Q お札の人物はどうして変わるの?(大阪府・小1・高谷ともきさん)
偽造防止のために最新の技術を導入
A 2024年度に、お札(紙幣)の「顔」である肖像が変わります。1万円札は実業家の渋沢栄一、5000円札は教育者の津田梅子、1000円札は細菌学者の北里柴三郎になります。それぞれ産業や教育、医療の分野で日本の近代化に力を尽くした3人です。ちなみに裏側の図柄は、1万円札が東京駅丸の内駅舎、5000円札が藤、1000円札が葛飾北斎の代表作・富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」です。2000円札は出回っている数が少なく、図柄の変更はありません。
紙幣のデザインが新しくなるのは、04年以来20年ぶりです。なぜ変わるのでしょうか。
大きな理由として、偽造された紙幣が出回らないようにすることが挙げられます。20年の大みそか時点で世の中に出回っていた紙幣は、総額で118・3兆円、枚数では178・5億枚(日本銀行調べ)という膨大な量でした。紙幣は日常生活に欠かせません。もし偽物が使われると、安心できません。
そこで国はこれまでも、偽造防止のために約20年ごとに紙幣のデザインを切り替えてきました。今回は肖像の変更とともに、最先端の技術を使った偽造対策が盛り込まれています。例えば、見る角度によって肖像の立体画像の向きが変わって見える最先端のホログラムを世界で初めて紙幣に取り入れます。光に透かすと模様が浮かび上がる「透かし」についても、これまでより細かな模様にします。
紙幣に人物の肖像が使われるのも、偽造を防ぐことがねらいの一つです。私たちは人の顔を見分けるのに慣れているため、紙幣の肖像が少しでもずれたりぼやけたりしていると、しっくりしない感じを持ちます。
ちなみに紙幣のデザインを決めるときは、国の役所である財務省、紙幣を発行する日本銀行、紙幣を製造する国立印刷局の3者で相談し、最終的には法律に基づいて財務大臣が決めます。肖像の人を誰にするのかについては、特にはっきりとした決まりはありません。ただし、できるだけ本当に存在した人で、大きな成果を残し、国民から尊敬され日本を代表するような人物であること▽偽造防止のため、なるべくはっきりとしていて細かな写真や絵画を入手できる人で、人の目を引く特徴のある顔であること――などの点に注意が払われます。【長岡平助】