安全保障理事会とは? 役割や拒否権、問題点をわかりやすく解説【親子で学ぶ現代社会】

ニュースで耳にすることがある「安全保障理事会」ですが、どのような機関なのか説明できない人もいるのではないでしょうか? そこで、役割や常任理事国の拒否権などについて、わかりやすく紹介します。近年、問題視されている点についても把握しましょう。

安全保障理事会とは?

「安全保障理事会(あんぜんほしょうりじかい)」は、どのような役割を持つ機関なのでしょうか?  役割を理解することで、世界各国にとって重要な機関であることがわかるでしょう。

国際連合旗。1945年の設立時は、ソ連の構成国であった一部の国を含めて、51カ国だった。10月24日の発足の日は、国連デーとして各国で記念されている。

国際連合の機関の一つ

安全保障理事会は、アメリカのニューヨークに本部があり、2022(令和4)年現在で193カ国が加盟している「国際連合」の機関の一つです。

国際連合は1945(昭和20)年に設立され、安全保障理事会だけでなく、総会・経済社会理事会・国際司法裁判所など六つの機関を持っています。国連教育科学文化機関(ユネスコ)や世界保健機関(WHO)など、多くの専門機関も置かれています。

国際連合の大きな役割は、戦争や紛争を防いで世界の平和と安全を守ることです。経済や人権などの分野においては、国際協力を促進する役割も果たしています。

参考:国連とは|外務省

国際平和と安全の維持が役割

安全保障理事会の役割は、国際平和と安全を維持することです。具体的な活動は多岐(たき)にわたり、国連平和維持活動・多国籍軍の承認・テロなどに関する措置の促進・制裁措置の決定などがあります。

例えば、紛争が起きたときに行う活動は、平和的手段での解決の要請や、侵略行為に対して平和的回復の勧告などです。

安全保障理事会の会合は、傍聴可能な「公式会合」と非公開の「非公式協議」に分かれ、必要に応じて開かれます。公式会合は本部で行われ、席順は中央の議長から左回りにアルファベット順です。

参考:国連安全保障理事会(安保理)とは|外務省

「常任理事国」と「非常任理事国」で構成

安全保障理事会は、5カ国の「常任理事国」と10カ国の「非常任理事国」で構成されています。常任理事国は、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアです。

非常任理事国は、アフリカ(3カ国)、アジア・太平洋(2カ国)、東欧(1カ国)、ラテンアメリカとカリブ(2カ国)・西欧とその他(2カ国)と各地域に配分されています。選挙により選出され、任期は2年です。任期を連続して務めることはできません。

2023(令和5)年1月1日からの2年間は、日本が非常任理事国を務めることが決まっています。日本が選出されたのは12回目で、国連加盟国中で最多です。

国際連合本部ビル(アメリカ・ニューヨーク州)。ニューヨーク市マンハッタン島にある。安保理常任理事国の拒否権をどの範囲で認めるかは、1945年2月のヤルタ会談で、大国の拒否権は実質事項のみ、との妥協案で成立した。

参考:日本の国連安保理非常任理事国への選出について(外務大臣談話)|外務省

安全保障理事会の「拒否権」とは?

安全保障理事会を理解するうえで、欠かせないのが「拒否権」です。拒否権とは、具体的にどのような権利なのか、メリットとデメリットを合わせて紹介します。

常任理事国だけが持つ権限

拒否権は、常任理事国である5カ国のみが持っている権限のことです。簡単にいうと「反対投票」のことで、議案を否決する力があります。

安全保障理事会の議決は、15カ国のうち9カ国以上が賛成した場合に可決されます。しかし、重要事項の議決では、常任理事国のうち1カ国でも拒否権を行使すると、その議案は否決されるルールになっているのです。

なお、議案に賛成はできないものの、拒否権で否決することも望まない場合は、投票を棄権することが可能です。

拒否権のメリットとデメリット

近年、世界各地で紛争が起きていますが、安全保障理事会が迅速な対応をできないことも少なくありません。その理由の一つは拒否権にあります。

例えば、14カ国が賛成していても、常任理事国が1カ国でも拒否権を行使すれば、その議案は否決されてしまいます。さらに、拒否する理由の多くが「議案が通ると自国にとって都合が悪い」といった利害関係によるものである点も問題です。

一方で、拒否権があることで、安全が守られているというメリットもあります。拒否権がなくなると、9カ国以上の賛成があれば、どんな議案でも可決されてしまいます。

例えば、紛争が起きた場合に、拒否権がないなかで議論した結果、「9カ国以上が賛成したから」という理由で、国際連合が軍事行動を取る可能性もあるでしょう。

世界平和と安全を維持する役割を持つ国際連合が、「世界戦争」を招く事態になるかもしれないのです。

参考:安全保障理事会 | 国連広報センター

安全保障理事会の問題点

近年、世界各地で安全保障理事会の改善を求める声が高まっていますが、どうしてなのでしょうか?  どのようなことが問題になっているのか見ていきましょう。

常任理事国の拒否権行使による機能不全

拒否権の行使によって、安全保障理事会が機能不全になっていることが問題視されています。

国際連合が設立された1945年から1969(昭和44)年までに、拒否権が行使されたのは115回、そのうち、ソ連(現ロシア)が行使した回数は108回といわれています。

米ソの冷戦時代には互いに拒否権を行使し、安全保障理事会が機能しなくなってしまった過去もあります。

近年は、ウクライナから軍の即時撤退を求める議案が、ロシアの拒否権によって否決されて問題になりました。機能不全が指摘されていたこともあり、拒否権を行使した際には、国連総会で理由の説明を求める議案が提出され、採択されています。

常任理事国の国旗。左上からイギリス・アメリカ・ロシア、左下からフランス・中国。ヤルタ会談には加わっていなかったフランスが常任理事国になったのは、イギリスの希望によるもの。そして、拒否権を行使できるという「五大国一致の原則」が合意されている。

安全保障理事会の構成国の少なさ

国連が設立された当初の加盟国は51カ国でしたが、現在は193カ国です。また、各国をとりまく政治や経済状況も、設立当初と大きく異なります。

しかし、安全保障理事会の構成国は、1965(昭和40)年に非常任理事国数が4カ国増えただけで、常任理事国の数は変わっていません。そのため、国連加盟国に対して、安全保障理事会の構成国の少なさが問題視されています。

また、複雑化した国際社会の現実を適切に反映させ、安全保障理事会の正当性を高める改革が求められており、そのためにも構成国の拡大が必要と考えられています。

なお、2005(平成17)年には日本・ドイツ・ブラジル・インドが中心となり、多数の支持国を得て常任理事国枠を拡大する議案を提出しましたが、廃案になりました。

参考:安保理改革の経緯と現状|外務省

世界の平和を守る安全理事会

安全保障理事会は、国際平和と安全を維持する役割を持つ国際連合の機関の一つです。常任理事国と非常任理事国で構成され、常任理事国には拒否権があります。

拒否権にはメリットもありますが、拒否権行使による機能不全が問題視されています。構成国の拡大を求める声も高まっているため、今後の動きに注目しましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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