金属などを扱う業者として、スクラップ業やヤード業といったものがある。しかし、この2つの違いについて問われたとしても、なかなか答えられないのではないだろうか。単純な知的好奇心として気になる人もいるかもしれないが、これから営業をおこなおうと思っている人にとって、違いがわからないと困るところである。
しかし、これらの違いについては、なかなかわかりにくいものであり、調べてみても明確な答えにたどり着くことが難しいだろう。少なくとも、”スクラップ業、ヤード業、違い”といったありきたりな検索では、答えにたどり着くことは不可能だと考えられる。
そこで、スクラップ業とヤード業の特徴を明らかにした上で、違いを明確化していきたい。また、これらの業をおこなう上で必要となる許可申請などについても、合わせて確認をおこなっていこう。
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スクラップ業とはなにか
まずスクラップと聞いて思い浮かべるのは、新聞や雑誌の切り抜きではないだろうか。スクラップ帳というのも馴染みがあるように思われる。けれど、今回のスクラップという意味合いは、あくまでスクラップ業という職種に関連するものである。
その場合のスクラップを簡単に説明すると、金属の廃棄物、廃金属のことをいう。このスクラップの語源の起源は古く、原形の意味としては”切ること”であり、次第にさまざまな使われ方に進化していった。また、”断片”や”欠片”という意味でも使われる。
スクラップとは
上記で説明したように金属の廃棄物などがスクラップであるが、そのようなものを扱う業者をスクラップ業者(寄せ屋)という。そして鉄鋼メーカーで発生する鉄スクラップを自家発生スクラップというのに対して、市中に出回っているスクラップのことを市中スクラップと呼んでいる。
この市中スクラップをさらに2つに分けることができる。それが以下の2つである。
- 1.工場発生スクラップ:機械や車などの製造工場で発生したもの
- 2.老廃スクラップ:廃車や解体した建物、家庭の不用品など
スクラップの金属の種類
市中スクラップには、鉄スクラップ、非鉄金属スクラップ(銅線、アルミ缶など)、雑品スクラップ(金属が含まれる基盤、家電製品など)があり多岐にわたる。
鉄スクラップ
鉄スクラップは回収後加工され、再び製鉄原料としてリサイクルされる。平成21年度では、国内粗鋼生産量9,649万トンの30%以上がスクラップを原料としている。また鉄スクラップは、日本鉄源協会によってグレードが定められている。
H2
国内で最も流通量が多いとされる建築物から排出される鉄筋。
ギロチン材
H鋼やレール、鉄筋、軽量鉄骨、足場材、ドラム缶などの切断する必要があるもの。
級外
トタン、シャッター、フェンス、一斗缶など。
新断
自動車や機械などの加工の際にできた残りの部分。
ダライ粉
鉄製品の製造や加工で発生する削りくず。
ガス切り材
厚みがあるガス溶断が必要なもの。
非鉄金属スクラップとは
非鉄金属スクラップも、加工され再利用されている。非鉄金属スクラップに該当するのは、以下のようなものである。
銅
機械や家電の電線や配管などに多く使われている。
ステンレス
クロムやニッケルを含ませた合金鋼で、SUS304が代表的なもの。
真鍮
銅と亜鉛の合金で、水道の部品に使われる。
アルミ
アルミ缶、サッシなどのアルミ製品。
砲金
銅とすずの合金で、水道メーターによく使われる。
雑品スクラップとは
雑品スクラップとは家電やOA機器、工業機械などのスクラップのことであり、銅、真鍮、アルミニウム、ステンレスなどさまざまな物質が含まれている。このことから雑品スクラップは廃棄物だけではなく、価値のある有価物としても扱われている。
しかし、金属の中には有害であるものも少なくなく、カドミウムやクロムなどは公害事案の原因物質になる。2017年6月に改正された廃棄物処理法では、雑品スクラップに対する規制があらたに加わっている。
2018年4月からの改正法施行では、野放し状態であった雑品スクラップを保管、処分している国内の業者に対する規制が始まり、都道府県への届出、保管場所の囲いや掲示板設置、汚水の浸透防止措置、保管高さの制限などが義務づけられることになったのである。また都道府県による立入検査や改善命令などの権限も与えられている。
実際、雑品スクラップを有価物か廃棄物の判断は難しく、輸出する港で火災の原因となったりする事案の発生などで、輸入国の審査にパスできないこともあったりする。
スクラップの加工
集められたさまざまなスクラップは国内外のメーカーに販売されることになるため、スクラップを加工する必要がある。加工方法には下記のようなものがある。
プレス加工(圧縮)
空き缶、トタン、アルミサッシなどのスクラップを型に入れて圧縮し、箱型にまとめる。
シャーリング加工(切断)
建築廃材やパイプなどのような長さのあるものは、一定の長さに切断する。一般的には、圧縮切断機で加工する。
シュレッダー加工(破砕)
プラスチックやゴムなど金属以外のものが含まれる雑品スクラップには、シュレッダー装置で細かく砕いて分類する。
手作業
雑品スクラップなどは、磁石などを使用しながら手作業で分類することもある。
スクラップ業を営むには
上記のような過程で鉄スクラップ、非鉄金属スクラップ、雑品スクラップなどを扱うのがスクラップ業者である。買取をおこない集められたスクラップは、圧縮、切断、破砕などさまざまな工程を経てリサイクルされる。
買取価格は其々相場制になっていて、そのときの価格によって違いが出てくる。自社でスクラップのリサイクルをおこなっている業者は、解体費用を安く抑えることが可能である。
スクラップを集めることは廃品回収でもあるため、古物商許可証が必要となってくると思われるが、下記の15都道府県においては、金属くず商許可証(金属くずは、”本来の用途としては使用できない金属類”のことで、鉄くずや銅線などが含まれる。)を各都道府県の警察署で取得する必要がある。
北海道、茨城県、福井県、静岡県、長野県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県
ヤード業とはなにか
ヤードとは、自動車の解体作業所、廃車置き場、という意味を持つ。日本では盗難車両の解体、輸出などといった犯罪の温床となっている施設を指す。国内で盗難された車両は、このヤードで解体された後にスクラップとして海外へ輸出される。
この違法ヤードは2000年代から始まり、税関の監視強化によるものである。つまり輸出する自動車のチェックが厳しくなったためだと思われる。よって人目につきにくい山奥などにヤードを建設することが少なくないのである。外見は数mの高さの鉄板などで覆われていて、怪しい雰囲気を醸し出している。
ヤード業者とは
このようなヤードを持つヤード業者の中には、許可を得て事業をしている業者もあり、すべてのヤード業者が違法な事業をしているわけではない。しかし、外国人が頻繁に出入りしているような所はほとんど違法であり注意が必要である。
また家庭などから出される廃家電や不用品を集めるトラックが、街中を走っているのをよく見かける。これは無許可の不用品回収業者が多く、回収されたほとんどはヤード業者に運ばれ、違法に海外へ輸出される。
ヤード業者は、海外への輸出が目的で廃家電の破壊、解体、保管、コンテナ詰めなどを周囲が鉄壁で覆われた作業場でおこなう。そして、環境対策をせず家電を破壊し、フロンガスなど有害物質を環境中に放出するという違法行為をする場合が多い。
雑品スクラップは海外では高値で取引されるので、ヤード業者に渡ったものはバラ積み船で海外に輸出するという違法ルートの取引も増えている。
盗難された車の行末
ヤードに運ばれた盗難車は、出荷まで一日で解体される。盗難に気づいた頃にはすでに海外へ輸出されているということである。もしも解体中に見つけたとしても、パーツも内装も取り外されているので、使える状態で戻ることはほぼゼロである。
ヤード業者が盗難車であることを知らなかったと突っぱねれば、立証するのは難しいとされる。盗難を防ぐには、自分で防犯対策を強化するしかないのである。
必要となる許可や申請
スクラップ業やヤード業をおこなうにあたっては、必要となる許可や申請がある。必要となるのは、以下のものがある。
一般廃棄物収集運搬業の許可
一般家庭の廃棄物は、一般廃棄物といって、地方自治体が処理するように定められている。自治体から委託を受けた一般廃棄物収集運搬の許可を受けた事業者がおこなうようになっている。
しかし委託する必要がある場合には、市町村以外の業者に委託することができる。基準は各市町村によって異なり、基準を満たした業者に対して下記の2つの許可が与えられる。
- 1.収集、運搬をおこなう場合:一般廃棄物収集運搬業の許可
- 2.処分をおこなう場合:一般廃棄物処分の許可
産業廃棄物収集運搬業許可の取得要件
なお、産業廃棄物収集運搬業許可の取得は誰でもできるものではなく、一定の条件がある。条件としては以下の通りだ。
- 1.受講が終了していること
- 2.経理的基礎があること
- (1)利益の計上にもんだいがないか
- (2)責務超過の状態ではないか
- (3)納税が確実におこなわれているか
なお、上記については各自治体によって異なるようだ。詳細については、各自治体へ確認すると良い。
- 3.事業計画の内容が適法であること
- 4.運搬施設の体制が整っていること
- 5.欠格事由にあたらないこと
- (1)成年被後継人、被保佐人、破産者で免責を受けていない者
- (2)禁固刑を受けてから5年を経過していない者
- (3)廃棄物処理法など産業廃棄物に関わる法律に違反し、罰金以上の刑罰を科せられてから5年を経過していない者
古物商許可
古物商許可は利益目的で古物を販売するときに必要となり、事業所の所在する都道府県の警察署で取得できる。また金属を含む中古品の買取売却する場合も必要となる。ただ、買い取った中古品を解体し、金属を部品として販売するのなら古物商許可は必要なく、金属くず商の許可を申請しなければならない。
金属くず商に関しては、上記のスクラップ業の所で説明している。
使用済自動車の引取業また第一種フロン類回収業の登録
ヤード業やスクラップ業者が使用済み自動車を引き取る際には、都知事県知事または保健所設置市長による引取業をおこなう事業所の登録を受けなければならない。
また使用済自動車からフロン回収をおこなう場合は、第一種フロン類回収業の登録もおこなう必要がある。
自動車解体業の許可
2005年1月に施工された自動車リサイクル法により、新規または使用済み自動車の解体をおこなうヤード業者は、自動車解体業の許可が必要である。また中古自動車の販売だけでなく破砕もおこなう場合は、自動車破砕業の許可も必要となる。
なお、スクラップ事業をおこなう上で自動車破砕業の許可は必須である。
スクラップ業とヤード業の違いとは
スクラップ業とは?、ヤード業とは?、と調べていくと、ヤード業にはマイナスイメージが強く、あまり良い印象は持てないかもしれない。しかし、ほとんどのヤードは適法な活動をしており、犯罪の拠点になっているヤードはごく一部とされる。
ヤードを持つには届け出が必要であり、"自動車部品の保管などの用に共する施設"と限定されている。
このようにヤード業はスクラップ業と同じような事業を展開しているが、鉄スクラップなどの置き場を持っているという大きな違いがある。高い鉄の板で囲まれているために違法な行為がおこわれるとみなされるわけであり、現在は、規制も強化され立入検査も頻繁におこなわれている。
まとめ
スクラップ業とヤード業の違いとしては、ヤード業には、自動車解体業、自動車発災業、といった 特有の届出が必要であること。自動車部品の保管などに用する施設が必要であることが大きな点としてあげられる。
これから、スクラップ業もしくはヤード業をおこなおうとしている場合には、それぞれの特徴も合わせて確認をおこった上で、自分はどちらに該当するか検討すると良いかもしれない。
この記事を監修した専門家