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無人機やミサイルなど、遠隔から攻撃する軍事技術の「進化」が注目される一方、前線で身を潜めて標的を撃つ狙撃手(スナイパー)も現代戦に投入されている。陸上自衛隊でも狙撃手を養成しており、山中や市街地に潜んで標的を狙うことのほか、情報収集も任務とする。現役の狙撃手が取材に応じ、普段は語られることのない任務や訓練の一端を明かした。そこからは過酷さだけでなく、「相手を直接撃つ」ことの重みもうかがえた。
入隊前、手にしていたのはギター
三重県内の山間部にある陸自久居射撃場。取材の許可を得て2022年11月に訪れると、横一列で腹ばいになった隊員たちが銃を構え、約300メートル先の標的を狙っていた。「ドーン」「ドーン」。銃声が山々にこだまし、段ボールで作った的に多くの穴が開いた。
「右下にずれたよ」。狙撃手とペアを組む観測手(スポッター)と呼ばれる隊員が隣で望遠レンズをのぞき、そうアドバイスをする。観測手は目標までの距離や風速を測定し、指示を出す。狙撃手より経験豊富な年長者が務めることが多いという。
この日、射撃訓練に臨んだのは守山駐屯地(名古屋市)に所属する部隊だった。「弾道がきれいに見えた。上々の出来でした」。訓練を終えた3等陸曹の男性狙撃手(28)はこう振り返り、取材に応じた。
3曹は大阪市出身で、地元の府立高を卒業してから、父と同じ自衛隊へ進んだ。それまで射撃はもちろん、本格的なスポーツ経験すらなかった。中学時代に入った卓球部は数日しか続かず、高校では女子生徒とロックバンドを組んでギターを弾いていた。
入隊から5年たった18年。全ての隊員が訓練で扱う小銃の成績が上官の目にとまり、狙撃手への道を勧められた。「少数精鋭」の存在に憧れを感じていたこともあって二つ返事で引き受けた。
使用するのは、米レミントン社製の全長1・1メートルの狙撃銃。米軍も採用しており、約800メートル先まで狙える。この銃を専門に扱う陸自の狙撃手は全国に数百人いるとされ、日本が他国の攻撃を受けるなど有事の際に敵の指揮官といった特定の相手を狙う。
狙撃手は漫画や映画の主人公としても取り上げられるが、どうしても射撃のシーンが中心になりがちだ。「潜入や待機の方が何倍も大変なのに、作品ではいつも省略される」。3曹はこう話し、苦笑いを浮かべた。
6日間待ち続けたことも
実際に想定される狙撃手の動きはこうだ。
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