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NTT(持株)の株主総会、ドコモの速度低下や3G停波案内の表記について質疑

 NTT(持株)は、22日に38期の定時株主総会を都内会場で開催した。総会では、代表取締役社長の島田 明氏のほか、NTTドコモ、NTT東西を含めた役員が出席した。なお、2つの議案については、決議が行われ、すべて賛成多数となった。

NTT代表取締役社長の島田 明氏
主要子会社役員も出席

2022年度の業績と2023年度の業績予想

 総会冒頭では、中期経営戦略として、国内/グローバル事業の強化や企業価値向上、新たな経営スタイルへの変革などを含めた「Your Value Partner 2025」について説明。ドコモグループ再編や海外事業会社の設立、IOWNやグリーン&フード事業に関する研究や温室効果ガス排出量可視化などによるSDGsへの貢献などが披露された。

 また、2022年度の業績と23年度の業績予想もあらためて示され、2022年度の年間配当(1株あたり)は、前年比+5円の120円となった。

新中期経営戦略

 続いて、島田氏から新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」について説明した。島田氏は、この新中期経営戦略の基本的な考え方を「新たな価値創造と地球のサステナビリティのため」と位置づけ、成長分野への投資を拡大していくとした。

 今後5年間で、成長分野に約8兆円の投資を行うと共に、キャッシュ創出力を増大し、減価償却費を含めた営業利益「EBITDA」を2027年度に現行の3.3兆円から4兆円を目指す。

 具体的には、IOWN構想の実現のほかDX化や循環型社会の実現、事業基盤の強靱化を行う。また、これの基本となるユーザー体験の強化や従業員体験の高度化もあわせて取り組む。

 なお、NTTの株式は7月1日に株式分割が実施される。普通株式1株を25株に分割するもので、これにより投資単位の大幅引き下げを実施し、投資しやすい環境を整備するとしている。

主な質疑

 株主からの主な質疑をご紹介する。回答者は、島田社長のほか、NTT副社長事業戦略担当の廣井 孝史氏、財部部門長の中山 和彦氏、ドコモ副社長の栗山 浩樹氏。

――(事前質問)通信サービスの品質向上に向けた取り組みについて

廣井氏
 NTTグループ各社の通信サービスについて、通信速度の低下や故障などで多大な迷惑と心配をかけたことをお詫びする。

副社長事業戦略担当の廣井 孝史氏

 まず、ドコモの4G回線については、都市部の混雑エリアなどで通信速度が低下する事象が発生している。通信トラフィックの増大や再開発による影響などが主な原因だと考えており、現在、周波数の調整や特定の周波数帯に偏らない分散制御などにより改善を進めている。

 次に通信故障については、より強靭なネットワークの実現に向けた施策を進めている。故障発生時には、迅速かつ的確なサービス復旧情報発信を行うとともに、故障原因を早期に究明し、グループ横断的な総点検を実施するなど、再発防止に取り組んでいく。

――(事前質問)人的資本系の考え方について

廣井氏
 NTTグループのすべてのサービスやプロダクトは従業員が考え作り出しているものであり、その意味でNTTグループの事業を推進していく中で、最も重要な経営資源は人であると考えている。

 NTTグループでは4月から専門性を重視した人事、給与制度を導入し、社員の自立的なキャリア形成を支援するとともに、社員一人、一人が今まで以上に高い専門性やスキルを獲得発揮でき、様々な分野で付加価値を創出することができる環境を整えた。

 人材への投資がユーザーへの価値提供につながる経営を目指し、NTTグループ全体の持続的な成長発展につなげていく。

――(事前質問)株式分割の考え方について

廣井氏
 NTTは当社普通株式を1株につき、25株に分割し、投資単位株式分割前の株価で現行の約40万円から約1万6000円と大きく引き下げることとした。

 これは2024年から始まる新しいNISA制度の導入も踏まえたものであり、また、投資単位は米国有料銘柄並みの水準となり、より投資しやすい環境を整えた。この投資単位の引き下げによって、より幅広い世代からの投資が期待できると考えている。

――今期の配当が安すぎる。前社長(現会長の澤田 純氏)の頃は配当も良かったし株価も安定していた。

中山氏
 まず、配当自己株式取得を含め、株主還元というものは、非常に重要なものという認識。

 中期的に企業価値を高め、その利益を株主に還元するという営みを続けている。

 継続的な増配を基本的な考え方としており、2011年から増配を継続しており、22年度、そして23年度も増配を予定している。

 今後も新中期経営戦略の取り組みを推進し、業績を上げていきたいと考えている。実際の配当は、今後の業績動向や財務状況などを勘案して決めていきたいので理解頂きたい。

島田氏
 今年度は最高益を目指しており、その計画をしっかり達成し、株主の期待に応えられるようがんばっていく。

――株主優待でドコモの端末料金や通信料金の割引をしてほしい。

廣井氏
 株式の価値を上げていくことを最優先に考えている。そのためには、新中期経営戦略のなかで業績をきちっと伸ばしていくと言うことがまず大事と考えている。

 株主への還元については、継続的かつ安定的な増配を株主還元の基本方針としている。今回の意見は、貴重な意見として承りたい。

 dポイントなどさまざまな還元を実施しているが、「やはり現金配当が最も良い」という考え方もあり、今後株主還元施策の拡充に活かしていきたい。

――株式分割について、コスト面を心配している。

中山氏
 株式分割を実施した背景は、投資単位が米国優良企業並の約1万6000円という水準に大幅に引き下げるというところ。これにより幅広い株主、NTTを応援してくれる株主を増やしたいというのが目的。

 事業活動でも、ファンとして支援する方が増えることを期待している。

 株式分割では当然コストがかかる。郵送物や総会のような会場運営コストがある。一方で、株主数は、20年前に現在の倍以上の190万ほどおり、直接来場され直接話をする機会という場面は対応できると考えている。郵送コスト増については、電子化などを活用し、招集通知や株主通信の電子化などで効率化を図っていく。

――ドコモの3G停波に伴う移行(マイグレーション)について、送られてくる案内が「大特価」などとうたっておきながらオンラインショップの価格と全く一緒。コンプライアンス的におかしいのでは。

栗山氏
 ドコモが案内するパンフレットなどは、社内できちっとした審査をした上で対応している。信頼してほしい。

ドコモ副社長の栗山 浩樹氏

――3Gのマイグレーションが進んでいないのでは? もっと投資が必要だと感じる。

栗山氏
 世界的に4G、5Gへと移行している。より新しいサービスを低廉な形で利用できるよう移行を進めている。3Gで利用していた使いやすい端末についても、4Gや5Gで利用できるものを開発してユーザーニーズに応えていきたい。

――NTTの完全民営化について、考えを聞きたい

廣井氏
 政府が保有しているNTT株の取り扱いと言うことで、政府が決めるものということで、NTTからのコメントは控えたい。

島田氏
 株価に影響を与えるようなことは、あってはいけないと思っているので、そういう主張をしていきたいと思う。

【お詫びと訂正】
本記事初出時、中山氏の写真を誤って掲載しておりました。
お詫びして修正します。