懲戒処分とは?
種類(レベル)・法的根拠・判断基準・
手続き・留意点を分かりやすく解説!

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三浦法律事務所弁護士
慶應義塾大学法科大学院法務研究科中退 2016年弁護士登録(東京弁護士会所属)、2016年~18年三宅・今井・池田法律事務所において倒産・事業再生や一般企業法務の経験を積み、2019年1月より現職。
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この記事のまとめ

懲戒処分とは、従業員が職場規律企業秩序に違反したことに対する制裁として行われる不利益処分です。企業活動にとって、職場規律・企業秩序の維持は、極めて重要なことです。しかし、合理性・相当性のない懲戒処分は無効と判断されてしまう可能性もあります。また、懲戒処分と一言で言っても、さまざまな種類の懲戒処分があります。

そのため、懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則にその根拠を定めておき、しっかりと手続きを踏んだ上で、事案に応じて適切な懲戒処分を行う必要があります。

そこで、この記事では、懲戒処分について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

懲戒処分をすべき事案が、わが社で発生しました。どのような流れで進めればいいのでしょうか。

ムートン

まずは、慎重に事実調査から始めましょう。この記事で、懲戒処分の流れ・ポイントを含めて分かりやすく解説していきますね。

※この記事は、2023年8月1日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています。

  • 労契法…労働契約法
  • 労基法労働基準法

懲戒処分とは?

懲戒処分とは、従業員が職場規律企業秩序に違反したことに対する制裁として行われる不利益処分です。

懲戒処分には、以下の画像のとおり、いくつか種類(レベル)があります。

ムートン

各処分の詳細は「懲戒処分の種類とレベル」にて解説しますね。

企業が懲戒処分を実施する目的

企業が懲戒処分を実施する目的は、企業秩序の維持にあります。

まず、労働者は、企業との雇用契約(労働契約)に基づき、労務を提供する義務を負っています。そして、企業は組織の円滑な運営のために、規律(ルール)や秩序を定めており、労働者は企業における規律や秩序を遵守する義務も負っています。

懲戒処分は、このように企業にとって極めて重要な企業秩序を維持するための制度として、法令上認められています

ムートン

判例も、「使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものである」と判示しています(最判平成8年9月26日判タ922号201頁)。

懲戒処分の法的根拠|労基法・労契法

ムートン

懲戒処分については、労基法労契法に定めが置かれています。

労基法89条9号

労基法89条9号は、「制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を就業規則で定めなければならないとしています。

なお、懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則で懲戒の種類懲戒事由を定めて、従業員に周知していなければなりません。ゆえに、就業規則に記載のない事由で懲戒処分を行うことはできず、また遡及処罰(過去にさかのぼって罰すること)も認められません。

労契法15条

また、労契法15条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、懲戒処分が無効になるとされています。詳細は「懲戒処分の社会的相当性」で解説しますが、懲戒処分を行うためには、合理的な理由と社会的相当性が必要となります。

懲戒処分の種類とレベル

レベル1|戒告・けん責

戒告とは、将来を戒める処分のことをいい、けん責とは、始末書を提出させて将来を戒める処分をいいます。懲戒処分の種類の中では、一番軽い処分です。

そのため、減給や降格とは異なり、実質的な不利益を課さない処分ですが、戒告・けん責を受けたという事実が、人事評価において不利に考慮されることはあります。

レベル2|減給

減給とは、本来ならばその労働者が現実になした労務提供に対応して受け取るべき賃金額から一定額を差し引く処分をいいます。

ただし、労基法91条では、減給1回の金額が、平均賃金の一日分の半分を超え、その総額が一賃金支払い期における賃金総額の10分の1を超えてはならないと制限されています。

すなわち、1回の事案に対しては、減給の総額が平均賃金1日分の半額以内でなければなりません。そのため、無制限の減給は認められていません。

ヒー

僕の月給が60万円でその月が30日あった場合、60万円÷30日=2万円が、1日分の平均賃金となります。減給の総額が平均賃金1日分の半額以内なのであれば、1万円が限度額ということですか?

ムートン

だいたいそのとおりです(※)。

※「平均賃金」の計算は、正しくは、事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(就労日数ではなく、歴日数)で除した金額となります(労基法12条1項)。

レベル3|出勤停止・自宅謹慎

出勤停止・自宅謹慎とは、雇用契約を存続させながら、一定の期間、労働者の就労禁止する処分をいいます。

出勤停止の期間には、法律上特段の制限はありませんが、出勤停止の期間中は無給とされ、また勤続年数にも参入されないことが一般的ですので、過度に長期間の出勤停止は、その処分の相当性が争われる可能性があります。

レベル4|降格

降格とは、役職職位職能資格を引き下げる処分をいいます。降格にともなって、賃金額が下がる場合が多いでしょう。

レベル5|諭旨解雇(諭旨退職)

諭旨解雇(諭旨退職)とは、一定期間内に退職願の提出を促して、提出があれば退職扱いとし、提出がない場合には懲戒解雇とする処分です。

労働者が退職願の提出に応じた場合には自己都合退職として扱われます。

自己都合退職とは

退職には大きく2種類(自己都合退職・会社都合退職)あります。

自己都合退職とは、労働者の個人的な都合(結婚や出産・キャリアアップなど)により、退職をすることです。

会社都合退職とは、会社の都合(倒産・リストラなど)により、退職をすることです。

会社都合退職は、基本的に労働者に関係のない理由による離職であるため、社会保険などが自己都合退職よりも手厚くなるなどの保護があります。しかし、懲戒解雇では、労働者に問題があるための解雇であるため、例外的にこうした保護が受けられません

なお、企業によっては、諭旨解雇(諭旨退職)の場合には、退職金の減額規定が定められており、退職金が一部減額される場合もあります。

レベル6|懲戒解雇

懲戒解雇とは、雇用契約を一方的に解約する処分です。最も重い懲戒処分です。

「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」(労基法20条1項ただし書)に該当するため、解雇予告手当が支給されないばかりか、退職金の全部または一部が減額される場合が通常です。

懲戒処分の有効性

二重処罰の禁止

いったん懲戒処分を行った非違行為に対して、再度の懲戒処分を行うことはできません二重処罰の禁止)。また、過去に懲戒処分の対象となった行為について、反省の態度が見受けられないことだけを理由として、改めて懲戒処分を行うこともできないと考えられています。

これは、懲戒処分が、企業秩序違反行為に対する特別な制裁措置であることから、刑罰における罪刑法定主義類似の原則が妥当するとされていることによります。

ただし、過去に何らかの懲戒処分を受けたという事情を、後の懲戒事案における情状として考慮することは認められています。

懲戒処分の社会的相当性

労契法15条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、懲戒処分が無効になるとされています。

ここにいう「社会通念上相当であると認められない場合」とは、具体的には、処分が重すぎないか、処分が平等性に反しないか、必要な手続きをとっているかなどによって判断されます。

以下のような事情を考慮して、処分内容を検討することが求められますが、詳細は、後述する「懲戒処分を下す際の判断基準」にて解説します。

  • 従業員が犯した非違行為による結果(被害)の重大性
  • その行為の動機・目的、方法、頻度等の行為態様
  • これまでの勤務状況、注意・指導歴
  • 反省の程度

懲戒処分の手続き

既に解説したとおり、懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類懲戒事由を定めて、従業員周知していなければなりません。

なお、法律上の義務ではありませんが、企業によっては、懲戒処分に当たって、労働組合との協議懲戒委員会開催などの手続きが定められている場合があります。これらの手続きに関する定めがある場合には、当該手続きも実施する必要があります。

また、懲戒処分を実施する前には、懲戒処分を受ける従業員に対して、弁明の機会を与える必要もあります。裁判例によっては、就業規則に弁明の機会を与える旨の定めがない場合においても、弁明の機会を与えなかった場合に懲戒処分が無効になり得る旨の判断をしているものもあります。そのため、弁明の機会は、必ず与える必要があります。

これらの手続きが実施されなかった場合、懲戒処分が無効とされてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

懲戒処分を行うまでの流れ・留意点

ムートン

懲戒処分を行う流れは、以下のとおりです。詳細は、次の見出しから順に解説していきます。

1|事実調査

特定の従業員について、懲戒事由に該当するような非違行為の存在が疑われた場合、企業は、速やかに事実確認聴き取り調査を行う必要があります。これらの調査にあたっては、非違行為の内容に応じて、柔軟に対応を考える必要があります。

例えば、勤務態度の不良企業秘密の紛失・漏えいなどの事案であれば、当該従業員や周りの上司・同僚からの事情聴取を行い、客観的な資料を確認していくことで足ります。

しかし、ハラスメントなどの被害者が存在するような事案であれば、まずは、被害事実を確認するために、被害者から事情を聴取しますが、被害者が、職場で話が広まるのをおそれて、他の従業員から事情聴取することを嫌がることもあります。このような場合、事情聴取の順番や当事者らのプライバシーなどへの配慮も必要です。

また、犯罪行為が疑われる場合には、当該従業員からの事情聴取よりも、客観的な証拠の収集が重要になってきます。

2|弁明の機会付与・理由の告知

前述のとおり、懲戒処分を実施する前には、懲戒処分を受ける従業員に対して、弁明の機会を与える必要があります。

一方、非違行為が疑われる従業員から話を聞けていない場合、事情聴取に応じない場合であっても、他の従業員の説明や客観的な資料から、非違行為の存在が確実であり懲戒処分を行える場合もあり得ます。

しかし、このような場合であっても、必ず、本人に事実の確認を行い、仮に事実を否定する場合には、客観的な資料も提示しつつ、弁明をさせることは必要不可欠です。

ただし、当該従業員が、弁明の機会を与えたにもかかわらず、これに応じなかった場合には、本人の事実確認なく懲戒処分を実施する場合もあり得ます。

3|懲戒処分の内容を検討

懲戒処分を下す際の判断基準

懲戒処分の内容を検討する際には、処分の種類・程度と処分の平等性の観点から、社会的に相当といえる処分を行う必要があります。具体的には、以下のような事情を考慮して、検討することになります。

懲戒処分の種類・程度
・非違行為による被害の重大性
・非違行為の動機・目的、手段、方法、頻度等の行為態様
・勤務状況
・注意・指導歴、懲戒歴
・反省の程度
・賠償の有無
・(被害者がいる場合には)示談の有無、被害者の意向
処分の平等性
・同種事案における懲戒処分の前例
・他の非違行為者に対する処分との均衡

4|本人への通知・社内公表等

通知時の留意点

懲戒処分の実施により、減給や降格、契約終了などの法的効果が発生し得ますので、懲戒処分の内容は、対象となる従業員に通知する必要があります。

通知は、対象となる従業員に到達して初めてその効力が生じますので、懲戒処分通知書などを作成して、面談に際して手渡しすることが望ましいといえます。しかし、対象従業員が受け取らない場合には、口頭で読み上げた上で、書面を内容証明郵便簡易書留などの記録に残る方法で郵送したり、電子メールに添付して送付したりすることが考えられます。

社内公表時の留意点

懲戒処分を行った後、他の従業員が同じような非違行為を行わないようにすること、再発を防止することなどの観点から、社内で公表することが考えられます。

しかし、氏名や具体的な事案を公表してしまうと、当該従業員の名誉や信用を毀損してしまう可能性があります。また、ハラスメント事案においては、被害者が存在するため、被害者のプライバシーにも配慮する必要があります。

そのため、企業は、①公表の必要性を吟味した上で、②氏名を明らかにせず、事案も抽象化したりすることで、必要最小限度の公表に留めるべきです。

5|退職金の支給・不支給の決定

多くの企業では、就業規則において、懲戒解雇の場合に退職金の全部または一部を支給しないものとする定めを置いています。

しかし、このような退職金の不支給条項については、各種裁判例において、その効力が争われています。裁判例の傾向としては、退職金の「功労報償的性格」から、過去の労働に対する功労を全て抹消してしまうほど(一部減殺してしまうほど)の著しい背信行為があったといえるか否かによって、判断しています。

そのため、懲戒解雇が認められたとしても、直ちに退職金の全部を不支給とすることが認められるわけではないので、注意が必要です。

懲戒処分対象となる規律違反の典型例

勤務態度不良(無断欠勤、遅刻・早退など)

無断欠勤遅刻を繰り返す従業員にたいしては、日頃から適切な注意・指導を行い、その旨を記録しておくことが必要です。その上で、無断欠勤や遅刻の頻度、期間、注意・指導の回数などを考慮して、適切な懲戒処分を選択すべきです。

例えば、一度の無断欠勤や遅刻によって、いきなり減給や出勤停止を行ってしまうことは、非違行為の程度に対して、不利益の程度が大きいといえ、懲戒処分の相当性が認められない可能性があります。このような場合、まずは、戒告・けん責によって、対象従業員を注意し、改善の機会を与えることが良いでしょう。

それにもかかわらず、改善や反省が見受けられず、無断欠勤や遅刻が継続して、業務への支障が出ている場合には、より重い懲戒処分を検討することになります。

企業秘密の紛失・漏えい

企業秘密の漏えい事案においては、

  • 漏えいした情報の重要性
  • 漏えいが故意によるものか否か

などの観点から、懲戒処分を検討することになります。

漏洩した情報が、例えば、自社の主力製品の技術情報といった場合、漏洩によって、売上の低下や競合他社の売上増加などといった多大な損害が発生する可能性があります。

従業員が、このような情報の持ち出し・漏洩を故意に行った場合には、懲戒解雇も含めた厳しい処分を検討することになります。

もっとも、情報の重要性や過失による紛失にすぎない場合には、より不利益の小さい懲戒処分を実施し、再発防止に向けた取り組みを重視していくことも考えられます。

ハラスメント

ハラスメント事案においては、前述したとおり、事実調査が非常に重要となり、被害者が他の従業員への事情聴取に応諾していない場合には、懲戒処分を行うに足りるほどの裏付けが取れない場合もあり得ます。

また、ハラスメントの行為態様や程度、反復継続の状況、当事者間の関係などもさまざまです。そのため、刑事事件となり得るような事案であれば、懲戒解雇を行うことも考えられますが、懲戒処分を行うに当たっては、慎重に判断を行う必要があります。

また、懲戒処分と併せて、配置転換や部署移動で、被害者と加害者を切り離し、ハラスメントを防止するということも考えられます。

業務上横領・着服

横領・着服犯罪行為であって、これが客観的な資料から明らかになった場合には、原則として懲戒解雇を行うことを検討していくべきです。もっとも、被害金額が僅少であり、速やかに被害回復がなされた場合、社内の管理体制自体に問題があった場合などにおいては、諭旨解雇とすることも考えられます。

この記事のまとめ

懲戒処分について、その意義からその種類、手続き、具体的な事例をひと通り解説しました。具体的な事案において、適切な懲戒処分を選択するためには、懲戒処の種類や手続き、考慮要素を理解することが大切です。

この記事が、懲戒処分の基本的事項を学ぶ一助になれば幸いです。

ムートン

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参考文献

菅野和夫著『労働法 第12版 (法律学講座双書)』(弘文堂、2019年)

三上安雄/増田陳彦/内田靖人/荒川正嗣/吉永大樹著『懲戒処分の実務必携Q&A トラブルを防ぐ有効・適正な処分指針 関連書式・判例一覧付』(民事法研究会、2018年)

伊藤昌毅/山畑茂之・編『ケース別 懲戒処分検討のポイント-判断・求償の考慮要素-』(新日本法規、2022年)