中国の領海侵入に「抗議」控える日本 触れたくない特殊事情

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7月20日の中国海軍艦艇による鹿児島県・トカラ海峡の航行
7月20日の中国海軍艦艇による鹿児島県・トカラ海峡の航行

 中国海軍が7月、鹿児島県の屋久島南西の日本領海「トカラ海峡」に艦艇を侵入させた。中国はこの海峡を他国艦艇も比較的自由に航行可能な「国際海峡」だと主張しており、航行の実績を積み重ねることで既成事実化を図る狙いだとみられる。日本政府は中国に懸念を表明したのみで「抗議」などの強い態度は取っていない。理由を探ると、平和国家・日本の特殊な事情が見えてきた。

 領海侵入したのは中国海軍のシュパン級測量艦で、7月20日午後8時ごろから約3時間半かけて屋久島とその南西、口之島の間の領海「トカラ海峡」を太平洋から東シナ海へと抜けた。

 日本政府は海上自衛隊の補給艦や哨戒機を警戒監視に当たらせた。併せて外交ルートを通じて中国に「懸念」を伝達。しかし外交上、より強いクレームである「抗議」には踏み込まなかった。懸念表明の理由についても「我が国周辺海域における中国海軍艦艇のこれまでの動向を踏まえたものだ」(外務省)と説明するのみで、国際法違反の航行だったのか、測量行為を確認したかについてもノーコメント。日本政府関係者は「中国が国際海峡の解釈を巡り日本に揺さぶりをかけ続けており、慎重に対応している」と語った。

 中国がトカラ海峡に初めて艦艇を侵入させたのは2016年6月で、侵入を機にこの海峡は、海運などに頻繁に利用される国際海峡だとの主張を始めた。その後しばらく侵入はなかったが、21年11月に2回目、22年4月に3回目と近年は侵入頻度を高め、日中実務者協議などの場で「トカラは国際海峡だ」との見解を繰り返し表明している。

 トカラが国際海峡であろうとなかろうと、中国軍艦艇は国連海洋法条約に基づく一定のルールに沿って自由に通過…

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