思いを伝える技術 フォロー

学級崩壊を終息させた担任教師の「本物の声」とは

川井龍介・ジャーナリスト
※掲載写真はイメージです
※掲載写真はイメージです

 ある小学校の先生が、受け持ったクラスが学級崩壊状態に陥ったため、「静かにしなさい」などといつも声をからして叫んでいました。そのため喉にポリープができてしまい病院で治療を受けるまでになってしまいました。

 そこで声の出し方を見直しました。まず自分が学校でどんな声で話しているかを録音して聴きました。するとあまりにヒステリックな声だったことに驚きました。もっと楽に出せる声を意識して発声し、それを録音して繰り返し聴いては、自然な声に近づける訓練を続けました。すると、人が変わったような落ち着いた声になりました。そして学級崩壊もおさまりました。

 これは、この春出版された「声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか」(山崎広子著、NHK出版新書)で紹介されたエピソードです。似たようなことを最近、耳にしました。スーパーでの試食会を担当した食品メーカーの社員が、お客に「どうぞ、○○の試食サービスをしています、いかがですか」と、朝から大きな声で呼びかけていました。反応が今一つなので、午後からはトーンを落としてふつうに語り掛けるようにした…

この記事は有料記事です。

残り988文字(全文1457文字)

ジャーナリスト

1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。