フォトログ:SNSでも魅力発信、東京走る人力車の「女性車夫」が増加

フォトログ:SNSでも魅力発信、東京走る人力車の「女性車夫」が増加
 真夏の日差しが照りつける中、秋元優花さん(21)はフランス人観光客2人を乗せた黒い人力車を引き、息を切らしながら東京の下町、浅草を駆け回っていた。写真は浅草で人力車を引く車夫の鈴木あき奈さん(19)。6月撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
[東京 26日 ロイター] - 真夏の日差しが照りつける中、秋元優花さん(21)はフランス人観光客2人を乗せた黒い人力車を引き、息を切らしながら東京の下町、浅草を駆け回っていた。
45分間のツアーが終わると、秋元さんは乗客に深くお辞儀し、降車をサポートするために手を差し出した。手拭いで覆った手のひらにはまめができ、火照った顔からは汗が滴り落ちていた。
顔に汗を浮かべながら人力車で浅草を案内する秋元優花さん。8月撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
秋元さんは、男性が圧倒的に多い人力車業界で働くことを選んだ数少ない女性の1人だ。ソーシャルメディア(SNS)の投稿を見て魅了されたことが一つのきっかけだったという。秋元さんのような「女性車夫(しゃふ)」は今、国内外から多くのフォロワーを集めている。
「正直な話、最初は本当に大変だった」と秋元さんは明かす。人力車は最大250キロほどの重さになることもあるという。
「運動経験がなく運転することが大変で、最初は人力車(の持ち手)を落としてしまうこともあった」と振り返る。
今では車夫の仕事を気に入り、体力が許す限り続けたいと考えていると秋元さんは話す。首から下げた木札には「諦めたくない」と書かれていた。
秋元さんは2年前、東京力車に加わった。東京ディズニーリゾートで働くことを希望していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて叶わなくなってしまった。
東京力車は浅草の観光地を中心に人力車の営業を展開。現在90人いる車夫のうち約3分の1が女性だ。東京力車を運営する株式会社ライズアップの西尾竜太代表取締役は、より多くの女性を車夫として採用したいと考えているという。
「最初にいた女性がすごくかっこよかった。彼女のビデオをSNSで発信したところ、他の女性も興味を持って入ってきてくれた。これからも、もっと女性が働きやすくて活躍できる場所にしていきたい」
東京力車の事務所で朝礼に参加する車夫ら。6月、浅草で撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
<足袋を履いた車夫>
車夫たちは指先が2つに分かれた伝統的な地下足袋を着用し、晴雨にかかわらず人力車を引きながら徒歩や駆け足で1日に平均20キロを移動する。
体力に加え、観光客に東京を案内するための十分な知識や接客力も求められる。
地下足袋を履き、人力車の研修を受ける櫻井夢栞さん。8月、浅草で撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
東京力車によれば、最も人気のある車夫は国内の平均月収の3倍にあたる約100万円以上を稼ぐという。ただ、求人に寄せられた応募全体の10パーセント未満しか研修終了にたどり着くことができない狭き門でもある。
常連客や指名予約を獲得するため、車夫たちはSNS上でも積極的な発信を行っている。
大学生の櫻井夢栞(ゆめか)さん(20)が車夫を目指したのも、SNSの投稿を目にしたことがきっかけだったという。
「1年前、人力車に乗った時にSNSを教えてもらい、女性が頑張って研修して(車夫として)デビューしている動画や画像をたくさん見た。私も頑張ればできると自信につながり、応募するきっかけになった」
家族や友人からは反対の声を受けながらも4カ月の研修を積んだ櫻井さん。今では自信を持って人力車に客を乗せることができると話す。
9年前に車夫になったベテランの矢野汐織(しおり)さん(29)は家事や育児と仕事を両立している。
元スポーツインストラクターの矢野さんは、出産を機にいったん離職。4年間のブランクを経て車夫に復職し、現在は1日約8時間働いている。退勤後は娘を迎えに保育園へと急ぎ、帰宅すると夕食を準備して他の家事にも取りかかる。
「外から見るときらびやかな世界だが、入ってみたら違うことや、つらいこともあった。例えば、男性車夫がいいとお客さんに拒否されたこともあった」と矢野さん。それでも、楽しいから車夫を続けたいと語った。
車庫で人力車を準備する秋元優花さん。8月、浅草で撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
西尾氏の元には、車夫のような力仕事を女性がすべきではない、という批判の声も寄せられる。時には女性車夫がセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)を受けることや、男性の顧客から知識を試されるケースもあるという。
「男女関係なく、車夫は皆全く同じように扱っている」と西尾氏は言う。
「女性たちが、男性と同じように扱ってほしいと言っている。正直、彼女たちの方がすごく強いと感じることも多々ある」
(勝村麻利子記者、加藤一生記者)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

トムソン・ロイター

Mariko is a financial journalist with more than 15 years of experience. Most recently she is a breaking news correspondent for Reuters in Tokyo, writing everything from business, social issues, political developments to human-interest pieces. She has previously covered aviation, real estate, non-bank sectors as well as fund raising deals, and won a number of in-house awards. Mariko has earned her MA in International Journalism from City, University of London.