の柔軟性が欠如したと考えられます」と指摘。2つ目の実験については「不安の増加など、心理状態が影響した可能性があります」と考察しています。


これら2つの実験からガイヤード氏らは「1頭ずつの飼育は子牛の認知能力に障害をもたらすことが示唆されました。今後の実験では明らかな学習障害に対する心理状態を調べる必要があり、たとえば試験の前に動物に抗不安薬を投与するなどすることで影響を調べることができると考えます。乳牛はロボット搾乳装置や自動給餌器などの新技術と常に触れ合っていますが、複数で飼育した柔軟性の高い個体であれば、このような変化に素早く適応できるでしょう」と結論づけました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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