物議を醸した「オタク用語辞典」、内容を一部修正して刊行へ 編者と版元の三省堂が異例のステートメント公開

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11月21日の発売がアナウンスされていた「オタク用語辞典 大限界」について、版元である三省堂は10月26日、「不備な点もあるということも含めて、この時代のオタク用語のある面からの記録であり今後の成長が期待されるものとして、本書の刊行には意義がある」として、予定通り刊行するとの見解を公表しました。同書については、先行して公開された一部の内容に対して、各分野に詳しい人たちからその妥当性を疑問視する声が上がっており、三省堂の対応が注目されていました。特に批判が多かった「公式カプ」「顔カプ」については用例の表現を修正。出版後も広く意見を募りながら改訂を重ね、「大限界」を育てていく、としています。

「大限界」は一般的なオタク用語をはじめ、「日本の男性アイドル」や「K-POP」「2.5次元」「ポケモン」「原神」「BL」などの“界隈”ごとに全14章で構成。名古屋短期大学現代教養学科の学生12人が、自分たちの周りで使われているオタク用語約1600項目を採集し、語釈と用例を付した「前代未聞の辞典」を謳っています。三省堂は「実際にオタク用語を日常使用している学生たちの書いた『パッション』と『ユーモア』溢れる“生きた”解説をお楽しみください」としていました。

内容のサンプルを見た人の間で物議が

発売の予告と共に一部の内容サンプルが先行公開されると、「読み物として楽しめそう」「めちゃくちゃ欲しいが?」「消えてしまうネット用語を書籍化するのは意義がある」などの好意的な反響があった一方、取り扱うジャンルの偏りや用例の示し方などで各分野に詳しいSNSユーザーなどから批判的な意見が相次ぐ事態に。ニュースやまとめサイトでも取り上げられ、発売を前に「辞典」としてのスタンスを問う声が大きくなっていました。

具体的には、オタク当事者も使用に気を使う「公式カプ」や「顔カプ」の項目に実在のキャラクター名が記載されていたり、ある用語の語釈で“元ネタ”に言及していなかったりと、日頃から“界隈”に親しんでいる人たちにとっては疑問符が付くような記述が複数存在。版元の三省堂が辞書や辞典を多く手掛ける出版社だけに、「『辞典』を名乗って出版するのはどうなのか」という声も上がっていました。

三省堂は26日夜、「『オタク用語辞典 大限界』に関するご報告とお願い(編者・版元より)」と題したステートメントを公開。編者でゼミの担当教官である小出祥子さん、版元の三省堂辞書出版部の山本康一さんから、それぞれ、批判を踏まえての見解が記されています。

編者「批判を真摯に受け止め、改善」

小出さんは「この書籍は、ゼミ担当教員である私が、学生の話している独特な日本語に興味を持ったところから始まっています」経緯を説明。その上で、「大学生になり、言葉を観察し解説するという経験を初めてした学生が、試行錯誤しながら作り上げた書籍です。自分たちの大好きな作品や推しを語る言葉を、熱意をもって集め、説明を施しました。語釈には未熟で独りよがりに感じられるところもあるかと思います。しかし、それは、著者たちがその用語を使用するときに感じる情熱や興奮を、読者の皆様に伝えようと、ノリやニュアンスも大切にして執筆したからでもあります。どの語釈も、確かに使用者の実感を通して、その言葉の一面を捉えたものです。本書は、使用者自身が自らの言葉を解説することに特徴があり、彼女たちの視点から見た、日本語の一面を記述したものであるという点をご理解いただければと思います」などと記し、「語釈の不備や用例の不適切さについてのご指摘も拝見しております。大変ありがたく、真摯に受け止め、可能な限り改善させていただきました」としています。

版元「時代の記録、証言として意義がある」

三省堂の山本さんは「その時代の言葉の記録」という本書の意義についてあらためて説明。「この文化(※オタク文化)を生きる学生各自の興味・関心から捉えられた、一種の時代的・文化的記録であり証言であろうと思います」として、「刊行を決意いたしました」と記しました。

SNSなどで相次いだ厳しい指摘や批判については「本書には特定の方々をおとしめたり侮辱したりするような意図はまったくありません。ただそう解される余地のありうるところは、刊行までの間にできるだけ改善するようにいたしました」と強調。内容に関して何か気づいたことがあれば「問い合わせフォーム」を通じて意見を寄せるよう呼び掛けました。山本さんは「すぐに対応することは難しくとも、今後改訂等の機会を通じて検討を重ねてまいりたいと思います」としています。

「大限界」に関する報告とお願い https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/daigenkai

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