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俗に「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」などという。ならば国のかじ取りを担う政治家は歴史をどう見るか。気になる話がある。宰相候補、自民党の高市早苗政調会長である。あの戦争への認識を問われ、80年前の昭和天皇の「開戦詔書」を持ち出したのだ。【吉井理記/デジタル報道センター】
当時の「国家の意思」の問題?
軽い驚きであった。
少し前の話である。月刊誌「Hanada」10月号。自民党総裁選に名乗りを上げた高市氏のインタビューである。
自衛か侵略か、戦争をどう捉えるかは「当時の『国家意志』の問題です」と持論を述べた高市氏、「先の大戦への認識」を問われてこう答えた。
「当時の日本国民は、天皇陛下の詔書によって国家意志を理解したものだと思われます。先の大戦開戦時の昭和天皇の開戦の詔書は<米英両国は、帝国の平和的通商にあらゆる妨害を与え(中略)帝国は今や自存自衛のため、決然起って、一切の障害を破砕するのほかなきなり>というものでした」
開戦詔書をその答えに代えたわけである。太平洋戦争(対米英開戦)は「当時の国家意志」、つまり開戦詔書でいう自衛戦争だ、ということだ。
記者は「自衛戦争論」の是非をここで問うのではない。80年前の開戦詔書を現在もそのまま受け入れる姿勢に、まず驚いたのだ。
「同感です。『当時の国家意志』というもので歴史を捉える人は、自由民主主義国の指導者にはまずいないと思いますが……」と首をひねるのは関東学院大教授の林博史さん。戦争責任研究の第一人者である。
林さんに話を聞く前に、高市さんの歴史観のベースを確認しておこう。端的に記した一文があった。
<私は常に『歴史的事象が起きた時点で、政府が何を大義とし、国民がどう理解していたか』で判断することとしており、現代の常識や法律で過去を裁かないようにしている>(2002年8月27日付ブログ)
その高市さんの応援団でもある安倍晋三元首相も「当時を生きた国民の目で歴史を見直す」(13年の著書「新しい国へ」)という歴史観を披露している。「保守」と呼ばれる人たちにはおなじみの考えである。
これをどう見るか。林さんに問うた。
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