第66回アトリエ訪問   画家 竹廣國敬

1933年 三次市向江田町出生
1950年 柿手春三氏師事
1995年 現代洋画精鋭選抜展 銅賞
1995年 絵のまち尾道四季展入選(1995~)同秀作賞(1995・2007・2008)
2000年 新院展準大賞
2005年 欧美スペイン美術賞展特別表現技術賞
2006年 竹廣國敬展 三次市三良坂平和美術館
2007年 国展入選(2007・2008・2011・2012)
ガレリア・レイノ大賞展受賞(2007・2008)同入選(2011)
2009年 欧美アメリカ美術賞展入選
現在 国画会所属、絵画教室講師、佐伯区美術協会会長


■絵画のために選ばれたものたち

竹廣先生のアトリエに伺ったのは去年の秋。工大近く、スズメの声がどこからか聞こえてくる澄んだ空の日だった。一緒に行った原さんにとって先生宅は8年ぶりとのこと。先生にはインターネット美術館のはじめの頃から絵を寄せていただいているのだ。アトリエには、バイオリン、人形、トランペット、海のランプ、昔の田舎の家にあった時計など数々のモチーフが並び、それぞれがまとう空気が部屋をまろやかにしている。これらは絵画教室に持って行くものなのだそう。

■世の変遷と研鑽

小さい頃から絵が好きであった。
昭和の初期の美術教育は手本を見て描くのが中心で、第二次世界大戦前であったため、その手本には兵隊さんや鉄砲などの図も入っていたとのこと。お話だけでなく実際にお持ちの教科書を見せていただき、世の変遷を感じた。これらを描いていたのは帝展などで活躍中の画家もおられたそうだ。
長じて日彰館高時代、授業や列車待ちの時間によく風景を描きに出かけられて楽しかった。塩町高(高2編入)では、はじめて師事した柿手春三先生に、自ら選んだ対象のデッサンを毎日持っていき、よいと認められたときにサインをしていただくのが非常に嬉しかったのが思い出といわれた。このころ、様々な画風をためすように、クレヨンで印象派の絵(ゴッホ)を模写するなど模索している。
1953年 15F号の油彩が県美展初入選。柿手先生に「この絵は人に渡さず大事に持っていなさい。」と言われた。自分を引き出し、羅針盤となる絵のあることを心に刻んだ瞬間であった。

■繰り返す美との出会い

国展出品作は現在、半具象の人物を中心に描いている。
人の命を宿している妊婦も厳かな神々しさを感じ、よい対象だ。感情も描こうとし、そのため墨、アクリル、油絵などスタイルを変え、よごしを入れペンティングナイフの勢いをつけ、その度に自らの手の中で生まれる思いがけない出会いを大切にした。
基本は色をきれいに感じさせること。デッサンの修練が色に結実するのだと言われた。

■変わらぬ情熱

佐伯区美術協会会長を6年。長く続いている協会は24回の展覧会を重ね、2012年11月の佐伯区アートフェスター街角ギャラリーや尾道など地域への出品で貢献されている。
これからも絵の表現技術を磨きつづけ、その人らしさの出る絵、小品でも良い絵を描いて発表し続けたいと思うと言われた。
アトリエに訪問したのは9月。その折にも10月、11月にそれぞれ展覧会が控え、2012年を終えた時には、年間8回もの展覧会に出品されることとなった。氏の絵画への情熱は幼い頃から人生を並走している。新しいスタイルを生み出しつづけていても精神は不変なのだ。

<文/泉尾祥子 ・ 写真/原敏昭>

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取材中の風景