Q パンはどうしてふくらむのか。(神奈川県茅ケ崎市、小6)
発酵でできる気体、生地が閉じこめる
A ふっくらとしたパン。切った面を見ると小さな穴がたくさんあります。この穴を作るのは、小さな生き物「微生物」の一つである酵母の働きです。酵母はイーストとも呼ばれます。
小麦粉に水や酵母を入れてこねたパン生地を温かいところに置いておくと、酵母が働き始めます。酵母は小麦粉に含まれている糖分や生地に加えられた砂糖を食べて、二酸化炭素とアルコールに分けるのです。このように微生物が食べ物を変化させる働きを発酵といいます。
できた二酸化炭素は、生地の中に気体の泡として閉じこめられます。生地にはよくのびるグルテンが含まれているので、たくさんの気体の泡が風船のようにふくらみます。グルテンは、小麦粉をこねるとグルテニン、グリアジンという二つのたんぱく質がくっついてできるものです。
ふくらんだ生地を焼くと、泡のまわりが固まって穴が残ります。発酵でできるアルコールはお酒の成分ですが、焼くと気体になって生地から抜けるので、焼き上がったパンは子どもが食べても大丈夫です。
最近、よく見かける米粉パンはどうでしょうか。給食に出ることもあるでしょう。小麦粉の代わりに、お米を砕いて細かい粉にした米粉を使います。小麦粉にアレルギーがある人も食べられるパンです。日本で作られるお米をもっと多く食べる目的もあります。
発酵で二酸化炭素の泡ができるところは同じですが、米粉だとグルテンができません。そのため、増粘剤という、植物から作られた成分を入れて、生地がのびるようにします。
増粘剤を使わずに作る方法もあります。その方法を開発した国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」の食品素材開発ユニット長、矢野裕之さんは「ヒントはシャボン玉です」と話します。シャボン玉は、空気のまわりを洗剤の小さな粒(分子)が取り囲んでふくらみます。米粉パンでも、発酵でできた二酸化炭素のまわりを、米粉に含まれるデンプンの粒が取り囲んでふくらむことが広島大学との共同研究で分かったそうです。
米粉パンがふくらむために必要なのは、まず、米粉のデンプンの粒が整っていることです。お米を湿らせて砕いた米粉や、パンに向いた品種のお米から作った米粉を使います。生地を発酵させる時、いきなり温かいところに置かず、少しずつ温度を上げます。焼く時は、デンプンでできた泡がこわれないように、高温で一気に生地を焼き固めます。
矢野さんは、「小麦粉だと風船のようにしっかりした泡ができますが、米粉の泡はシャボン玉のようにこわれやすいので、工夫が必要なのです」と話します。【黒崎亜弓】