不登校29万人「悲観的になる数字でない」 当事者だった大空幸星さん
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24時間体制であらゆる悩みについてチャット相談を受けるNPO法人「あなたのいばしょ」(東京都港区)の理事長、大空幸星(こうき)さん(25)は、子供時代に家庭崩壊がきっかけで不登校となり、自殺も考えたそうです。ジャーナリスト・田原総一朗さん(89)のインタビューでは、30万人に迫った小中学生の不登校について「必ずしも悲観的になる数字ではありません」と答えました。その真意に迫ります。
家庭崩壊、小学生で昼夜逆転の生活に
田原 小中学生で不登校になり、自殺も考えたそうですね。
大空 両親はけんかが絶えず、小学5年の時に母が家を出ていきました。厳格だったはずの父の様子が変わり、2人暮らしになって衝突を繰り返しました。
私は、暴力や暴言を受けないかと、不安で昼夜逆転の生活になり、学校に行かなくなりました。「死にたい」と考えるようになり、食欲もなくなって体調を崩し、入院しました。
窮状を聞きつけたのか、行方知れずの母から連絡がありました。再婚して名字も変わっていましたが、上京して母と暮らし始めました。でも母と再婚相手は仕事で家を空けていたので、家でひとりぼっちでした。
高校生でヤングケアラーに
高校進学後、母は持病を悪化させて仕事を失いました。再婚相手とも離婚し、ずっと家にいるようになります。私が母のケアも全部やることになりました。いわゆる「ヤングケアラー」(大人に代わり家族の介護や世話を迫られる若者)です。
家計を支えるためにアルバイトも多い時で三つ掛け持っていたので、高校には5、6時間目ぐらいに行くことも多かったんです。
でも、弱みを見せたくなくて、友達とも何もなかったように接し、普通の高校生を演じていました。3年生になると精神的に限界を迎え、退学しようと思った時、担任の先生が救ってくれました。
夜中にメール。翌朝、先生が駆けつけた
田原 どういうことですか?
大空 夜中の3時ごろ、家の状況とともに、「死にたい」「学校をやめるかもしれない」といった長文のメールを先生に送ったら、翌朝、自宅に駆けつけてくれました。
先生は、出席日数の足りない僕が卒業できるように無理してくれましたし、アルバイトも校則で禁止でしたが、見て見ぬふりをしてくれていたようです。高校にもう1年通う経済力も気力もなく、先生は「このままでは死んでしまう」と思っていたそうです。
「この人に頼れば何とかなる」
先生は「過去を悲観するのではなく、これからの人生をどう生きるか決めなさい」と言ってくれました。
もちろん家庭の問題は何も解決していません。でも、先生と出会ったことで、「この人に頼れば何とかなる」って安心感を得ることができたんです。これで僕は救われました。
田原 学校教員は、家庭や子供にとって、セーフティーネットのような存在だったのかもしれませんね。
大空 よくプライベートにまで踏み込んできましたよね。僕の場合なら、私有の携帯電話の番号も教えてくれました。「何かあったら頼っていい」と示してくれたんです。それがとてもありがたかった。
田原 いざという時に、話せる相手がいるってことがですよね。
先生は子供たちとSNSができない
大空 今の学校現場はそういう状況ではなくなってきました。「話せる相手」としての教師像は、教師自身も求めてないかもしれないし、生徒たちも「先生に相談したところ…
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