近年の複合機はファイルサーバー/文書管理、OCRスキャナなどの機能が充実し、中小企業の社内全体、中堅・大規模企業の部門/フロアで情報共有プラットフォームを担うケースが増えている。リコーが2023年2月14日に販売開始したA3フルカラー複合機「RICOH IM C」シリーズの新製品7機種16モデルの新製品もそのトレンドにあり、複合機をはじめとするさまざまなエッジデバイスとITサービスの組み合わせで多機能化を図っている。
複合機は最も重要な「エッジデバイス」
働き方の変化や法改正に伴い、多くの中小・中堅企業において紙の注文書や請求書などの電子化が推し進められている。リコーはそうしたニーズに応えるために、従来、コピー/ファクス/ハードスキャナにほぼ特化していた複合機は、デジタル化を担う「エッジデバイス」の1つとして位置づけ、OCRスキャナやWeb会議システムなどと、情報共有/活用のためのアプリケーションやクラウドサービス、ツールを組み合わせて、顧客の業務効率化を支援している(図1)。
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リコージャパン ICT事業本部 オフィスプリンティング事業センター センター長の石井晃氏(写真1)は、「デジタル時代と言っても、中小企業にはまだ紙が主流の現場も多い。アナログとデジタルをつなぐエッジデバイスの中で最も重要な役割を担うのが複合機。当社のデジタルサービスで重要なデバイスであり、顧客のDX推進においても非常に重要な役割を担うもの」と説明した。
2023年2月14日から販売開始のフルカラー複合機「RICOH IM C6010」など7機種16モデル(写真2)には、「DX、セキュリティ、環境貢献の視点からの機能強化」(石井氏)が施されているという。最小構成モデル「RICOH IM C2010」の価格は標準価格105万2000円(税別)から。
●Next:DXにおける優先課題の機能を強化
業務効率化/セキュリティ/環境貢献の3面で機能を強化
DXの第1優先課題である業務効率化につながる機能強化の1つが、入出力の「アナログtoデジタル」である。両面自動読み取りのオート文書フィーダ(ADF)が、これまで1枚ずつ読み取っていた名刺や領収書、小切手など小さなサイズの書類にも対応したほか、「RICOH カンタン名刺電子化アプリ for PHONE APPLI PEOPLE」などとの連携が強化された。
また、「RICOH 信憑電子保存サービス」への一括スキャンで、電子帳簿保存法の要件を満たした信憑性データの保存が高速に行える。「RICOH受領請求書サービス」との連携では、経理業務をAI-OCRによって標準化し、電帳法対応の経理業務を軽減する。ほかには、クラウドストレージサービス「RICOH Drive」との連携で、電子化した文書を外出先から確認・共有できるようになった(関連記事:リコー、容量無制限のクラウドストレージ「RICOH Drive」、エッジ環境とのセキュアなデータ共有を可能に)。
セキュリティ面では、暗号化技術(TLS1.3、TPM2.0、WPA3)の米国のセキュリティガイドライン「NIST SP800-171」に基づくセキュリティ機能を実装している。また、2019年から提供する「RICOH always Current Technology」は、複合機の機能/バージョンを常に最新に保つ仕組みで、導入後もセキュリティや業務系の機能のアップデートを提供する(図2)。
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リコーグループ全体で進めている環境貢献への取り組みとして、新製品が省エネルギー化によりライフサイクル全体でカーボンフットプリント(注1)低減を図っている。「今後、複合機はデジタル時代のオフィスに欠かせない機器になる。脱炭素/循環型社会に貢献できる製品を提供していく」と石井氏は述べ、具体的な活動として以下を示した。
●本体樹脂総重量の約50%(重量比)に回収材(再生プラスチック)を使用。
●製品梱包材にリサイクル可能な紙材料を使用し、包装プラスチックを従来比54%削減。
●リコー独自のカラーQSU技術(DH定着方式)と、従来のトナーに比べ定着温度を12℃下げる新たな低融点トナーを開発し、消費電力を低減。
●製品の組み立て生産過程を再生可能エネルギー由来の電力で賄う。
注1:カーボンフットプリントは、ライフサイクルの全体(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)で排出された温室効果ガスの量をCO2量に換算した値。