アルゼンチン、ペソ50%超切り下げ 経済危機打開へ改革発表

[ブエノスアイレス 12日 ロイター] - アルゼンチンのカプト新経済相は12日、通貨ペソの公式レートを50%以上切り下げ、1ドル=800ペソにすると発表した。エネルギー補助金の削減、公共事業の入札停止、政府の規模縮小なども表明した。
急進的なリバタリアン(自由至上主義)で知られるハビエル・ミレイ氏が10日に大統領に就任し、経済危機打開に向けた「ショック療法」の詳細発表が待たれていた。
カプト氏は政府の計画について、短期的には痛みを伴うが、財政赤字削減とインフレ抑制のために必要だと強調。「破局を回避し、経済を軌道に戻すのが目的だ」と述べた。
同氏によると、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は5.5%に上っており、過去123年で113年は赤字だった。「この問題を根絶する」とし、「財政赤字依存症を脱する必要がある」と強調した。
アルゼンチンは国際通貨基金(IMF)に対し440億ドルの債務を抱えている。
IMFのゲオルギエワ専務理事はアルゼンチンの「断固とした措置を歓迎する」と表明。「安定回復と同国の経済力復活への重要な一歩」だとした。
IMFは声明で「大胆な」措置と評し、「より持続的で民間部門主導の経済成長の土台作りになる」とした。
 12月12日、アルゼンチンのカプト新経済相は、通貨ペソの公式レートを50%以上切り下げ、1ドル=800ペソにすると発表した。ブエノスアイレスで11日撮影(2023年 ロイター/Agustin Marcarian)
ペソは2019年以降、厳格な資本規制によって人為的に高く維持されており、366ペソの公式レートと1000ペソ前後の非公式レートの間に大きな開きが生じている。
アドルニ大統領報道官は「45%の貧困率、年率200%のインフレという危機的状況だ」とし、「われわれはハイパーインフレに向かっており、それを回避するのが目的だ」と述べた。
カプト氏は農家が以前から求めてきた輸出税の段階的廃止を検討する考えも示した。アルゼンチンは加工大豆油や大豆ミール、トウモロコシの主要な輸出国。
ミレイ氏の当選以降、財政縮小に向けた同氏の強い姿勢は国内金融市場を支え、12日の取引で主要株価指数(.MERV), opens new tabは最高値を更新、国債価格は4%近く上昇した。
アナリストらは一連の措置が強いメッセージを送ったと指摘。
UBSアセット・マネジメントの新興市場・アジア太平洋地域債券責任者、シャマイラ・カーン氏は通貨切り下げは市場の予想を上回ったと述べた。
格付け会社フィッチは財政調整が痛みを伴うだろうとし、「今後の道のりは経済的・政治的・社会的リスクにあふれている」と分析。ミレイ大統領の政党は議会の議席数が少なく、州知事も輩出しておらず、より影響力の大きい政党との協力も流動的なほか、社会情勢も脆弱であることに言及した。

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