ウイルス感染で咳が出る病気:症状と対処法

新型コロナウイルス感染症の流行により、ウイルスの恐ろしさに改めて気づいた人も多いと思いますが、コロナ以外にも、ウイルス感染により咳が出る病気はあります。

この記事では、ウイルスの基本的な情報から、咳を引き起こすウイルス感染症と予防法、咳の対処法について解説します。

1.ウイルスとは何か


ウイルスは、生物の細胞内でしか増殖できず、単独では増えることができない病原体です。そのため、宿主となる細胞の力を借りて増殖していきます。

ウイルスと細菌は同じものだと思っている人も多いようですが、実は明確な違いがあります。

細胞は、細胞分裂により自己複製することができる生物です。しかし、ウイルスは、自己複製ができない存在なので、生物と断定することはできません。

どちらも、風邪などの感染症を引き起こす原因となるものですが、細菌は生物で、ウイルスは生物と非生物の中間のような存在とされています。

【参考文献】『細菌とウイルス』国立国際医療研究センター
https://amr.ncgm.go.jp/general/1-1-2.html

2.ウイルス感染で咳が出る病気

ウイルスに感染すると、発熱、鼻水、のどの痛み、咳などの症状が現れます。

これらの症状の中でも、「咳が激しくてつらい」という訴える患者さんが多く見られます。

以下、ウイルス感染で咳が出る病気について、症状や治療法を説明します。

2-1.インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染して発症する病気です。感染すると、咳のほか高熱や筋肉痛、のどの痛みなどの症状が生じます。

治療薬には、タミフル、イナビル、リレンザなどの抗インフルエンザ薬があり、発症から48時間以内に服用すると、ウイルスの増殖を抑えることができます。

また、咳がひどいときは咳止め薬など、症状を和らげる薬を用いて体をラクにすることもあります。

2-2.新型コロナウイルス感染症

主な症状は、咳のほか、発熱やのどの痛みです。また、倦怠感や筋肉痛が強く出ることもあります。

治療薬には、ラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバなどがあります。症状が現れてから5日以内に飲み始めると、重症化を防ぐことが期待できます。

軽症の場合は、咳がつらいときは咳止め薬など、症状を和らげる薬を用います。

コロナが治っても、後遺症として咳が長引くことがあります。なかなか咳が治まらない場合は、喘息治療に用いる吸入ステロイド薬を使用することもあります。

2-3. RSウイルス感染症

風邪のウイルスの一種であるRSウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症です。咳や発熱、鼻水などの症状が現れます。

大人は感染しても軽症で済むことが多いのですが、乳幼児や高齢者が感染すると、重症化して肺炎を起こすことがあります。

治療は、風邪と同様に、咳などの症状を和らげる対症療法が基本となります。

2-4.ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルスは、気管支炎や肺炎を引き起こすウイルスです。乳幼児が感染することが多いのですが、大人も感染することがあります。

感染すると、咳や鼻水、発熱などの症状が現れ、喘息のような「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という呼吸音が生じることもあります。

治療は、風邪やRSウイルス感染症と同じように、つらい症状を和らげる対症療法が中心となります。

2-5.アデノウイルス感染症

アデノウイルス感染症は、「プール熱」とも呼ばれています。主な症状は、発熱、咳、のどの痛みなどですが、目やにや充血など目の症状が生じることもあります。

治療は、咳などの症状を和らげるための対症療法が中心となります。目の症状に対しては、炎症を鎮めるための点眼薬を用いることがあります。

3.ウイルス感染を予防する方法

ウイルス感染を予防するために、日常生活で実践できるいろいろな方法があります。

毎日の習慣にして、病気にならないように気をつけていきましょう。

3-1.手洗い

水と石けんを使った手洗いは、ウイルス感染を防ぐための基本的な方法であり、重要な方法でもあります。

石けんには、ウイルスや細菌を取り除く成分が含まれています。手のひら、指の腹、指の間、爪の下などもよくこすり、20秒以上の時間をかけて洗いましょう。

外出先から帰宅したときや調理の前後、食事前には、特にていねいに手を洗っておきましょう。

【参考情報】『正しい手の洗い方』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf

3-2.マスク着用

感染症が流行している時期には、マスクを着用すると、感染リスクを減らすことができます。

マスクは、口と鼻をしっかり覆う製品を選びます。装着する際は、隙間ができないように注意しましょう。着用中は、マスクの表面に触れないように気をつけてください。

【参考情報】『マスク着用の有効性に関する科学的知見』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001055263.pdf

3-3.部屋の換気

室内の空気を、外の新鮮な空気と交換すると、ウイルスの感染リスクを減らすことができます。定期的に窓を開けて換気をしましょう

【参考情報】『新型コロナ対策-適切な換気でエアロゾル感染を防ぐ』神奈川県
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/about/aerosol.html

3-4.咳エチケット

咳エチケットとは、自分の咳やくしゃみから、ウイルスや細菌の感染を広げないためのマナーです。

咳やくしゃみをする際には、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖などで口や鼻を押さえ、飛沫が飛び散るのを防ぎましょう。

咳が出ていても、喘息など人には感染しない病気もあります。しかし、咳エチケットを習慣にすることで、いざという時に周囲の人を感染から守ることができます。

【参考情報】『咳エチケット』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593495.pdf

3-5.予防接種

インフルエンザや新型コロナウイルスには予防接種があります。予防接種は、ウイルス感染症を予防するために有効な手段です。

インフルエンザワクチンは、13歳以上は1年に1回接種、生後6か月以上から12歳まで(13歳未満)の場合は2回接種が推奨されています。

新型コロナワクチンの接種の可否は、年齢や健康状態によって異なります。注射した部位の痛みや発熱などの副反応が起こる場合もありますが、重篤な副反応は稀です。

【参考情報】『新型コロナワクチンの副反応について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou.html

4.ウイルスに感染したかも?咳の対処法

咳が出て、体調が悪化しているときには、何らかのウイルスや細菌などに感染した可能性が考えられます。

そのような場合、一時的に咳を和らげるために、自分でできる対処法を紹介します。

4-1.水分を摂る

のどが乾燥していると咳が出やすくなるので、こまめに水分を摂り、のどを潤しましょう。

水分を十分に摂ると、痰が柔らかくなって、体外への排出がスムーズになる効果もあります。

4-2.部屋を加湿する

のどの乾燥を防ぎ、咳を和らげるには、部屋の加湿も有効です。

加湿器がなければ、水で濡らしたタオルを部屋干ししたり、水を貼った洗面器などを部屋に置くのも効果的です。

4-3.ハチミツの摂取

ハチミツは、子どもの咳を緩和するのに役立つという研究があります。

【参考情報】『Honey for acute cough in children』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25536086

ただし、1歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症という重い病気のリスクがあるため、絶対に与えてはいけません。

【参考情報】『ハチミツによる乳児のボツリヌス症』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001/

5.おわりに

呼吸器感染症の多くは、風邪のような症状から始まります。

風邪だと思っていたのに、咳が激しかったり、いつもと違うと感じるようなら、早めに病院を受診して相談しましょう。

インフルエンザやコロナなどのウイルスに感染すると、急に強い症状が現れることがあります。

早めに抗ウイルス薬を服用すると、ウイルスの増殖を抑え、回復までの時間を短縮できる可能性もあるので、薬を服用したい方は病院を受診して処方してもらいましょう。