電子透かしについて

近年,文書,音声,動画など,様々なデータがディジタル化され, ディジタルコンテンツとして処理されるようになっています. これらディジタルコンテンツは劣化のないコピーが容易にできる, という特徴を持っています.

また,インターネットに代表されるネットワーク技術の発展により, これらのデータを同時に複数のユーザに配布することが容易になりました.

それに伴い,不正なコピーや再配布による著作権の侵害が社会的問題になっています. このような問題に対処するための重要な技術として,『電子透かし』 という技術があります.

著作権保護技術,電子透かし

電子透かしとは,通常の閲覧・再生では知覚できないように, ディジタルコンテンツにあるデータを埋め込む技術です. 『透かし』と聞いたとき,何を思い浮かべるでしょうか? お札の透かしを思い浮かべた人もいらっしゃるでしょう.

電子透かしの「通常の閲覧・再生では知覚できない」という点が お札の透かしとは大きく異なっています. お札の透かしは誰が見ても認識できますが, 電子透かしは特定の人 (電子透かしを埋め込んだ人など) しか認識できません.

では,そのような特徴をもつ電子透かしを使うと, どのようにして著作権保護に利用できるのでしょうか?

電子透かしの利用方法

電子透かしを埋め込んだディジタルコンテンツがネットワーク上などで 不正に使用されたとしましょう.コンテンツの作成者がそのようなデータ を発見したとき,埋め込んだ電子透かしによって, 次のように対処することができます.

1.著作者情報の埋め込み

電子透かしの内容として,コンテンツの作成者の情報を埋め込みます.

例えば,自分のホームページ上で自分で描いた絵を公開しているとしましょう. ある時,他の人のホームページで自分が描いたはずの絵が許可もなく 公開されているのを見つけたらどうしますか? 抗議しても自分で描いたという証拠がありません.

このとき,自分であることを証明できる情報(例えば,名前など)が コンテンツに埋め込んであれば, それが自分で描いた証拠となり,正当性が証明できます.

2.使用者情報の埋め込み

電子透かしの内容として,ユーザIDなど,使用者の情報を埋め込みます. ここで注意しなければならないのは,先程と異なり,各ユーザごとに異なる 電子透かしを埋め込む,ということです.

例えば,ソフトウェアを配布する場合を考えましょう. ネットワーク上でそのソフトウェアの不正コピーが 流出しているのを発見したとします. このとき,たくさんのユーザのうち,誰が横流ししたのか分かりません. これでは誰を訴えたらいいのか,分かりませんね?

このとき,ユーザIDのようなものが電子透かしとして埋め込まれていれば, 不正コピーに含まれている電子透かしから, 横流ししたユーザが分かるわけです. (IDに対するユーザの登録が必要ですが)

以上,2つの事例を示しましたが,どちらの場合も 「通常の閲覧・再生では知覚できない」という 電子透かしの特徴が大きく関わってきます. なぜなら,作成者や使用者の情報がデータの どこに埋め込まれているかが分かってしまえば, その情報を変更できてしまうからです.

電子透かしの研究

以上のように,電子透かしは著作権保護に関して有効な技術であると 言えます.ところが, 電子透かしの効力を打ち消してしまうような 方法がいくつか考えられています.

私たちはそれらのうちの一つ,『結託攻撃』というものについて研究しています.

詳しいことはここでは述べませんが,興味をお持ちの方は お気軽に研究室の方へお出で下さい.






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