• 2023年7月8日
  • 2023年7月5日

退院支援を行う看護師の仕事内容|退院支援の流れも解説

 

病棟で勤務している看護師は、患者さんの退院支援に関わることがあります。しかし、退院支援とは具体的に何を行えばいいのか、どのような流れで行えばよいのか分からない方もいるでしょう。

当記事では、退院支援をする看護師の仕事内容を詳しく解説したうえで、退院支援看護師に向いている方の特徴も解説します。患者さんと関わり、より深いサポートをして看護師として活躍したいと思っている方は、当記事をぜひ参考にしてください。

退院支援とは?

退院支援とは、入院患者さんが安心して退院後の療養生活を送れるよう支援することです。超高齢社会を迎えた日本では、急性期病院に在院できる日数が短縮傾向にあり、在宅療養や転院といった退院先の早期検討が欠かせません。

医師や看護師、理学療法士などが連携し、患者さんとご家族が住み慣れた地域で適切な療養生活を送る方法を考えることが重要です。
(出典:東京都福祉保健局「東京都退院支援マニュアル〜病院から住み慣れた地域へ、安心して生活が送れるために〜」

退院支援の流れ

退院支援は次のような流れで行われます。

(1)支援の必要性を判断 まずは、患者さんに退院支援が必要かを判断することが必要です。患者さんやご家族のなかには、退院に不安を感じる方も少なくありません。患者さんやご家族の希望を伺いながら、個々に寄り添った退院準備を行います。

(2)支援の方向性を決定 診療方針などをもとに、退院に向けての目標や課題を医師や看護師、薬剤師などで検討します。理学療法士や栄養士、地域連携相談員などの職種も加わり、退院後の生活をイメージしながらチームで方針を検討するのが一般的です。

(3)退院後の利用制度やサービスを調整 地域の医療スタッフやケアマネジャーなどの「在宅支援チーム」に情報を共有し、必要な医療やケアを適切につなぐ目的で、退院前カンファレンスを行います。カンファレンスには、患者さんやご家族も参加するのが特徴です。安心して退院を迎えることを目指し、療養生活に関する指導や注意事項の説明などを行います。自宅退院が難しい場合にも、患者さんやご家族の意向を確認しながら、療養施設などを調整します。

(4)退院 上記の流れで、入院から退院後の生活に切れ目がないよう、患者さん個人に応じた支援を行い退院を迎えます。退院にあたって、社会保険制度などの必要な手続きについて説明することも重要な支援です。

退院支援を行う看護師の仕事内容

退院支援を行う看護師の仕事内容

退院支援では、退院後の適切な医療ケア体制を整えるために、看護師は院内外の橋渡し的存在として退院調整などのさまざまな役割を担います。ここでは、退院支援において、看護師の皆さんがどのような業務を担当するかを具体的に解説します。

スクリーニング

スクリーニングは、早期に退院支援の対象となる患者さんを判断する、重要な業務です。外来で入院が決定した時から入院後2日以内を目安に、看護師は退院支援が必要なケースを判別します。

スクリーニングには、疾患や入退院の繰り返しの有無、服薬管理状況などがチェックできる「退院支援スクリーニングシート」を活用するのが効果的です。退院支援の必要性を早期に評価し、患者さんやご家族の様子を把握することで、退院後の生活を意識した看護計画や医療的介入が行いやすくなります。

ただし、入院中には病状の悪化など、患者さんご自身の状況に変化が生じるケースも少なくありません。入院初期段階のスクリーニングで「退院支援の必要がない」と判断した場合も、随時再チェックが求められます。

アセスメント

スクリーニングで退院支援の必要性などを把握した後は、アセスメントによって患者さんの状態を分析・評価しながら退院後を見据えた計画的な看護を目指します。また、アセスメントでは、次の2つに分けて情報を整理するのが重要です。

  • 医療管理に関する情報
    退院後も継続する医療管理や処置を把握する。さらに、日常生活に復帰した際に、患者さんが自己管理できる可能性や家族のサポートが期待できるかどうかを検討する。
  • 生活ニーズに関する情報
    入院前の生活状況を把握したうえで、入院生活によってどこが変化するのか、リハビリでどこまで回復可能かを検討する 

(出典:公益社団法人山梨県看護協会「退院支援マネジメントガイドライン」

症状の悪化予防や退院後の不安軽減には、患者さんご自身の自己管理能力が重要な場合もあります。アセスメントにより、指導内容が実践できていない部分などを明確にし、必要に応じて再指導を行うことが大切です。

医療管理や生活ニーズに関する問題点が明確になったら、退院を見据えてどのような支援が必要なのかを具体的に考えます。たとえば、アセスメント過程で訪問介護の必要性が出てきた場合は、すぐに訪問看護師と連携して退院調整を進めることが重要です。

退院前カンファレンス

退院前カンファレンスは、退院後に在宅療養サービスを利用する患者さんやご家族が安心して生活するための支援内容を検討する場です。医師や病院看護師だけではなく、理学療法士や薬剤師、訪問看護師など患者さんごとに最適なさまざまな職種の方とチームを組んで開催します。

カンファレンスは患者さん本人やご家族も参加し、関係スタッフと情報交換や意見交換が行える貴重な機会です。在宅療養生活における注意点の説明や、患者さんが自分で適切な処置を行えるようにするための退院指導も欠かせません。

主治医や病院看護師は在宅医療スタッフに対して、患者さんに関する情報提供を行い、適切に引き継ぐ重要な役割を担います。看護の継続性の観点から、患者さんの状況や必要なケアについて、在宅スタッフへ具体的に情報共有する準備を行いましょう。

また、カンファレンスを効果的に進めるためには、看護師をはじめとするメンバー全体で、以下の点を共有しておくことが大切です。

  • 退院前カンファレンスを行う目的
  • 病状や家庭環境、患者さんやご家族の意向
  • 在宅で療養する際の検討課題

(出典:公益社団法人山梨県看護協会「退院支援マネジメントガイドライン」

カンファレンスの日程調整や場所の確保、患者さんに合わせた参加者の決定といった事前準備も病院看護師が中心になって行います。在宅サービスの提供者には、ケアマネジャーを通じて連絡を取るのが一般的です。準備を整え、実際に参加する患者さんやご家族に安心してもらえるようなカンファレンスにする必要があります。

モニタリング

※以下は、外来看護師や退院支援室、医療ソーシャルワーカー(MSW)の業務内容です。

モニタリングは、患者さんの退院後の状況を把握することを指します。特に、退院後数週間は病状が不安定なケースもあり、患者さんやご家族の療養生活が安定しているかを確認することが大切です。

具体的には、訪問看護師やケアマネジャーなどに連絡を取る、外来受診時などに直接確認するなどの方法が挙げられます。モニタリングを通じて、必要な制度やネットワークといった社会資源が活用できていないと判断した場合は、新たな調整や連携を行います。

また、患者さんが退院後に通院が必要な場合には、早い段階から病棟看護師と外来看護師が連携を取ることも必要です。

退院支援を行う看護師に必要な素質は?

退院支援を行う看護師に必要な素質は?

退院支援は、病棟で主任などを経験した看護師が担当するケースが多くあります。退院支援は業務の性質上、誰でもできる業務ではありません。

具体的には、以下のような素質が求められます。

  • さまざまな職種の方との連携
  • 社会福祉の知識
  • 患者さんの気持ちを汲み取るこ 

退院支援における看護師は患者さんやスタッフ、地域の橋渡し役として、病院内外のさまざまな職種の方との連携が欠かせません。それぞれの職種の役割を踏まえてコミュニケーションを取り、時にはリーダーシップを発揮すること、マネジメントを行うことも必要です。

また、退院支援の重要な目的の1つは、患者さんやご家族を必要な支援に結びつけることです。看護師は看護知識だけではなく、介護や福祉などについても学び、支援過程でどのような社会資源があるのかを把握しておく必要があります。活用できる制度やサービス、ネットワークなどについて日々情報収集することが大切です。

さらに、最も重要なのは、目の前の患者さんやご家族の思いを汲み取ることです。住み慣れた環境で望む療養生活が実現できるよう、まずは適切なコミュニケーションを通じて、患者さんやご家族の要望を明確にすることが求められます。

まとめ

看護師は入院患者さんが退院後の生活をきちんと送れるように支援することもあります。看護師は退院支援が必要な患者さんを見極め、不安に感じている患者さんの話をよく聞いたうえで各職種の関係者で連携しながら退院支援を進めます。社会福祉に対する知識を活かす場面もあるため、看護師としてある程度の経験が必要です。

退院支援に関わるのは、病棟で主任などを経験した看護師であることが多い傾向にあります。現在病棟で働いておらず、退院支援に興味がある方は転職を検討してみましょう。マイナビ看護師では、キャリアアドバイザーがご自身のキャリア形成を転職の面からサポートします。

※当記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています

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