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「劇薬」のYCCは撤廃か 長期金利操作、修正重ね「形骸化」

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日銀は10年国債を買い入れ、長期金利を低く抑えてきた
日銀は10年国債を買い入れ、長期金利を低く抑えてきた

 日銀の政策変更でマイナス金利と同時に撤廃する可能性があるのが、2016年9月に導入した短期・長期の金利操作「イールドカーブ・コントロール(YCC)」だ。時に効果を上回るほどの副作用がある「劇薬」とされてきた。

 5回に分けて「異次元」と呼ばれた大規模な金融緩和の全体像に迫ります。(第4回。17日まで連日10時30分公開予定)
 1.異次元緩和の出発点
 10年以上続けてきた大規模な金融緩和。その成り立ちを振り返ります。
 2.量的・質的金融緩和
 従来の金融政策を抜本的に見直し、「レジームチェンジ」(体制転換)を印象づけました。
 3. 上場投資信託(ETF)【https://mainichi.jp/articles/20240314/k00/00m/020/196000c】
 日銀が大量に購入しており、処理の仕方が問われています。
 4. マイナス金利
 今の大規模緩和策の象徴的存在。物価上昇が定着し、近く解除される見通しです。

長期戦へ常識破りの奇策

 イールドカーブは、国債の満期までの期間と利回り(金利)の関係を表した曲線のことだ。期間が長いほど将来の景気変動リスクが高まるため、金利は上昇し、カーブは右肩上がりになる。日銀は企業や個人の借入金利を低く抑えるため、短期金利をマイナス0・1%に固定。10年満期の国債を金融機関から買い入れ、その利回りとなる長期金利を0%程度に抑え、金利全体の動きをコントロールする新たな政策を、量的・質的金融緩和(異次元緩和)に加えた。

 従来、金利操作の対象は短期のみで、さまざまな要因で動く長期金利は「コントロールできない」というのが中央銀行の常識だった。しかし、13年3月に黒田東彦氏が総裁になって以降、日銀は前年比2%の安定的な物価上昇の達成に向け、マイナス金利など前例のない「非伝統的」な政策を次々と試してきた。それでも2%の実現は遠く、大規模緩和は「長期戦」が避けられなくなったため、取り入れられたのがYCCだった。

当初の目的は長期金利の引き上げ

 YCC導入の引き金となったのは、16年2月に始まったマイナス金利だ。日銀は金融機関から預かる当座預金の一部にマイナス0・1%の金利をかけて短期金利を低下させ、当座預金のお金を企業への貸し出しや投資に振り向けようとした。

 すると予期せぬ事態が起きた。市場で「マイナス金利の深掘りで金利はさらに低下する」との観測が強まり、長期金利が低下し、右肩上がりだったイールドカーブが…

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